いれいす 短編集

⚠注意⚠ ・青桃です ・創作奇病パロ ・悲恋 ・BL ・攻め→青 受け→桃

消恋病

恋をすればするほど記憶が欠落していく病気

幸せになんてなれるはずなかった

それでも希望が捨てきれなくて

ただひたすらに君を愛した

でもそんな都合のいいことが起こるわけもなくて

君は春の訪れとともに消えた

もしこんな病気さえなければ

君も俺も

少し前まで二人で寝るのには少し小さいベッドが置かれていた床

彼のイメージカラーのピンクのカーテンがかけられていた窓

思い違いなわけがなかった

昨日あんなに楽しそうに話をしていたのに

また一つ、欠ける

欠けたら、埋める

埋めて

また欠ける

毎晩甘い声と共に欠けていく彼の記憶

溺れる度

愛する度

俺だけに降り積もっていく

ないこが指さしたのは俺が出会って最初の誕生日にあげた花

ずっと取っておきたいから、と言ってドライフラワーにしていた

ないこが悪いわけじゃない

でもやっぱり辛い

俺だけが好きみたいで

俺の事なんて興味がないみたいで

覚えてる、忘れるわけがない

忘れてるのは、君の方

…そんな顔でそんなこと言うなよ

まるで

俺が悪者みたいじゃないか

…やっぱり、愛さなければよかった

ついに、この時が来た

病気が分かってから今日まで三年と少し

俺は

俺の役目はここまで

スーツケースをつかんで部屋を出る

ドアの前で膝から座り込む

頬を伝う水滴

情けない嗚咽を唇をかんで必死にこらえる

もうこれで君とは

満開の桜が目に染みる

彼の瞳と髪を髣髴とさせる綺麗な桃色

ゆっくりとした足取りで春風を受ける

俺が振り向いた先にいたのは、泣きたくなるほどの桃色

そう言って彼が差しだしたドライフラワーがにじんで、ぼやける

また何度でも、君と

にじんだ視界の中で、桃色の瞳だけがはっきりと俺を見る

一回だなんて誰も言ってない

何回だってまた