テラーノベル
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作者:亠
罪。 それは、七瀬辰馬が自ら「隠していた」ことを、今になって明らかにしようという意味だ。 「なぜこのタイミングで? そしてなぜ、私たちを選んだ?」と杉山澪が尋ねた。 「君たちは、全員――私の過去の“節目”にかかわってきた。無関係な人間はいない。私の人生において、君たちは“証人”であり、“共犯者”でもある」 共犯者、という言葉に一瞬ざわつく室内。 だが辰馬の顔は真剣だった。 「一週間の間、この雪原荘で“答え”を探してほしい。私の遺書がどこにあるか。そして、私が何をしたか。それを見つけた者に、全てを託す」 「託すって……おまえ、死ぬ気じゃないって言っただろうが」 名越が立ち上がり、怒鳴るように言った。 だが辰馬は静かに首を振った。 「私は、もう長くない。……医者から余命宣告を受けたんだ。遅かれ早かれ、そのときは来る」 全員が息をのんだ。 「このまま死ねば、すべては闇に消える。でも、それではいけないと思った。私が生きてきた証を、きちんと残すために……君たちに託すことにした」 誰も、すぐには口を開けなかった。 辰馬の語る“遺書”は単なる手紙ではない。過去に葬られた事件。未解決の闇。そして、関係者の秘密――それらすべてが含まれている可能性がある。 「……探せって言うけど、範囲は? この広い屋敷のどこかってことか?」と俺は尋ねた。 「ああ。ヒントは、ある程度用意してある。だが、ただのゲームだとは思わないでくれ。中には、危険を伴うものもあるかもしれない。君たちが、どこまで深く潜れるかが試される」 その瞬間、薪ストーブの火がぱちんとはぜた。 まるで、辰馬の宣言に応じるように。 誰もが無言のまま、それぞれの思惑を胸に抱きながら部屋へと戻っていった。 そして、その夜。 第一の死体が、発見される―― そんな予感を、俺はなぜか拭えなかった。
作者:亠
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