一年間ずっと
片想いしてた男の子に
告白するって決めた
今世紀最大の勇気を振り絞って
靴箱に手紙を入れたのに
「いたっけ?」
突きつけられたのは
残酷な現実
ツラくて苦しくて悲しくて
惨めで恥ずかしくて
バカみたいに思えたから
一年分の想いは
なかったことにした
そしたら忘れられると思った
なかったことになると思った
私を救ってくれたのは
優しい優しいキミでした
もう一度だけ
精一杯の想いをレターに乗せて
どうか
キミに届きますように
まっすぐにまっすぐに
届け、この想い
◇
" 偽りのラブレター "
◇
__ドキドキ __ドキドキ
や、やばい.
すごく緊張する.
ど、どうしよう.
こんなこと
生まれて初めてだよ.
昨日の夜何度も何度も修正して
書き直した手紙を胸に当てた.
いい文章が思い
浮かばなかったこと、
ドキドキと緊張で
何枚紙をムダにしたことか.
大丈夫.
わたしなら出来る.
何も、直接渡す
わけじゃないんだから.
靴箱にそっと入れるだけじゃん.
大丈夫.
大丈夫だよ.
昇降口をスーッと通り抜ける
まだ少し冷たい風が
シュシュで一つにまとめた
長い髪を揺らす.
わたし、浜辺 涼葉は
この春晴れて
高校二年生になりました.
春休みが明けてまだ
そんなに日が経っていないから
新しいクラスには
まだ慣れない.
そんな中、私は一大決心をした.
浜辺 涼葉
うん.
頑張ろう.
私は今日、高校の入学式の日に
一目惚れした木下 大雅くんに
告白します.
◇
『 木下くんへ
大事な話があるので
放課後体育館裏に
来てください.
よろしくお願いします!
二年一組 浜辺 涼葉 』
◇
ラブレターを
書こうとしてみたものの
結局うまく文章が
まとまらなくて.
手紙には時間と場所だけ
指定して、想いは直接
口で伝えることにした.
手紙を靴箱に入れると
いうことだけでも、一大事.
こんなんでほんとに
伝えられるのかな.
浜辺 涼葉
人がいないとわかっていても
キョロキョロと周りを
確認しなきゃ居ても立っても
いられない.
心臓がありえないほどに
ドッドッと激しく脈打っている.
たしか…木下くんは二年二組だ.
クラスが違う木下くんの
二組の靴箱の前までくると
さらに緊張感が増した.
ゴクッと唾を呑み込み
意を決して靴箱を探す.
浜辺 涼葉
上から順に靴箱の名札を
確認して名前を探した.
井上…
加藤…
木下……!
浜辺 涼葉
木下君の名前を発見した途端
ドキンドキンと胸の鼓動が
大きくなった.
本人に会ったわけでもないのに
名前だけでこんなに
ドキドキするなんて.
わたし、相当重症かも……。
なんて思いながら、
もう一度周りを見渡す.
よし、誰もいない.
誰かが出てくる気配もない.
慎重すぎるくらい何度も
確認しているわたしは
周りから見ればかなり
挙動不審な動きを
しているだろう.
サッと開けると、木下くんの
靴はまだ残っていて
校内にいるんだと
いうことがわかった.
テスト前だということもあり
部活は全部活動禁止なので
放課後はフリーなはずだ.
それにしても……。
今までにないっていうほど
ほんとにドキドキしてる.
心臓が口から飛び出しそうって
今みたいな状況でなるんだね.
一年生の時から
木下くんは目立っていて
カッコよくて、オシャレで.
みんなの人気者だった.
私なんて可愛くもないし
地味だし相手にされるのかなぁ.
なんてことを考えたら一気に
気持ちが沈んで暗くなった.
いざとなると臆病になって
勇気がなくなる.
でもわたしは、振られる覚悟で
今日告白するって決めたんだ.
だから、ここで
逃げるわけにはいかない.
私は最後にもう一度だけ
辺りを確認すると、木下くんの
少し汚れたスニーカーの上に
手紙を置いた.
心臓がバクバクいってて
左手でギュッと
そこを押さえる.
足の力が抜けそうになるのを
必死に踏ん張って体を支えた.
い、入れた!
手紙を……木下くんの
靴箱に入れてしまった.
これで後は木下くんが
体育館裏に来てくれるのを
待つだけ.
そこで改めて気持ちを伝える.
体育館裏に移動して
待ち人を待った.
四月下旬、時折冷たい風が吹き
木々の葉っぱが
ザワザワ揺れる.
その光景をぼんやり
見つめていると、胸の
ドキドキが少し落ち着いてきた.
そして、あれから約一時間は
経ったんじゃないだろうか.
浜辺 涼葉
まだ、かな.
遅いな.
さっきから人の声はするけど
こっちに向かって来る
足音や気配はない.
部活がないからみんな
さっさと帰って行き
次第に校舎がガランとして
人気がなくなってきた.
手紙を呼んだら
来てくれる、よね?
私は遠くから顔を覗かせ
校門を出て行く人の中に
木下くんの姿を探していた.
緊張から手に汗を握る.
でも、まだ姿は見えない.
◇
それから十分が経った.
木下くんが出てくるどころか
誰の気配もない.
もしかして……
帰っちゃった、とか?
緊張とパニックで
考えられなかったけど
その場で手紙を読まない
可能性だってあるわけだ.
帰ってから読んで気づく
パターンだってありえるのに
私はいっぱいいっぱいで
自分のことしか
考えられなかった.
浜辺 涼葉
なぁんだ.
いつの間にか両手を胸の前で
握っていたわたし.
ギューッと力がこもって
息をするのも
忘れてしまいそうなほど.
どれどけ緊張してたんだろう.
肩の力が抜けて
放心してしまう.
とりあえず、靴箱を除けば
木下くんが帰ったかどうか
わかるはず.
よし、それだけ
確認してから帰ろう.
あとのことは、また
明日考えればいいよね.
そう思って体育館裏から再び
昇降口へと移動した.
二組の靴箱の前まで来た時
階段からバタバタと
下りてくる足音が聞こえて
動きが止まる.
そしてとっさに
柱の影に身を隠した.
津村 柊
木下 大雅
矢口 裕翔
矢口 裕翔
喜多 涼真
喜多 涼真
木下 大雅
木下 大雅
木下 大雅
矢口 裕翔
矢口 裕翔
津村 柊
津村 柊
津村 柊
バタバタと慌ただしく
下りてきて、靴箱のドアを
開ける音が響く.
__ドキドキ
大雅っていう名前と
聞き覚えのある声.
木下、くんだ……。
ど、どうしよう.
って、どうしようも
ないんだけど.
木下くんを含む男子四人が
どうやら一緒にいるらしい.
手紙……手紙.
もし、今見つかったら……。
津村 柊
津村 柊
__ドキッ
ま、まずい.
よりによって、
友達といる時に……。
矢口 裕翔
わわ、どうしよう……。
木下 大雅
驚いたような木下くんの声.
__ドクッ
き、気づいた……。
喜多 涼真
喜多 涼真
津村 柊
さ、最悪だ.
完全に注目の的じゃん.
みんなの前で披露されて
茶化されるパターン……。
木下 大雅
木下 大雅
津村 柊
津村 柊
矢口 裕翔
木下 大雅
木下 大雅
矢口 裕翔
盛り上がる声を聞いて
顔からサーッと
血の気が引いて行く.
その内の一人は、去年
クラスが同じでいつも
木下くんと一緒にいた男子だ.
いつもやんちゃしてて
何かと騒がしくて
目立っていたから
木下くんの周りにいる人の事は
よく知っている.
封筒の裏に名前を書いたから
見られたら終わり.
ど、どうしよう……。
やだよ.
知られて、ウワサを
流されたりでもしたら……。
もう、学校の中を歩けない.
矢口 裕翔
木下 大雅
喜多 涼真
喜多 涼真
喜多 涼真
津村 柊
津村 柊
津村 柊
津村 柊
木下くんが止めに入るけど
周りは聞く耳を持たない.
矢口 裕翔
矢口 裕翔
最悪.
こんな形で、木下くんよりも
先に彼らに名前を
見られるなんて.
終わった……わたしの恋.
そして、学校生活が.
ショックを受けながらも
木下くんの反応が気になって
聞き耳を立てるわたし.
コソコソしちゃって、
みっともないのは承知の上.
木下くんとはほとんど
話したことはないけど
去年同じクラスだったから
私の顔くらいは
知ってくれていると思う.
……多分.
一年生の時、クラスで
一番目立つグループの
リーダ的存在で、彼の周りには
いつもたくさんの人が
集まっていた.
一見クールで近寄りがたく
見えるけど、話すと面白くて
誰とでもすぐに仲良くなって
しまうところが
彼のいいところ.
人気者で明るくて
おまけに学年で一番モテて
いるということは
親友の杏子(あんず)から
教えてもらった.
ちなみに…類は友を呼ぶらしく
木下くんの友達はみんな
カッコ良かったり
可愛かったり.
私なんかが足を踏み入れていい
世界じゃないって
わかっていたけど
胸に溢れる想いが
どうにもならなくて.
伝えようって決めたんだ.
矢口 裕翔
矢口 裕翔
矢口 裕翔
津村 柊
津村 柊
矢口 裕翔
周りがそんな風に
騒ぎ立てる中、木下くんの声を
聞き逃すまいと
神経を集中させる.
__ドキドキ __ドキドキ
彼らにバレて学校で
ウワサになることよりも
今の私は木下くんの反応が
気になって仕方ない.
津村 柊
津村 柊
涼真……?
同じクラスに
そんな人いたっけ?
まだクラスメイトの顔と名前が
一致しないから、わからない.
喜多 涼真
喜多 涼真
喜多 涼真
喜多 涼真
喜多 涼真
この中でも涼真くんだけは
私の味方をしてくれる.
いい人だよ、あなたは.
涼真.
涼真……
涼真……?
あっ!
思い出した!
木下くんの友達の中でも
唯一の王子様キャラで
甘いマスクと爽やかな笑顔が
特徴的な可愛らしい人だ.
そっか、
同じクラスだったんだ…。
知らなかった.
そこまで接点もないしなぁ.
木下くんの声はまだ
聞こえて来ない.
津村 柊
津村 柊
__ドキンッ
ど、どうしよう.
ドキドキしすぎて胸が痛い.
振られるって、迷惑だって
ことは十分わかってる.
私なんかが手を出していい
相手じゃないってことも.
だけど、どこかで
期待していた.
もしかしたら、これで少しは
気にしてもらえるように
なるんじゃないかって.
たとえ振られたとしても
気持ちだけ知ってもらえれば
それでいい.
多くを望んだりなんかしない.
他の人にバレるのは嫌だけど
ただ私の気持ちを届けたい.
それだけ.
木下 大雅
木下 大雅
木下 大雅
えっ……。
♡きたら続き出します!!☺︎ 読んでくれて📖 ありがとです!! 少し長かったですが; ぜひ他のも 見てみてください!!☃
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