主
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如何して。如何してなんですか、国木田さん。僕を置いて。激戦の末に殺された?何を言ってるんですか。あなた。それこそ貴方の理想に反してるんじゃないですか。ねえ。僕、もう死んでしまおうかと思ったんです。貴方について報告が来た時。
「太宰さん。」 「何だい?」 「国木田さんが、死んだと聞きました。」 「……うん。そうだね。」 「如何してですか。」 「それは、私にも分からないよ。」 「僕、国木田さんに何も出来てないんですよ。まだ何も返してない。なのに、何で、何で置いて逝っちゃうんですか?如何して、僕だけ置いていくんですか?僕はもう、生きる意味なんて無いのに。如何して。 僕は国木田さんと生きる道を選んだ。こんな、どうしようもない僕の傍にあなたはいてくれた。それだけで良かった。それだけで良かったんです。」 「…私には何も出来ないよ、桂君。」 「どうして、如何して置いて逝ってしまうんですか?僕は貴方がいないと何も出来ないのに。如何して僕だけ、」 「……。」
僕は国木田さんの部屋に入った。ぐちゃぐちゃに乱された布団の上に膝から崩れ落ちる。匂いも温度も何も無いその布団を僕の涙で濡らした。 「国木田、さん……っ」
もう、涙は枯れ果てたと思っていたけれど。まだ出るんだなあ。そうぼんやり思ったら、もうどうでも良くなって来た。僕は仰向けになり、ただ天井を見上げている。ああ、そう云えば貴方。そう。貴方が言っていた通り、時間は既に止まってしまってるんです。僕がどれだけ願おうが、どれだけ待っていようが、貴方が戻ってくることはない。「如何して、こんな仕打ちをするのですか。如何して僕を一人にしようとするんですか。僕は、まだ貴方に何も返していないと云うのに。」
届かない声でそう云った。国木田さんから返事は返って来ない。当たり前だ。分かっていても辛いなあ。「貴方は、何時も僕を一人にしないと云うのに。如何して置いて逝ってしまうのですか。」僕は死んだように目を閉じた。もう、何も見たくない。見れないんだ。国木田さん。もう疲れました。僕は何処へ行けばいいですか?ねえ。ここで僕を導いてくれるのが貴方なんじゃないですか?貴方の理想は貴方ごと灰になってしまったんですか?ねえ。ああ。このまま、僕自身も灰になってしまいたい。「国木田さん、」
僕の世界は色を失った。ただ呆然とを見つめているだけの生活が始まった。そこに救いも何も無いのに、如何して僕は生きているのか。そう考えた時もあったけれど、もうどうでも良くなっていたから考えなかった。 「太宰さん、」「・・・・・・何だい?」「僕、如何したらいいですか?」「・・・私に出来ることは何も無いよ。君が、精一杯国木田君の事を愛している。その形だけでも、国木田君は救われてるんじゃないかな。」「そう、ですか。」ああ、あなたは罪深い人だ。真面目な貴方が初めて裏切るのが、僕だなんて。そんなのでいいんですか。
僕はこの色のない世界で生きていかなければならないんですか。如何してこんな時に限って救い出してくれないんですか。ねえ。どうか、答えてください。愛した形があるうと、それで貴方が救われようと、やっぱり寂しいんです。どうか。
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