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小気味良いベルの音が鳴る。 作業をやめ店の入り口へ向くと、そこには見馴れた顔があった。

???

やっほー。

亜珠

おはよーございます。ピョコさん、今日お早いっスね。

ぴょこ?

最近、癒しが足りなくてさ〜。今日は自分を労る予定だから、早めに来ちゃいました!

亜珠

へえ。どっか遊びに行くんスか?

ぴょこ?

んー……考え中?

亜珠

えぇ……。

ぴょこ?

だってほら。決めたところで僕、どうせ守らないし。

ぴょこ?

それに、時間に焦らされるとかマジ勘弁ですし〜。

亜珠

ははっ、言えてら。

亜珠

ご注文はいつもので?

ぴょこ?

うん。よろしくー。

「ありがとうございます」と一礼して踵を返した亜珠を、先の客が呼び止める。

ぴょこ?

そういえば——

ぴょこ?

さっきね、二階に上がっていく人を見かけたんだけど……。このビルの二階って確か、探偵事務所だったよなぁって。

亜珠

え。

ぴょこ?

なんか知ってる?

亜珠

いやぁ……特には。興味なくて。

ぴょこ?

……そっかぁ。

ぴょこ?

急にごめんね。ちょっと珍しいな〜と思って、訊いてみただけ!

亜珠

そうスか。

亜珠

んじゃ、失礼しますー。

揺れるパーカーのフードを見つめ、そのまま視線を上部へ滑らせる。 吊るされたお椀型の照明が可愛らしい。

ぴょこ?

下手なウソ。

ぴょこ?

「四二噛探偵事務所」かぁ。ふふ、どんな人がいるんだろーな〜。

どこか重圧感のある鉄製扉を前に、男は逡巡をめぐらせていた。

???

お、押していいんだよね?

???

時間とか、訊く前に切ったのは向こうだし。もし怒られても、俺悪くないし……。

???

い、一応、場所を再確認してから——

???

後方から失礼いたします。お客様でございますか?

???

ヒョォッ

奇声とも取れる悲鳴があがり、丁寧な言葉遣いの男?はすぐさま頭を下げた。

???

驚かしてしまい申し訳ございません。何やらお困りのご様子でしたので……。

???

(だ、誰? ——ていうか、見た目綺麗なのに声ひっく⁉︎)

???

え、えっと……あなたが所長さん、ですか?

???

いえ、ワタクシではございません。

???

……どうやら、所長のお客様のようでございますね。

???

所長を呼んで参りますので、客間にてお待ちください。

鍵穴に鍵を挿すと、彼は大きく扉を開く。 「どうぞお入りください」と一言添えて、訝しむ彼を中へ通した。

???

お好きな席にお座りください。それでは、少々失礼いたします。

案内を終えると、彼は奥の扉へと消えていった。 部屋の中は会話をするには十分な広さであり、綺麗に整頓されている。 上等なソファに自然と頬が緩むのを感じながら、男は雇い主の登場を待った。

???

(思ってたより普通かも……?)

ちょうど出された紅茶に口をつけた時、扉の開く音と気怠そうな男の声が聞こえる。

カルタ

ねみぃ……。

寝癖のついた頭をガシガシと掻いて、大きなあくびをする様はマヌケそのものだ。

カルタ

どちらさん?

???

え、あ、え……?

カルタ

ご自分の名前ぐらいわかるでしょ?

???

ツ、ツクモです。

カルタ

名前しかないの?

津雲 秦気

……シンキ。『津雲 秦気』です。

カルタ

その名前、どっかで……。

津雲 秦気

(感じ悪いなこの人。あんまり得意じゃないかも……ていうか誰?)

津雲 秦気

き、昨日お電話させてもらいました。

カルタ

ああ、それだ。どうりで聞き覚えが——

カルタ

ってことは、アルバイト希望の?

津雲 秦気

ええ、まあ……。

カルタ

ふむふむ、なるほど。

不審な男は、そのまま向かいの一人掛けソファに腰を下ろす。先ほどの不機嫌な顔はどこへやら、爽やかな微笑みで津雲を歓迎した。

四二噛 カルタ

ようこそ『四二噛探偵事務所』へ。僕は、探偵の『四二噛 カルタ』だ。

四二噛 カルタ

よろしく頼むよ、屈強そうな新人くん?

津雲 秦気

……。

津雲 秦気

マジか。

ハクバ

ハクバ

本日はどうも助かりました。

リューゲ・ライ

いえ。ちょうど手が空いていましたので。

ハクバ

それは幸運でした。最近はまたお忙しいのですか?

リューゲ・ライ

そうでもないですよ。困ったことがあればいつでもどうぞ。

ハクバ

はい。ありがとうございます。

ハクバ

ああでも、あまりあなたを独占しては、相棒の方に怒られてしまいそうです。

リューゲ・ライ

リューゲ・ライ

それは、彼が?

ハクバ

ええ。少し前に。

ハクバ

『最近、あんま構ってくれへんねん! アンタらのせいなんちゃう〜?』って、怒られてしまいまして。

リューゲ・ライ

リューゲ・ライ

そうですか。

リューゲ・ライ

この後予定があるので、本日はこれで。

ハクバ

この度はありがとうございました。お疲れ様です。

部屋の扉を開けた途端、ふわりと深みのあるダシの香りが鼻をくすぐる。

???

……あの。

???

ライライ〜!

???

お仕事、終わったんか? ほんまお疲れさん〜!

ライライ?

……ありがとうございます。

ライライ?

それで……あまり——

ライライ?

……。

ライライ?

僕の話はしないでくださいね。

???

えぇー! なんでなん?

???

つーか、なんの話〜?

ライライ?

イヌマルさん、仕事の準備はできていますか?

犬丸

うへぇ、華麗なスル〜。

犬丸

そっちは、まったくもって心配あらへんで〜。完璧も完璧ですわ!

ライライ?

そうですか。

犬丸

……。

犬丸

お互いがんばろな。ほら、飯にしよ。

ライライ?

はい。

???

ちょっと余計だったかな……?

先ほどのやり取りを思い返して、男は不安げに言葉を漏らす。 少し眠ろうかとパソコンの電源を落とした時、扉がコンコンと軽快に鳴いた。

???

どうぞー。

???

終わった?

???

うん。やっぱりすごいね。

???

一切の無駄がなく、技術も本当に巧みだ。どれをとっても感服するよ。

???

ふぅん。

???

コハクがそう言うなら、そうなんだろうね。

琥珀

……ふふ。

???

なに? 急に気持ち悪い。

琥珀

あはは、ごめん。なんかちょっと、嬉しくてね。

???

はぁ?

???

わけのわからないこと言ってないで仕事して。

琥珀

——イオくん。

一桜

……。

スマホに視線を落としたままだが、指の動きが止まっている。一見無視しているようで何かと耳を傾けてくれる彼に、琥珀は温かな笑みを湛えた。

琥珀

俺、イオくんでよかったなって。

一桜

……。

一桜

あっそ。

一桜

口を動かす暇があったら、探偵のところにコレ送っといて。

琥珀

はーい。

一桜

……それじゃ。

用も済み、一桜は扉の取手に手をかけ……その場で立ち止まる。

一桜

僕も——

一桜

……。

一桜

いや、なんでもない。

囁くようなか細い声は消え入り、彼は部屋を去った。

琥珀

なんか……怒らせちゃった?

——普段より力強く扉を閉めて。

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