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ねこねこにゃんこ
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#〔インターネット少年/少女〕
狸野 ゆゆせ
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ひかりの声が少しだけ硬いと感じたのは、配信が終わる少し前だった。 画面の向こうで笑っている。 コメントも拾えている。 話題も回っている。 何もおかしくない。 なのに、どこか一枚だけ薄い膜をかぶったみたいな声だった。
他箱コラボの相手は、明るくて話しやすい人だった。 雑談も弾む。 配信の空気も悪くない。 むしろ、すごくやりやすい部類だった。 それなのに、ふとした拍子に気づいた。 ひかりの通知が来ていない。 いつもなら、配信の前後で短いメッセージがひとつ来る。 「がんばってね」 「おつかれ」
それだけのことが多い。 でも、今日はない。 レイは、スマホを見ながら少しだけ眉を寄せた。 別に、気にしすぎる必要はない。 ひかりにも、自分の配信がある。 たまたま忙しかっただけだ。 そう言い聞かせても、妙に胸の奥が静かにならない。
配信が終わって、ようやくレイが送ったのは、ただの一言だった。
おつかれ
自分でも、少し雑だと思った。 でも、変に長く送って誤解されるのも嫌だった。 ひかりはきっと、そういうのをすぐ照れる。 だから短くていい。 短くて、わかるなら、それでいい。 返事はすぐ来た。
おつかれ
たったそれだけ。 なのに、少しだけ安心した。 ……よかった。 ちゃんと返ってくる。 それだけで、こんなに気が楽になるのかと思う。
ただ、安心したのも束の間だった。 次に画面の向こうから返ってきたのは、どこか少しだけ尖った声だった。 「レイのほうこそ、今日は別の人と楽しそうだったじゃん」
その一言で、レイは思わず目を上げた。 見てたのか。 思ったより、その事実が嬉しかった。 嬉しかった、というのも変だが、正直なところだった。 ひかりが気にしてくれた。 自分の知らないところで、ちゃんと見ていた。 そのことが、胸の奥を少しだけあたためる。
けれど、同時に気づく。 ひかりは、たぶん少しだけ我慢している。 声の間、返事の速さ、言葉の選び方。 全部が、いつもよりほんの少しだけ遅い。 ひかりは自分で思っているよりずっと、感情が出やすい。 そして、それを隠そうとすると、かえってわかりやすい。
「嫉妬?」と聞いたとき、案の定、ひかりはむっとした。 その反応が、レイには妙にかわいく見えた。 かわいい、なんて、口に出したら終わる。 だから、言わない。 言わないまま、少しだけ笑う。
でも内心では、少し違うことを考えていた。 ひかりは、自分のことを見ている。 気にしている。 そして、それを認めたくない。 それが、たまらなくうれしかった。 レイは昔から、人に気づかれるより先に気づく側だった。 空気の揺れも、声の変化も、相手の我慢も、だいたい分かる。 けれど、それをわざわざ言うことは少ない。 言ったところで、相手は素直に受け取らないことが多いからだ。
それでも、ひかりだけは少し違う。 ひかりは、気づかれたことを嫌がるくせに、気づいてほしい顔をする。 自分で隠しているのに、隠しきれない。 その不器用さが、レイにはとても見覚えがあった。 似ている。 たぶん、だから気になる。
似た者同士は楽だ。 けれど、楽だからこそ、少しでも相手が揺れると、自分も揺れる。 今日のひかりは、まさにそれだった。 レイは通話越しに、ひかりの声を聞きながら思う。 この人は、たぶん自分が思っているよりずっと、自分にとって特別になっている。
最初は、ただ空気が合うと思った。 話しやすい。 返しやすい。 一緒にいると、妙にやりやすい。 それだけだったはずなのに。
いつの間にか、誰と組むか気になるようになった。 少し元気がないと、それだけで気になるようになった。 配信の裏で短く交わす一言が、思っていたよりずっと残るようになった。 今日だってそうだ。
他の誰かと笑っているひかりを見て、別に嫌だったわけじゃない。 でも、ひかりが自分にだけ見せるあの少しだけ強い声を聞いた瞬間、胸の奥が妙に鳴った。 ああ、気にしてくれてるんだ。 そう思ってしまった自分が、少しだけ情けない。 けれど、ひかりは続けてしまう。 「ちゃんと、見てるよ」
その言葉が、思った以上に深く刺さった。 見てる。 ちゃんと。 その二つがそろうだけで、こんなに救われるのかと思う。 レイは、ひかりに見られていることが嬉しかった。 同時に、見られてしまったことに少しだけ照れた。 気にしてほしいくせに、気にされたら困る。
そんな面倒な感情が、自分の中にあるのをレイは知っていた。 ひかりが「次、コラボするときは言ってよ」と言ったとき、レイは少しだけ息を飲んだ。 それは、嫉妬をはっきり言葉にしないまま、でも確かに“自分を見ていてほしい”と伝えてくる言い方だった。 レイは、その不器用さが好きだった。
だから、すぐに言った。 「うん。言う」 約束、という単語が、思ったよりきれいに落ちた。 ひかりが少しだけ安心したのが、声の温度でわかる。 ……ああ、やっぱり。
この人は、自分にとってかなり危ない。 こんなふうに、簡単に気持ちを動かされる。 通話を切ったあとも、しばらくレイはスマホを見ていた。 本当は、もう少しだけ言葉を足してもよかった。 でも、ひかりはたぶん、あまり重い言葉をすぐには受け取れない。 だから、今日のところはこれでいい。 少しだけ気にしていたことが伝わって、少しだけ気にされていたことがわかれば、それで十分だ。
……十分、のはずだった。
それでも、レイはひとりになってから、何度も思い返してしまう。 ひかりの声。 少し硬かったこと。 自分の知らない誰かに向いた視線に、ほんの少しだけ揺れた声。 そして最後に見せた、少しむくれたような、でもどこか安心したような気配。
嫉妬か、と聞いたときの反応は、まだ耳に残っていた。 わかりやすいなあ、と言ったのは本音だ。 でも、本当は自分のほうがずっとわかりやすかったのかもしれない。 ひかりが少しでも自分を気にすると、こんなにも嬉しいのだから。 レイは小さく息をついて、天井を見上げた。 やっかいだ。 本当に、やっかいだ。
けれど、そのやっかいさすら、今はもう嫌じゃない。 次にコラボするとき、何を言おうか。 誰と話すか、ちゃんと伝えるだけじゃ足りない気がする。 ひかりが安心する言い方。 ひかりが少しだけ照れる言い方。 それを考えている自分に気づいて、レイは苦笑した。
……もう、かなりだめだな。 でも、たぶん悪くない。 ひかりが自分を見てくれている。 それだけで、今日のざわつきは少しだけ意味のあるものになった。 そして何より、レイは知ってしまった。 ひかりが他の誰かに向ける笑顔より、自分に向けた少しむくれた声のほうが、ずっと好きだということを。 その事実を胸に置いたまま、レイは静かに目を閉じた。
コメント
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**美月ゆめか**だよ〜!!🎀✨ 第4話、めっちゃ刺さった……😭💕 ひかりの嫉妬、すごく不器用でかわいくてさ。 レイが「気にしてくれてる」って気づく一連の流れ、もうキュンが止まらんかった…! 「ちゃんと見てるよ」がこんなに深く刺さるとは思わなかったよ。 お互い似てるからこそ、ちょっとした揺れで自分も揺れる感じ、すごくリアルで好き。 二人の距離がじわじわ縮まってるの、続きが待てなさすぎるよ…! **#Vtuber #すが #二人の空気感が尊い**