……時は満ちた。
セカセカ動き回る働きアリが寝静まる丑三つ時、それが僕の活動時間。
寝床から飛び起きて、早速ゲーミングPCの前に陣取る。
洗顔?歯磨き? 僕にはそんなもの必要ない。
何なら僕は選ばれた存在だからね⭐︎
実家からの仕送りのドリンクも準備完了!
さあ、アクセース!
馴染みのオンラインゲームを立ち上げ、資源調達に励む。
ちぇ、シケてんなあ
これだけ倒してもレアドロゼロかよ
坊っちゃま、まだ起きたらしたんですか!
もうすぐ日が明けてしまいますよ!
んだよ高森、面白くねーなー
いいですかな坊っちゃま、人が夜を畏れなくなったとはいえ
坊っちゃまがこうも堕落していらっしゃったら旦那様にも面目が……
……お!
聞いていらっしゃるのですか!!
よっしよっし、オリハルコン鉱石げっとー⭐︎
坊っちゃま!!!
まあ待ってなって……
『初心者の方、オリハルコン鉱石を格安でお売りします』
……ほらほら、「ギルマスさん、ありがとうございます!」って!
ゲームでも人の願いは叶えられる、これも「畏れ」と同じ「信仰」の一つだろ?
感謝されてるのはゲームのキャラクターであって坊っちゃまでは……
実家の「ドリンク」で食いつなげられるしさ
しばらくはこうやって平和にダラダラ暮らしてようよ
……あ、そろそろ日が明ける
あっ……
カーテンから差し込む日の光を浴びた高森は……
🦇
キーーー、キーーー!!!
人間の姿を保てなくなり、元のコウモリに戻ってしまった。
ほらほら、もっと陽が当たると火傷しちゃうからさ
高森は家に帰ってな?
その言葉に応じて、すごすごとケージの中に帰っていった。
さあ、僕もお肌が荒れちゃうし
そろそろ寝ようかなっと!
そう言ってカモフラージュのために置いてあるベッドのマットレスを持ち上げて
中に隠してある棺の中に入り、バタンと扉を閉めた。
TELLER文芸部 夜柚さん案
お題:朝と夜