リサ
タクミ、久しぶりだね
リサ
大事な話があるの、ちょっといい?
タクミ
久しぶりだな。大事な話ってなんだ?
リサ
あのね、私あなたの子供を産んで育ててるの
タクミ
…は?え、ちょっと…子供?
タクミ
何言ってんだ。俺達に子供なんていなかったろ
リサ
タクミと別れてから妊娠が分かったのよ
タクミ
何でその時すぐに俺に言わなかったんだ
リサ
私が有責での離婚だったし、タクミに迷惑かけたくないと思って
リサ
言えなかったのよ。一人で育てていけると思ったの
リサ
それでこれまで頑張って来たけど、やっぱり限界だし、
リサ
女親ばかリ負担を負うのって不公平だなーって思うの
リサ
あなたに慰謝料だって払ったし、とにかくお金がなくて経済的な負担が大きいのよ
リサ
高齢の両親には頼れないし、それでなくても離婚されて以来冷たくされてるし…
リサ
だからね、養育費ちょうだい。あなたしか頼れないのよ
タクミ
なぁ、本当に俺の子なのか?
リサ
どうしてそんなこと言うの?
リサ
私が嘘をついてるっていうの!?酷い!
タクミ
いや、俺達の離婚の原因って、リサの浮気だったよな
タクミ
しかも、浮気相手とくっつくとか言ってなかったか?
タクミ
それなのに、その子が俺の子だって保証がどこにあるんだよ
タクミ
当然の疑問だと思うけど
リサ
浮気相手には捨てられたのよ!
リサ
この子は間違いなくタクミの子よ。もう一歳になるわ
タクミ
一歳ねぇ…
タクミ
間違いなく俺の子だって言うなら、DNA鑑定でもして、父親だって証拠を見せてくれよ
リサ
そんな必要ないわよ!
リサ
顔を見ればすぐにわかるわ!この子はタクミの子供だって!
リサ
父親似なのよ、この子
リサ
~写真~
リサ
ほら、あなたにそっくりでしょ!
タクミ
本当だ。確かに似てるな
リサ
でしょう!?こんなに似てて、他人の子なわけないじゃない!
リサ
紛れもなく血の繋がりがあるのよ!
タクミ
だが、やっぱり俺の子とは思えない
リサ
なんでよ!?
タクミ
その子は一歳になると言ったよな?
リサ
そうよ
タクミ
俺達が離婚したのは三年前だ。それから一切会ってないのに、
タクミ
子供が一歳だとしたら計算が合わないんだよ
タクミ
どんだけ長い間妊娠してたんだ
リサ
えーとそれは…間違えた!本当は二歳よ!
タクミ
二歳には見えないけどな
リサ
この子は成長が遅いのよ!
タクミ
それに、自分の子供の年齢を間違える母親ってどんなだよ
タクミ
というか、俺達離婚前から一年近くレスだったろ
タクミ
やっぱり計算が合わないよ
リサ
あなたは覚えてないでしょうけど、タクミが酔って帰って来た時にしたのよ
タクミ
俺は酒が飲めない。知ってるよな?
リサ
そうだったっけ?
リサ
あ、違ったわ!あなたが寝てる時に私が襲ったのよ!
タクミ
無茶苦茶だな。君から『浮気相手に操を立てたかった』とか言ってレスになっておいて、
タクミ
何で寝てる時に俺を襲うんだよ…
リサ
だって私からずっと断っておいて、誘うのが恥ずかしかったんだもの!
タクミ
あのなぁ。さっきから言ってることがコロコロ変わりすぎじゃないか
タクミ
怪しすぎるから、やっぱりDNA鑑定をしよう
リサ
そんなのお金と時間の無駄よ!ただでさえ私お金がないって言ったよね?
タクミ
鑑定費用は俺が出すからさ
リサ
だから、そんなことしなくてもこの子の顔を見れば一目瞭然でしょう!?
タクミ
頑なにDNA鑑定を拒むのが怪しいな
タクミ
そんなんじゃ、養育費を払うわけにはいかない
リサ
何よ!DNA鑑定とか言って、結局時間稼ぎして
リサ
養育費の支払いから逃げたいだけでしょ!
リサ
逃げてないで父親としての責任取りなさいよ!
タクミ
だから、俺が父親だって証拠を見せてもらわなきゃ困るって
リサ
この子の顔が証拠だって言ってんの!
リサ
こんなのって酷いよ…父親から、親子関係を否定されるこの子が可哀想だよ…
リサ
この子にはパパが必要なのに…
タクミ
埒が明かないな
タクミ
調べたいことができたから、いったん話は終わりだ。じゃあな
リサ
ちょっと、逃げるな!
~数日後~
タクミ
なぁリサ
タクミ
『養育費払わないクズ男!さっさと払え!』って連絡が沢山来てるんだけど、
タクミ
俺の連絡先ばら撒いた?
リサ
そうよぉw『養育費払わないクズ男』って事実じゃない
リサ
みんな、あんたの顔と子供の顔を並べて見せたら、すぐに信じてくれたわよw
リサ
嫌なら、さっさと養育費を払うことね
タクミ
それはできない。だって、俺の子じゃないからな
リサ
まだ否定するのね!
リサ
父親だって実感が沸かないの?だったら、今度この子と三人で会いましょう!
リサ
きっと父親の自覚が生まれるはず!
タクミ
そういう問題じゃねぇよ
リサ
あぁ、DNA鑑定をしたいんだっけ?いいわよ、血の繋がりを証明して見せるわ!
タクミ
いや、その必要はない
リサ
何よ!こないだと言ってること違うじゃない!
リサ
やっぱり養育費の支払いから逃げたいだけなのね!
タクミ
もう本当の父親が分かったから
リサ
へ?
タクミ
俺の兄貴のダイスケだろ、本当の父親
リサ
ちょっと、何言ってるのよ…
タクミ
兄貴を問い詰めたら、あっさり白状したよ
リサ
そんな…なんで言っちゃうのよ!!
タクミ
認めるんだな?
リサ
そうよ!この子はダイスケさんの子!
タクミ
やっぱりな
タクミ
その子が俺に似てるのも当然だ
タクミ
なんせ、俺と兄貴が似てるんだからな
タクミ
頑なに渋ったDNA鑑定をすると言いだしたのも、
タクミ
俺とその子が叔父と甥で、血縁関係があるから何とかなるかって思い直したんだろ
リサ
で、でも、あなたの子じゃなくてもあなたと血の繋がりはあるのよ!
リサ
だから、実質あなたの子みたいなものじゃない!養育費払ってよね!
タクミ
なんでそうなるんだよ…兄貴の子だろ。養育費は兄貴に頼めばいいじゃないか
リサ
それは…
タクミ
できないんだな
タクミ
ま、そうだよな。兄貴結婚してるし、
タクミ
奥さんとの間に5人も子供いるからな
タクミ
兄貴の子を産んだとわかれば、大変なことになる
リサ
そうだよ!わかってるくせに!!
タクミ
だから、俺に押し付けようとしたわけだ
リサ
そうだよ…ずっとダイスケさんにこっそり養育費もらってたんだけど、
リサ
五人の子供を育てるのに精いっぱいで、もう払えないって
リサ
どうしても払ってほしければ、私達の関係を公にする必要があるって
リサ
私、ダイスケさんの家庭を壊したくなかったの
リサ
タクミだって同じ気持ちでしょ!
リサ
だから養育費…ううん、再婚して一緒にこの子を育てようよ!
タクミ
は?
リサ
いいでしょ!あなたにとっても可愛い甥っ子なんだもの!
リサ
きっと実の子みたいに愛せるはず!
タクミ
ふざけるな!なんで浮気して別れた嫁と、
タクミ
そいつとクソ兄貴が不倫して作った子供を育てなきゃならない!
リサ
クソ兄貴って…
タクミ
家庭を壊したくない?冗談じゃない
タクミ
喜んで壊してやるよww
リサ
へ?
タクミ
ついさっき、兄貴の奥さんに全部話したよ
タクミ
奥さん、カンカンに怒って兄貴をボッコボコに殴りまくってた
タクミ
そんで、土下座する兄貴には、離婚しない代わりに
タクミ
一生ATMとしてこき使い続ける宣言
タクミ
お前には慰謝料を請求するってさ
リサ
そんな!
タクミ
当然だよな。既婚者に手を出したんだから
リサ
酷い!私この子を抱えて、ただでさえお金がないのに!
リサ
その上奥さんにチクるなんて!
リサ
血の繋がったお兄さんと甥っ子を苦しめて平気なの!?
タクミ
平気だよ
タクミ
俺、弟の元嫁なんかと不倫した兄貴のこと、はっきり言って軽蔑してる
タクミ
そのせいで俺も迷惑被ったしな
タクミ
それに、浮気して離婚した上、兄貴の子を俺の子だと言って押し付けようとしてきて、
タクミ
俺のことを養育費を払わないクソ野郎だと噂を流したお前のことも嫌いだよ
タクミ
あぁそうそう、そんな噂を流されたことで、名誉棄損で訴えることも考えてるから
リサ
嘘!!それくらい許してくれてもいいじゃん!
リサ
あなたって人は、どこまで私を苦しめたら気が済むの!
リサ
鬼!悪魔!!人でなし!!
タクミ
なんとでも言え
タクミ
でもこれで、お前と兄貴の関係が公になったから、
タクミ
養育費だって請求できるだろ
タクミ
良かったな。養育費払ってもらえるじゃんw
リサ
ちっともよくないわよ!慰謝料取られるのに!
リサ
ねぇ再婚してよ!
リサ
私もう二度と浮気も不倫もしないし、タクミの実の子だって産んであげるから!
タクミ
嫌だって言ってんだろ
リサ
そんな…こんなことになるんなら、こんな子産むんじゃなかったわ!
タクミ
は?
リサ
せっかくタクミに似た顔に育ったから、この子をタクミの子供ってことにすれば、
リサ
養育費払ってもらえて、うまくすればヨリを戻せるかなって思ったのに!
リサ
それなのに、逆に慰謝料取られる羽目になるなんて…
リサ
こんな子もう、育てられないし邪魔なだけよ!
タクミ
子供を利用して俺を騙そうとして、
タクミ
それが上手くいかなかったら邪魔者扱いか。つくづくクズだよお前は
リサ
そんなこと言わないでよ!
タクミ
ん?
タクミ
おいおいマジかよ…兄貴の嫁さん、信じられないくらい菩薩だな
リサ
え、何?
タクミ
兄貴の嫁さんな、
タクミ
『そんなクズな母親に育てられるなんて可哀想だ』
タクミ
『旦那が不倫で作った子でも子供に罪はない』
タクミ
『五人も六人も変わらないから、うちで引き取ってやる』ってよ!
リサ
えっ!
タクミ
良かったなぁ。邪魔な子供がいなくなるぞw
タクミ
おまけに、ずっと逃げてた男親にも子育ての負担を負わせられるんだ
タクミ
嫁さん、兄貴には『仕事に加え六人の子供の世話を死ぬ気でやってもらう』って言ってるからな
タクミ
あぁでも、お前には『その代わり慰謝料に加えて養育費を払ってもらう』らしいぞ
リサ
そんな!嫌よ、この子は私の大事な子なんだから、渡さない!
タクミ
今さっき産まなきゃよかったなんて言ったくせに、よくそんなことが言えるよな
リサ
だって養育費もらうどころか、払う側になるなんて!
リサ
ただでさえカツカツなのに慰謝料の上養育費なんて、とても払えないよ!
リサ
シングルマザー手当だってもらえなくなるじゃない!
タクミ
お前の言い分を聞けば聞くほど、手放した方がいいとしか思えないな
タクミ
それから、名誉棄損の慰謝料も用意しとけよ
リサ
それだけでも請求するのやめてよ!!
リサ
元はと言えば、あなたが浮気くらい許してくれないで離婚したせいなんだからね!
タクミ
いやいや、浮気したお前のせいだろ
タクミ
それじゃ、子供のことはどうなるかわからないけど、俺達は弁護士を通して話し合おう
~後日談~
タクミ
その後、俺は優秀な弁護士の手配で、無事に名誉棄損の慰謝料を貰えました
タクミ
リサは友人達に所業が知れ渡り、『よくも騙したな』
タクミ
『子供利用して旦那騙そうとするとか引く』と責められ、
タクミ
友達を一人残らず失ったようです
タクミ
子供を手放すことはずっと抵抗していましたが、
タクミ
結局は義両親の説得もあり、兄貴一家に預けることになりました
タクミ
今では義両親の監視下で、一括で支払った慰謝料に加え毎月の養育費の支払いに追われ、
タクミ
借金塗れになりついに夜の店で働き出したそうです
タクミ
兄貴はボロボロになって仕事と六人の子の世話に追われながら、
タクミ
それでも不倫の子を引き取ってくれた嫁さんに頭が上がらず、こき使われているのだとか
タクミ
子供は特に問題なく育てられ、五人の異母兄、姉達に可愛がられているそうです