貴方が笑えない理由を

ナチが泣くなんて夢にも思わなかった

寝起きだったってのもあるだろうけど

兄さんはいつでもいた

呼べばどこからとも無く現れた

子供の頃は心細くて呼んで手を握っていた

そんなのが当たり前だった

いつも、俺は悪くないの一点張りの海

海が何かしたと泣く空

どっちも自分より数分早く産まれただけだけど兄だった

普段は本当に？自分の方が兄なのでは？

と思うことは日常茶飯事だった

でも、いざと言う時のア兄たちの背中や手は大きく感じられて

いつも不安な気持ちを忘れさせてくれた

同盟を組んでから先輩やイタ王と関わって、楽しかった

この4人がいれば他に何も要らなかった

この4人が私の全てだった

生きる意味だったのに

兄は死んだ

戦争のせいで

目の前に拡がっていた景色が音を立てて崩れ落ちて戻らなくなった

なんで2人だったのか

なんで私じゃなかったのか

なんで私からどんどん大切な人だけを奪っていってしまうのか

疑問と後悔だけが頭にあって破裂しそうだ

ガチャ、ばたん（ｺﾂｺﾂｺﾂｺﾂ）

ナチの靴の音が扉越しに響く

ナチが居なくなり音が響くことで部屋の静かさを実感する

ガチャ、ばたん（タッタッタッ）