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本丸にもいよいよ本格的な春が訪れ、 酒好きの刀剣男士達は揃って 酒を担いで外に乗り出し、 雅楽好きの刀剣男士達は桜の下で歌舞音曲を奏で、本丸は賑わいを見せていた

審神者

よし……!

乱藤四郎

うんっ!決まってるよっ
主!

審神者

ありがとう乱ちゃん
お陰でだいぶお化粧にも
慣れてきた

乱藤四郎

ふふっ…♪

乱藤四郎はそっと審神者の耳元に 口を寄せる

乱藤四郎

(今日こそ稲葉に告白出来たらいいねっ♡)

審神者

みっ…乱ちゃんっ!

乱藤四郎

さぁ〜てとっ!ボクはそろそろ出陣だから、楽しんできてよねっ♪

審神者

もう〜!

乱藤四郎は振り向き際に審神者へ ウインクを送る 初めて稲葉江を顕現した日の こんのすけを思わせる素振りに、 審神者は大袈裟な溜め息をこぼした

審神者

そうだよね……今日くらいしか……

審神者

稲葉さんは明日からまた遠征に行っちゃうし……

こんのすけ

失礼します、主

審神者

あ、こんのすけ
どうしたの?

こんのすけ

それが……

こんのすけ

稲葉江さんが本丸のどこを探しても見つからなくて…

審神者

ええ!?また?

こんのすけ

はい……江派の刀剣男士の皆さんにもこのことを伝えたのですが…

審神者

伝えたけど?

こんのすけ

彼ら曰く、『すてぃじのれっすん』に誘ったら顔をしかめてどこかへ…と…

審神者

ああ……

審神者

確かに歌って踊る、
ってイメージはちょっとないよね…

こんのすけ

篭手切江さんは特に落胆していました…

審神者

仕方ないよ……

審神者

とにかく私も探すの手伝うから、江の皆には無理やり連れ戻るのはやめてあげてって伝えて

こんのすけ

連れ戻すのはやめろ…?
どういう事ですか?

審神者

きっと…一人でいる方が楽なんだよ、あの人は

審神者

私がなだめてみるから、江の皆にはそう伝えて

こんのすけ

ふふ、さすがはあるじ
さまですね

審神者

からかうのはやめてよ…

審神者

とにかく、よろしくね

こんのすけ

はいっ!

審神者

とはいったものの……

桜の盛りはいよいよ頂点のようで 一面に可憐な花びらが視界を覆う その美しい景色の中を、審神者は一人とぼとぼと歩く

審神者

大声で名前を呼ぶのも嫌がられそうだし…

審神者

どこ行ったんだろ……

審神者

あっ……そういえば…!

審神者の脳裏にふと、まだ枝の桜が生い茂る本丸の片隅の林を思い出す まだ深手を負った稲葉江が 素振りをしていた場所だ

審神者

あそこ……しかないよね!

審神者

よーし…!

審神者はあの場所に向かって駆け出す 背後から賑やかな 男士達の笑い声が響いた

審神者

いた……!

その後ろ姿に、審神者は足を止める 桜の花の淡い色彩の中に、漆黒の影が一人佇む 不釣り合いと言えばそれまでだが、そのたくましくも華奢な立ち姿が美しい

審神者

…………

審神者

本当に、綺麗な人……

審神者

なんだか…桜の花の中に消えちゃいそう……

審神者

なんでだろ……凄く強い刀剣男士のハズなのに…

一歩、審神者は彼に歩み寄る すると拍子に枝を踏み 乾いた音が響く

審神者

あっ……

稲葉

…………

審神者

いっ……稲葉、さん…

審神者

さっ…探しましたよ!

稲葉

来ると、思っていたぞ

審神者

え……?

その時

稲葉江の優しく微笑む姿が桜に映える

審神者

っ……

審神者

(どうしよう……本当に……綺麗)

稲葉

貴様、名は?

審神者

え……?

稲葉

名は何だと訊いている

審神者

えと……

審神者

そうか…稲葉さんには名乗ってなかった……

審神者

私の名前は───

桜並木が揺れ、花が散る

稲葉

良き、名だ……

審神者

稲葉、さん……

審神者

あの……私……わたしっ

不意に審神者の声を遮り、稲葉江は 審神者の名を静かに呼ぶ

稲葉

愛いな……

審神者

うっ……うい?

審神者

それってつまり……

審神者

(かわいいって言われた??)

稲葉

名を知れて、良かった

審神者

あ…稲葉、さん

稲葉

我からも──
一つ打ち明けたい

審神者

え…………

稲葉江はそっと審神者に歩み寄る 途端優しい香りと体温が審神者を包む

稲葉

愛している──

審神者

っ…………

稲葉

ずっと……貴殿に言いたかった──

審神者

いっ……いつ、から……?

稲葉

さあな……

稲葉

ただ、凛々しく我の頬を張り飛ばした事を憶えているか?

審神者

え……ええ、もちろん

稲葉

あの時の真剣な眼差し、女子であるにも関わらず…

稲葉

いや、女子だからこそ出来る面差しだったのだろうか……

稲葉

我は戦う為にこの身体を得たというのに、お前は我の身を案じて手を下した

審神者

稲葉……さん

稲葉

誠に、軽率な男だ…我は…

審神者

そ…そんなこと…!

審神者

私っ……私も!

審神者

稲葉さんが……好きです!

審神者

ずっと……ずっと!

審神者

初めて出会った時から……ずっと……

審神者

好き……です

稲葉

泣くな

稲葉

お前には笑っていて欲しい

稲葉

我には出来そうも無い事だがな……

審神者

そんなっ……こと……ないですっ!

審神者

稲葉さんが……傍に居てくれるだけでっ……わたしっ!幸せです……!

再び稲葉江は審神者の名を呼ぶ

審神者

稲葉さん──

二人は桜の下で、そっと唇を重ねた

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