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夕暮れ時の路地裏で、 男達の怒号が飛び交う。
拳に伝わるのは、衝撃と鈍い痛み。
いつの間にか辺りには 微かに血の匂いが漂っていた。
初めは十数人の男がいたが、 今では最後の一人。
この最後の一人が 本当にしつこいから嫌いだ。
不良男
日向 ハル
不良男
最後の男はそう言うと、 雄叫びを上げながら殴りかかってくる。
日向 ハル
日向 ハル
ドカッと男の鳩尾に鋭い蹴りが入る。
すると男は呻き声を上げ、 そのまま地面に倒れた。
やっと終わった。ほんと諦めの悪い奴。
疲れたからさっさと帰ろう。
そう思い、その辺に投げていた鞄を 拾い上げようとした、その時、
突然、黒い猫が私の前に現れた。
じっと私を見つめてくる黒猫。
私はゆっくり腰を下ろすと、 猫と視線を合わせた。
綺麗な毛並みと 透き通るような金色の目をした猫だ。
日向 ハル
笑みを浮かべながら 黒猫の頭を優しく撫でた。
すると猫は気持ち良さそうに 「にゃー」と鳴くが、
その後すぐ、 どこかに向かって歩き始めた。
と思ったら、
数歩進むごとに立ち止まっては後ろを振り返り、チラリと私を何度も見てくる。
日向 ハル
どこに行くつもりなんだろう。
そう思いながらも少しワクワクしてきた私は猫について行くことにした。
歩きながら “猫の集会所だったらいいなー”と 頭の中で夢想していた。
だが狭い通りを抜け出た先は、 人がそこそこ行き交う通りだった。
日向 ハル
狭い通りを出てすぐ 思わず自分の目を疑った。
キョロキョロと辺りを見渡すと、 明るい夕焼け空の下、 着物を着た人ばかりが行き交っている。
建物も古風な木造の建物が 多く立ち並んでいた。
まるで江戸時代か、その辺りにタイムスリップしてしまったかのような光景。
いやおかしい、絶対におかしい。 ここは一体どこなんだ?
日向 ハル
先程まで私の前にいたはずの黒猫が いつの間にかいなくなっている。
とりあえず引き返そうと 後ろを振り向くが、 なぜかそこには家が建っていた。
来た時に通ったはずのあの狭い通りが 消えて無くなっている。
日向 ハル
まさか、戻れなくなった?
いやいや冗談じゃない。
日向 ハル
とりあえず 声を出して助けを求めてみた。
だが私の近くを通りすぎる人々は皆、 私を変なものでも見るかような目で 見てくるだけだった。
まあ分かるよ。 急に叫ぶし、着物姿の人ばかりの中で私だけ制服だからなんか浮いてるし。
でもだからって、 そんな目で見てくんな。
日向 ハル
誰も私を助ける気ないよね。
つまりこの訳の分からない状況を 自分でどうにかしろと?
日向 ハル
唸りながら頭を抱えてしゃがみ込んだ。
だがそうしていると不意に 誰かが私の前に立った気がして、 ゆっくり顔を上げて前を見た。
するとそこに 左右で柄の違う羽織を着た、 端正な顔立ちの男が立っていた。