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次の日の朝。
教室に入ると、赤くんがすでに席で待っていた。
いつも通りの穏やかな笑顔。
昨日のことなんて、なにもなかったかのように。
赤 。
橙 。
私は、なるべく平静を装って挨拶を返す。
けれど心の中では、疑いと不安がぐるぐると渦を巻いていた。
彼がスマホを覗いた形跡なんて、どこのにもない。
証拠もない。問い詰める理由も、根拠もない。
赤 。
その一言に、心臓が跳ねた。
橙 。
赤 。
赤 。
あぁ、よかった。そういう意味。
そう自分に言い聞かせても、安心はできなかった。
私が見られている。知らないうちに、誰かに、ずっと。
だけど_
赤 。
赤 。
そう言って微笑む赤くんに、ほんの少しだけ、心が揺れた。
怖い。けど、優しい。
押しつけがましくもなく、ただ真っ直ぐに心配してくれるその姿に。
こんなふうに心配してくれる人、今までいなかった。
怖い。でも_嫌じゃない。
いや、むしろ少しだけ、嬉しいと思ってしまった。
それが彼の本心なのか、それとももっと別の"何か"なのか。
私はまだ、知る由もなかった。