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rara🎼
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 殺し屋パロ
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#22 黈の孤声、壊れぬ心を前にして
夜の都市は、いつものように無機質だった。
自動ドアの開閉音。
信号のタイミングに合わせて流れる電子音声。
すれ違う人々の話し声も、まるでコピーしたように同じ語調で、同じ単語を吐き出す。
その雑音の中に、ひときわ静かな影があった。
みこと――コードネーム「黈」。
情報の翻訳・改竄・言語操作のスペシャリスト。
その口から放たれる言葉は、刃物よりも鋭く、時に弾丸より確実に標的を破壊した。
だが、それは「通じる言葉」がある相手に限った話だった。
# 瑞
瑞の端末から送られてきた任務概要に、みことは眉ひとつ動かさず目を通した。
映像資料はあった。
無口な男。
人間関係は希薄。
表情は常に無表情。
まるで、言葉そのものが存在しない世界で生きているかのようだった。
# 黈
# 黈
どちらにせよ、興味を惹かれるには十分だった。
# 黈
黈は端末を閉じ、愛用の多言語ノートを開いた。
そこには、国家ごとに分類された罵倒語が、文法解説付きで丁寧に記されていた。
語学書ではなく、殺しのマニュアル。
黈にとって、言葉は凶器であり、魂の殴打だった。
ターゲットとの接触は、赫が営むカフェで行われた。
黄昏時、店内にはジャズが低く流れている。
窓から射す夕陽が木目のカウンターに斜めの影を落とし、黈はカップを口に運びながら、標的の入店を静かに待った。
# 赫
# 黈
# 赫
# 黈
# 赫
# 黈
# 黈
# 赫
赫とそんな軽口を交わしながら。
男は、時間通りに現れた。
一礼もなく、音も立てずに着席。
目の奥に何も映さないまま、黈と視線を合わせる。
黈は微笑んだ。
それは人当たりのよい笑みではない。
“これからゆっくり、あなたの心を削りますね”という、確信と支配の微笑だった。
# 黈
標的は瞬き一つせず、ただ黈の言葉を聞いていた。
反応は、ない。
# 黈
# 黈
声色も変えず、発音も完璧に。
だが、どの言葉にも、男は眉ひとつ動かさなかった。
# 黈
心の奥に、小さな疑念が灯る。
黈はテーブルの下で、指を軽く動かした。
それは、心拍数を測る癖。
標的の変化を見逃さないための習慣だ。
だが男の目は、最初から最後まで“透明”だった。
# 黈
その気づきは、言葉を武器に生きてきた自分の“全否定”に等しかった。
30分が過ぎた頃、黈は言葉を止めた。
無意識に、カップの底をじっと見つめていた。
その沈黙が――これまでのどんな暴言よりも、自分の心を削っていく。
# 黈
沈黙の向こうから、男の視線だけが刺さる。
冷たいのではない。
ただ、感情を投げ返してこないという“絶対の壁”があった。
黈は立ち上がり、レジ奥のトイレへ向かった。
鏡の前。
そこに映るのは、毛先がサーモンピンクの金髪と、どこか蒼白な顔。
その目に浮かぶのは、焦りでも怒りでもない。
ただ――空虚だった。
# 黈
声が微かに震えた。
黈はそのまま洗面台の蛇口をひねり、流れる水音に身を委ねた。
その夜、みことは自室の壁一面に貼られた言語表を破り捨てた。
発音記号、文法分類、侮辱表現の連なり。
かつて自分が“誇り”としていたあらゆる言語の断片が、静かに床を覆った。
かわりに、新しいノートを開いた。
そこに一行だけ、筆記体で書いた。
“If I can’t destroy, maybe I can understand.” 壊せないなら、理解すればいい。
そして、翌朝。
黈は再びカフェに行き、標的の男と向かい合った。
今度は、何も言わなかった。
言葉を武器にしない。
ただ、自分のコーヒーをすすり、向かいの男の息づかいに耳を澄ませる。
それだけだった。
けれど不思議なことに、その沈黙は――“苦ではなかった”。
男はやがて立ち上がり、出口に向かう。
すれ違いざま、肩を軽く叩いた。
まるで、「今夜はありがとう」とでも言うように。
黈はその場に立ち尽くし、そして、初めて知った。
“言葉がすべてじゃない”という現実を。
その晩、報告書を送った。
# 黈
そして自分の手帳に、こう書いた。
“沈黙には、言葉以上の重みがある。” “And in silence, I finally heard myself.”
第五の変化は、音を立てずに記録された。
破壊する言葉を持っていた男が、壊せなかった誰かによって、静かに救われた夜だった。
#22・了
rara🎼
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡230
rara🎼
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コメント
2件
黄くん、どうなるのかな