テラーノベル
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🛌『君がいるだけで』🌷
病室の天井が、静かに視界に映る。
ーーここは、いつもの病室。 けど、あのとき確かに……僕は倒れて……
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ゆっくりと首を傾けると、ベッドの横、椅子に小さく丸くなって眠る姿があった。
少しだけ乱れた髪。伏せられたまつげ。頬に残る乾いた涙のあと。
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僕の手には、くしゃくしゃになったままの手紙。 そうだ。僕は、あのときーーちゃんと伝えようとしてた。
静かな呼吸音。やわらかな寝顔。
ほんの少し、身体を起こして、手を伸ばす。 彼女の頬に落ちそうな髪をそっと払って、 そっと顔を近づけて、僕は自分の額を彼女のおでこにあてた。
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言葉にするにはまだ早い想いを、額越しにそっと伝える。 しばらくそうしてるとーー
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かすかに目を開けた彼女と、ほんの数センチの距離で視線が重なった。 僕の顔を見て、ぱちくりとまばたきをしたあと、えとさんの瞳が潤んだ。
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言葉の代わりに、彼女の手をそっと握る。 もう少しだけ、この静かな時間のなかでーー 言葉よりも、心で想いを伝えていたかった。
☄️『おかえし大作戦』🌷
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ベッドの上で半身を起こしながら、僕はニヤリと笑う。 さっきのしっとりタイムはどこへやら、今は少しずついつもの調子が戻ってきてた。
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えとさんはぷいっと顔をそらしながら、おでこに触れてた 僕の仕返しとばかりに、僕の手の甲をぽすっと叩く
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えとさんが頬をぷくっと膨らませるから、僕はつい、 「その顔のまま冷蔵庫に入ってそうだね」と言ってしまった
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えとさんがふにっと枕を持ち上げて、僕に向かってドンっ
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枕攻撃を受けながらも、僕は笑いが止まらなくて。 ああ、こういうのがーー
いつもの、僕たちの時間だったんだなって、やっと思い出した。
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小さくつぶやくと、えとさんの手がそっと、僕の髪を撫でた。
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❄️『冬、想いはまだ、胸の中でーー』
カーテン越しに聞こえる、えとさんの咳が少し強くなった気がして、 僕は本を閉じた。
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ほんとは苦しいはずなのに、笑って誤魔化す声に、何ともいえなくなる。 あとどれくらい、一緒にいられるんだろう。
あとどれくらい、君の声が、姿が、そばにあるんだろう。
僕はそっと、自分の胸ポケットを押さえた。小さな手紙。 いつか渡そうと思って、でもまだ渡せていない。
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えとさんが、ふいにそうつぶやいた。
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その声が、なんだか少し寂しそうに聞こえて。 その横顔が、雪みたいに透けて見えて。僕は、何かを言わなきゃって思った。
でもーー
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ダメだ。まだ、言えない。 この想いを口にしたら、何かが終わってしまいそうで。 もしかしたら、これが最後の「好き」になってしまう気がして。 そんなの、怖くて。
それでも僕は、ぎゅっとポケットの中の手紙をにぎりしめた。 冬の空の下、あと少しの時間で、君にーー
「好き」って、伝えられるだろうか。
❄️『冬、好きの代わりに空をみた』
窓の外には、もう葉っぱの落ちた木々と、白い空。 遠くのビルの隙間に、雪雲みたいな雲がゆっくりと流れていく。
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ほんとは、「私のこと、どう思ってる?」って聞きたかったのに、 なんでこんな遠回しな聞き方になっちゃうんだろ。
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その答えが、優しくて、なおきりさんらしくて、 私は、また言えなくなった。
(ほんとは……ねぇ、好きって言いたいよ。言いたいのに)
少し前に、なおきりさんが枕元に手紙を置いてくれてたことがあった。 でもそれ、まだ開けてない。怖くて。もしそこに、なにも書いてなかったらどうしようって。
優しい嘘が書いてあったらどうしようって。 だから今日も私は、“冬って好き?”なんて、
どうでもいい言葉でごまかす。
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なおきりさんが言いかけて、でも飲み込んだ言葉。 たぶん、私と同じ。言いたいけど、言えない。
分かってるのに、聞かないふりをしてしまう。 ーーやだなぁ、こんな冬。
もう時間がないのに、言葉だけが宙ぶらりんで。 もうすぐ春が来るのに、私たちはまだ冬のままで。
心の中でそっとつぶやいた。
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だけどその想いも、息に混ざって白くなり、窓にぶつかって、消えていった。
❄️『……いま言わなきゃ、きっと後悔する』~告白未遂~
午後の検査が終わって、夕暮れの廊下をふたり並んで歩いてた。
窓の外はオレンジ色の光に染まって、冬の寒さの中に、少しだけあたたかさがあった。
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呼ぶ声が震えてしまったのは、風のせいじゃない。
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横顔が振り向く。 その瞬間、息が止まりそうになった。 優しい目。いつもと同じように私を見てくれてるーー でも、それがたまらなく遠く思えた。
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うまく言えない。 心臓が痛いくらいバクバク鳴ってて、喉が詰まる。 ここで言わなきゃ。もう、こんな時間、何度もあるわけじゃない。
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(好きだよ。ずっと。ずっと、なおきりさんが。)
言葉が、口の先で止まったその瞬間。
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急に風が吹いて、私の手から紙袋が飛ばされた。 お見舞いのお菓子と、今日こっそり買ってきたマフラーが床に散らばる。
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なおきりさんが慌ててしゃがみ込んで、全部拾い集めてくれる。 私はただ立ち尽くしてた。
言えなかった。
あんなに、あんなに心を決めてたのに。
胸がぎゅっと痛くなって、悔しくて、でも泣きそうになる自分を誤魔化して笑った。
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なおきりさんの手が、そっと私の指先に触れた。 優しくて、あったかくて、泣きたくなった。
言えないまま、夕焼けの廊下をふたり、また歩き出す。
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でも、心の奥で小さく叫んだ。
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コメント
3件
1日に沢山投稿してくれて感謝すぎます!! 無理しない程度に頑張ってください!!!!!