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トレイシー
申し訳無さそうに少しだけ眉を下げつつ、トレイシーはイソップから距離を取る。
イソップ
其れから丁度良い位置に置かれていた椅子に腰掛けると、彼女は何かを思い付いた様子で息を漏らした。
トレイシー
イソップ
トレイシー
“げっ”。マスク越しから微かに、苦虫を噛み潰した音が聞こえてくる。
トレイシー
希少な反応、人間の動作に久方振りに興味を持ったトレイシーは、顔に陳腐な紅潮を乗せ、再びイソップに近付いた。
イソップ
トレイシー
イソップ
トレイシー
イソップ
イソップ
何度噛んでも噛みきれないパン。 口に広がらない下手な小麦の味。 私が齧った筈の栄養。
不味い。
吐き出したところでゲームは免れない。 迷惑にもなるし、嫌な顔を浮かべられる。
トレイシー
ーーさん。
ーーックさん。
イソップ
イソップが己を呼ぶ声に、トレイシーははっと声を上げた。
イソップ
それと同時に、冷静な声で衝撃的な事実。トレイシーは皮肉の一つでも言ってやろうと口を開けた。
ーー開けたかった。
トレイシー
何人もの死を送って来た者の“体”とはとても思えぬ、“身体”に伝わる確かな温かさ。
それが何故か、唯の気の迷いか、理由は解らぬが
トレイシー
何時までも浸かっていたいと思えた。
××××年12月28日
久し振りに誰かを触った。 あんな形(なり)でも、彼女は生者だ。