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僕の帰る場所

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僕の帰る場所

5 - 僕の帰る場所

♥

2,110

2022年10月09日

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桃赤

僕の帰る場所

まま....おねんね?

そうだね....

ママが目を覚まさないまま

約3日。

僕は学校を休んで

仕事で忙しいパパに代わって

橙と病室にいた

受験も終わってしまったし

学校に無理に行く理由も無くなったから

橙は不思議そうに

指をしゃぶりながら

僕の膝に座って

意識不明のママを見つめていた

....橙、お菓子食べる?

たべりゅ!

元気よく手をあげる弟に

僕は苦笑して

幼児用のおせんべいを渡してやった

ポリポリと軽快な音が

静かな病室に響き渡る

生え始めたばっかりの歯で

一生懸命もぐもぐと口を動かしている

あと1時間くらいでパパ来れるって言ってたよね

ぱぱ!!

ニパニパと花が咲くように笑う橙。

僕とパパは日中、あまり家にいないから

こうやって傍に居るのが嬉しいみたいだ

おせんべいを食べ終えて

喉が渇いただろうと

僕は手を拭いてあげながら橙に提案する

橙、お兄ちゃんと一緒に飲み物買いに行こうか....

いく!!おれぇあるけりゅ!

そう自慢げに言うもんだから

僕はよちよち歩く橙と手を繋ぎながら

一緒に病室を出た。

あらぁ、お兄ちゃん?良かったわねぇ

あいっ!

自動販売機でジュースを買っていると

あの日テンパっていた僕達に代わって

橙の面倒を見ててくれた看護婦が

カルテを手にニコニコ駆け寄ってきた

それにしても大変よねぇ....不幸中の幸いだったというか....

....はぁ、

ママはいつ目を覚ますか分からない

もしかしたらこのまま....

僕は慌ててネガティブな思考を

頭から追い出す

何かあったら迷わず頼ってね

ありがとうございます....

軽く会釈すると

看護婦は行ってしまった

思わずその背中をぼーっと見ていると

橙が僕の服を軽くひっばった

おれぇも、それのみたい!

小さな指でさしているのは

僕が手に持っている

ペットボトルのサイダー。

だーめ、橙にはまだ早いよ?

やだっ!

ぷにぷにの頬っぺを膨らませながら

首を横にブンブン振る弟。

お口の中しゅわしゅわってするよ?

いいの!!

えぇ....でもオレンジジュースの方が美味しい....

やだ!!

僕はしゃがみこみ、橙と視線を合わせ

買ってやったオレンジジュースに

目を向けると

橙はオレンジジュースを

両手で握りしめながら

駄々をこね始めた

途端に周りにいる人の視線が集まる

橙が駄々をこね始めたら

なかなか収まらないので

僕は溜息をつき

サイダーを開けた。

そしてゆっくりペットボトルを

小さな口へ持ってってやる。

橙はペロリと少しだけサイダーを 舐めると

眉をひそめ、 直ぐに目をうるうるさせ始めた

も〜、だから言ったでしょ?

僕は溜息をつき

橙のオレンジジュースを開けてやった。

すると橙は目を輝かせ

美味しそうにはにかみながら飲み始めた

その姿が可愛くて

僕は優しく弟の頭を撫でた。

橙を抱きながら

数分後、ママの居る病室に

戻ろうと扉を開けた。

すると、そこには

意識を取り戻したのだろう

窓に目を向けていたママが

ゆっくりとこっちを向いた。

黄ちゃん....?橙?

ま、....

途端に僕の目の前は涙でぼやけて

暖かいものが頬を伝っていく。

僕は橙を落とさないように抱えながら

よろよろとママに抱きついた。

ままぁ....ままぁっ....

....ごめんね?心配かけて....

嗚咽をこぼす僕と橙を

ママは優しく抱きしめた。

ごめんなさいっ....僕のせいでっ....

何言ってんの....黄ちゃんのせいじゃないよ

僕が落ち着くと

看護師さんを呼んで

祝福の言葉を貰い

それから医師には

あと1ヶ月で退院できると言われた

それから僕はママに

ここ数日であった事を

いつものように楽しくお喋りした。

橙はママに頭を撫でられて嬉しそうにしている

すると突然ドアが開き

パパが息を切らしながら入ってきた

赤っ!!

桃ちゃん....!

パパはママを見た瞬間

ボロボロと涙を零して

勢いよくママに抱きついた

馬鹿だろお前マジでっ....俺がどんだけ心配したかっ....

....ごめんね?

ママは泣きそうな顔で

パパの胸に顔を埋めた

そんな二人を見て

僕は橙を抱き上げて席を立つ

橙、ちょっとここは2人だけにさせてあげようか....

あいっ!!

ママを抱きしめたまま

泣きじゃくっているパパに

僕は少し微笑みながら病室をでた。

ほら黄、お弁当

へ....

久しぶりの登校に

パパが笑顔でお弁当箱を

僕に渡してきた。

....しかもママがいつもしてる

淡いピンクのエプロンをして。

ママが入院する1ヶ月

パパが仕事を休んで家にいてくれる事になったのだ

ママの居ない家の中は

寂しさと違和感で

押しつぶされそうだった

え、パパが作ったの?

おう

驚く僕に

真っ白な歯を見せて

にぱっと笑う顔が眩しい

ホントにこの人は

なんでもそつなくこなす

家事だって育児だって。

....ありがとう。行ってきます

行ってらっしゃい

玄関のドアを閉めようとした間際に

僕はパパにボソリと呟いた

えぷろん....パパが着るとなんかダサい

ファッ!?

ねぇママ

ん〜?

学校帰り夕方の病室。

僕は頬ずえをつきながら

編み物をしているママを見つめていた。

橙のよだれかけを作っているらしい

細くて白い指が

器用にもゆるりゆるりと動いている

僕....なんでママがパパと結婚したか、分かったような気がするよ

んふふwそっかそっか

僕がぽつりと言葉を漏らすと

ママはすぐ側に置いてある

家族写真を愛おしそうに見つめた

パパが今日橙を連れて、 「ママは寂しがり屋だから」

と言って持ってきてくれたそうだ。

どうして僕がそう思ったのか

聞くつもりはないようだったが

代わりに懐かしむように言う。

学生の時にね、川で溺れた俺をパパが助けてくれたんだ

パパが!?

うん....//

僕はママの方に思わず身を乗り出した。

水、沢山飲んじゃって意識を失いかけてた時に、パパの安心する優しい腕に包まれて....

ずっと一緒に居たいなって思った//

離れたくないって思っちゃったんだ....//

ほんのり頬をピンクに染めるママは

恋する乙女のようで、

本当に2児の母親なのか

実の息子も疑う程。

その話、詳しく!!

へっ....//

ママはパパとどうやって出会ったの?

え....//

聞きたいなぁ、聞きたいなぁ

うぅ....//

僕が目をキラキラさせて

見つめれば、ママは観念したように

顔を真っ赤にしながら話し始めた

ボキャブラリーが無くなってきた.... スンッ( ˙꒳​˙ )

この作品はいかがでしたか?

2,110

コメント

39

ユーザー

意識を取り戻してくれてよかったです。もし、戻さないままだったら涙腺が崩壊するところでした。言葉の表現がわかりやすくて頭にスッと馴染んで読みやすいです。どうしたらこんなにも面白くて読みやすいお話を書けるのか頭を抱えてます。最高でした。

ユーザー

いやぁーいいわ

ユーザー

赤くんが無事に意識を取り戻せてめっちゃほっとしました…笑途中の、黄くんの『パパがエプロンするとダサい。』が面白くて涙引っ込みました笑

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