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小峠華太
和中蒼一郎
俺を庇い、華太の心臓は凶弾に貫かれてしまった。
即死だった。
和中蒼一郎
血だまりの中に臥せる体を抱きおこす。
何度も華太の名を呼ぶ。けれど、華太は目を覚ますことはない。
まだ体には、僅かばかりの体温が残っている。
和中蒼一郎
俺の願いは届かない。
段々と体温を失っていく、華太の体を抱きしめながら、止むことのない涙を流す。
俺は頬を伝う涙をそのままに、華太の骸を抱き抱え 、闇医者へと急ぐ。
華太を朽ちさせないために。
俺から華太を奪う事は、決して俺が許しはしない。
たとえそれが『死』だったとしても。俺は認めない。
和中蒼一郎
氷室
和中蒼一郎
氷室から華太を受け取る。生を止めた日のままの華太が、俺の腕の中に戻ってきた。
和中蒼一郎
あの日、どうしても、華太を手放したくなかった俺は、氷室に華太を木乃伊(ミイラ)にするように頼みこんだ。
当然といえば当然だが、氷室はいい顔をしなかった。しかし、生前からの華太との約束を盾に俺が押しきった。
和中蒼一郎
見た目だけは生前のままだが、木乃伊になったことで相違点が出てくる。それは華太を構成する匂いと中身。
脳や内蔵の腐敗が進行すると体も腐る。だから、華太の中の臓器は全て取り除かれ、腸の代わりに綿が詰められている。そして、外側も腐敗を防ぐために、油脂が塗られている。
和中蒼一郎
ただ一つだけ残念なのは瞳。
眼球は腐りやすい上に、防腐処置のしようがない。今、華太の眼瞼部には、義眼が嵌め込まれている。
澄んだ空を彷彿させるような蒼の瞳は、何よりも俺のお気に入りだった。もう、あの瞳が俺の姿を映す事はない。それだけは残念だ。
和中蒼一郎
弾力のある肌、艶やかな唇、閉ざされた瞼が、死んでもなお俺の心を惹き付けて止まない。
生前の姿のまま、時を止めた華太は、まるでお伽草子の中の眠り姫のようだ。
隣で眠る華太に、俺はそっと口づける。童話なら、ここでお姫様は目を覚ますが、華太が目を覚ます事はない。
それでも構わない。愛の形なぞ、人それぞれだ。なら、俺たちだけの愛の形を作ればいい。
さあ、眠り姫、俺とお前で永遠の愛を綴ろうか。
おわり
あとがき 童話の眠り姫も好きで、定番のキスで目覚めるのもいいけど、反対に目覚めないのも面白いと思い、犯行に及んだと犯人は自供しているとの事。和ニキは見た目があれなだけで、もとは狂人だから、こういうタイプのヤンデレになると思う。 実はこれ隠しで、もう一つのテーマがある。 『一蓮托生』 意味を知らない人に限って、耳障りがいいから使う言葉。 一蓮托生とは、結果の善悪に関わらず、運命を伴にする。死後に同じ蓮の花の上に生まれ変わりましょうね、という意味。 つまり、貴方が死ねば、私も後を追って死にますよと約束しているのと同じことである。江戸時代、心中する人たちの間で交わされる約束が、この一蓮托生という言葉。死ねれば幸運だが、心中に失敗すれば、厳しい罰がまっている。心中に失敗して生き残っても、片方が死んでいれば死罪。 意味を知った上で、約束するならともかく、知ったかぶりで約束するには代償は大きい。なので、ほいほい口にする人は間違いなく、意味知らないし、時代背景すら知らない。 無知は恥ではなく、無知とは時に罪。 一応、予定では、アラジンと魔法のランプパロで、あおかづを書く予定。 あと親指姫で話を書きたいけど、何のカプで書くか、ただいま迷い中。