翔洋
寒い…
いつの間にか眠ってしまっていた
冷たい風が頬を刺す、 木々の間をすり抜ける音が耳をかすめた 遠くで車の音が響いては消えてゆく
もう朝になりかけていた
翔洋
何か違和感が、
翔洋
頭にもやがかかっているようだ…
翔洋
いつ外に出てきたかすらわからない
なぜか家には帰りたくない 結衣たちのところへ行こうか…
ふらふらとどうしようもなく、 頭が空っぽでただ足が動くままに歩いていた
誰とも話す気になれず ただ景色を眺めるはずだった
それなのに1人の少女を見た瞬間、目を奪われた
ただ公園のベンチに座って本を読んでいるだけなのに目を奪われた、そこだけ空気が違うような気がする
惹かれる理由なんてわからない ただ、目を離せなかった
気がついた時には その少女に声をかけていた
翔洋
何してるの?
少女
え?
少女が驚いたように顔を上げた。
その瞳が朝日にきらめき、 おもわず息を呑む
翔洋
あ、ごめん
1人で本を読んでたから気になっちゃって
1人で本を読んでたから気になっちゃって
少女
…いつのまにかここにきてて
本を読んでたの
本を読んでたの
少女は微笑んだ。 その顔にはどこか懐かしさがあって 胸がざわつく
朝日の中、少女の髪は柔らかく 光を受けて輝いていた。
それは雪の結晶のように儚げで、 けれど確かにそこにあるような 美しさだった。