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最高のラブドール

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最高のラブドール

1 - 最高のラブドール

♥

125

2021年03月03日

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園田偉文

ようこそ、ショールームへ

森野裕

お邪魔します

園田偉文

どうぞ、ご自由にご覧ください

森野裕

(す、すごい)

森野裕

(とてつもなくリアルなラブドールが、部屋一面に飾られている)

森野裕

(精巧に作られているから、近くで見ても美しい)

森野裕

(まるで本物の女性のようだ)

森野裕

これらは、全てあなたお一人で?

園田偉文

ええ、この子達は私が丹精を込めて生み出しました

森野裕

触ってみてもいいですか?

園田偉文

もちろんです

森野裕

(滑らかで綺麗な肌だ)

森野裕

(……でも、やはり本物とは程遠い)

園田偉文

ご不満なようですね

森野裕

あ、すみません

園田偉文

いいんですよ

園田偉文

正直に言って、私もこの子達には満足していない

森野裕

(満足していない……?)

森野裕

失礼ですが、それは妥協した作品だという意味ですか?

森野裕

そうなると、ここまで足を運んだ、僕の苦労が無駄になる

森野裕

企業に属しての人形制作に満足できず

森野裕

たった一人でラブドールを作っている、職人気質のアーティストがいると聞いて、わざわざここへ来たんですよ?

園田偉文

申し訳ありません

園田偉文

つい口をすべらせてしまいました

園田偉文

ですが、私は決して妥協したものを売りつけるようなアーティストではありません

園田偉文

そこは信頼してください

園田偉文

私はラブドールをただの性欲処理の玩具だとは思っていません

園田偉文

ラブドールは芸術品なのです

園田偉文

……ただ、ここに飾られている子達は、その域には達さなかった

園田偉文

最高の女性は、表には出していないのです

森野裕

最高の女性?

園田偉文

彼女は、扉の奥に鎮座しています

森野裕

(一体、どんなラブドールなんだ?)

森野裕

その彼女を、ぜひ拝見したいのですが

園田偉文

いいでしょう

森野裕

ありがとうございます

園田偉文

ですが、その前にあなたがラブドールを愛するようになった経緯をお聞かせください

園田偉文

信頼できるお客様にのみ、彼女と会ってほしいので

森野裕

分かりました

森野裕

……僕には、婚約者がいました

森野裕

十年付き合って、やっと婚約までこぎつけた

森野裕

幼なじみだった彼女は、僕の初恋の相手でもありました

森野裕

もちろん、僕の女性経験は彼女一人でした

森野裕

でも、彼女の方は違った

森野裕

彼女は浮気をしていたんです

森野裕

僕と付き合っている間に、彼女は何人もの男と関係を重ねていた

森野裕

絶望した僕は、彼女と別れた

森野裕

そして、絶対に裏切らない女性を見つけたいと思った

森野裕

その結果、ラブドールにたどり着いたんです

森野裕

でも、すぐ虚しい気持ちになった

森野裕

その肌が、リアルなものとは程遠かったからです

森野裕

今まで何体ものラブドールを購入しました

森野裕

でも、満足のいくリアルさは得られなかった

森野裕

それで、ここに来ました

園田偉文

そのような事情でしたか

園田偉文

話してくださり、ありがとうございます

園田偉文

やっと、彼女をお譲りできる人物に会えた気がします

園田偉文

こちらへどうぞ

園田偉文

彼女がお待ちです

そう言って、園田は扉を開いた。

そこには、教会のような空間が広がっていた。

花で飾られた祭壇の中に、彼女は横たわっていた。

彼女は純白のドレスを着て、頭には豪華なティアラを乗せていた。

森野裕

(人間……?)

森野裕

(いや、人形?)

園田偉文

遠慮なさらず、もっと近くでご覧ください

森野裕

(こ、これは)

森野裕

(なんてリアルなんだ……!)

森野裕

(今まで見たラブドールの中で、一番人間と見分けがつかない)

園田偉文

どうぞ、お触りください

森野は彼女の頬に触れた。

森野裕

(こ、これは、ただ滑らかなだけではない)

森野裕

(きめ細やかで、肌に吸い付くようだ)

森野裕

(不思議と体温すら感じる)

園田偉文

通常はシリコンを使うのですが

園田偉文

この子は、私が開発した特殊な素材を使用しております

森野裕

(これぞ追い求めていた理想のラブドール!)

森野裕

(絶対に手に入れたい……!)

森野裕

彼女の、名前は?

園田偉文

ミレイといいます

森野裕

……ミレイ

森野裕

あの、おいくらですか?

園田偉文

特別な子なので、正直値段はつけたくないところですが

森野裕

そこを、どうにか

園田偉文

1000万円ではどうでしょうか?

森野裕

……1000万

園田偉文

諦めますか?

森野裕

(……正直、他のラブドールとは桁違いに高価だが)

森野裕

(彼女を手に入れるためだ。仕方ない)

森野裕

いえ、買います……!

園田偉文

お買い上げ、ありがとうございます

園田偉文

ミレイを購入されたお客様に、一つだけ注意事項があります

森野裕

注意事項?

森野裕

何ですか?

園田偉文

お手入れについてなのですが

園田偉文

ミレイの肌は特殊な素材で作られているため

園田偉文

その美しさを保つために、毎日のメンテナンスが非常に重要なのです

森野裕

どういったお手入れを?

園田偉文

こちらの特殊な保湿ローションを、全身に塗ってください

園田偉文

美しいものは、儚く、繊細なのです

園田偉文

毎日、必ず塗ってください

森野裕

はい

園田偉文

必ず、ですよ?

森野裕

(……しつこいなぁ)

森野裕

分かりました

森野はベッドの上に、ミレイを寝かせた。

そして、おもむろに彼女の下着を外した。

森野裕

(なんという美しさだろう……!)

森野裕

(とても人形とは思えない……!)

森野は待ちきれないといった様子で服を脱ぎ捨てると、全裸になった。

森野裕

(……ミレイ)

森野裕

(今、そっちへ行くよ)

森野は、ミレイと体を密着させた。

森野裕

(す、すごい)

森野裕

(ミレイの肌が、僕の肌に吸い付いてくる!)

森野裕

(まるで、一心同体になった感覚だ)

森野は、ミレイの頭を抱えながら、接吻をした。

森野裕

(僕は今、ミレイと繋がっている……!)

森野裕

(溶け合っている……!)

森野裕

(なんて、幸せなんだ……!)

森野は、むさぼるように、彼女を抱いた。

部長

森野君

森野裕

はい

部長

来週から、出張に行ってほしい

森野裕

出張ですか?

部長

ああ

森野裕

どこにですか?

部長

名古屋の支店に、一週間ほど

森野裕

……一週間

部長

何か問題でもあるのか?

森野裕

……いえ

部長

じゃあ、頼んだよ

森野裕

(一週間、家に帰れない)

森野裕

(ミレイと会えない)

森野裕

(お手入れは、どうしよう)

森野裕

(毎日ローションを塗らないといけないのに)

森野裕

(一緒に連れていくわけにもいかないし)

森野裕

(……まぁ、いくらリアルとはいっても、人形だし)

森野裕

(一週間ぐらい、放っておいても大丈夫だろう)

一週間後。

森野裕

(はぁ、やっと帰ってこれた)

森野裕

(また今日から、ミレイと心置きなく愛し合える……!)

森野裕

ただいま、ミレイ

森野は部屋のドアを開けた。

森野裕

(うっ、何だ、この臭い!)

森野裕

(何かが腐っているような、強烈な臭いだ!)

森野はベッドに横たわるミレイに近づいた。

森野裕

(ミレイに近づけば近づくほど、臭いがひどい!)

森野はミレイにかかっている布団を剥ぎ取った。

森野裕

ミレイ!

見ると、ミレイの全身はカサカサに乾いてひび割れていた。

それにとどまらず、皮膚のいたるところは捲れあがっている。

森野裕

……そんな

森野裕

……なんてことだ

森野は恐る恐る彼女の頬に触れた。

すると、皮膚は黄色い膿を出してずり落ち、中から蛆虫が這い出てきた。

森野裕

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!

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