テラーノベル
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「雅弥さん」
小さく手を上げて、優雅に微笑む。
待ち合わせたラウンジで和香那は俺の姿に気がつくと嬉しそうな目をした。
―――
和香那には、とても育ちが良さそうな
そんな柔らかな雰囲気がある
女性として見た目にも美人以外の言葉が浮かばない
スタイルは本人の努力の表れだろう
姿勢は常に正しく、身体は引き締まっている。
上品な雰囲気を纏いながら、笑うと途端に可愛い女の子になる
俺はこれほどまでに「完璧」という表現が合う、女性は見たことがなかった。
だから――
気持ち悪かった。
普通、人は
高い場所に立てば慎重になる。
地位や評価を失うことを恐れるからだ。
すべてを持っているくせに、
平然と罪を重ねる女だ。
いつか翔音が気がつき、
狂ったように泣き叫ぶ姿を見るまで続けるのだろうか?
なぜ、これほど翔音に執着するのか。
和香那の本心はわからないままだった。
―――
「和香那さん、待たせてしまったね。すまなかった」
「いいの。私が楽しみで早く着きすぎてしまったの」
「君は優しい気配り方をするね」
テーブルの上で、和香那の手を握ると
彼女は指を絡ませてきた。
――交際して半年
この日は、交際を始めたあのキスの日から
六ヶ月目の小さなお祝いを兼ねて、初めての旅行だった。
「じゃ、行こうか」
待ち合わせに指定した建物を出て、羽田空港へ。
彼女と週末を北海道で過ごすため、俺たちは飛行機に乗った。
現地ではレンタカーを手配し、名所を回った。
旨いと評判の寿司屋に連れていき、そして
出来たばかりの有名なホテルに戻る。
この日、和香那との肉体関係を結ぶ。
俺は翔音に言った
『そこまでしなくても……大事にしてるから手を出さない。それでいいじゃないか』
『それも悪くないけど、和香那をより信頼させるためには、普通の恋人みたいな段階も必要なの。ごめん。でもお願い』
計画の成功を目指して必死な翔音に懇願され
俺は渋々とこの旅行計画を立てた。
これまで、何度となく途中までの行為を装った。
そして、俺は必ず『ごめん、和香那を大切にしたい』と必死で我慢する演技をしながら
一線を越えない関係を続けた。
「和香那、君の全てが欲しい」
「雅弥さん、奪って。私から全部奪って」
ムードに流された和香那の言葉に笑いそうになる。
全く、なんて皮肉で滑稽な話だ。
(ああ。そうするつもりだ)
言葉にせず、本音で思っていた。
そして、俺は翔音を抱いているつもりで
和香那に滾った情熱をぶつけた。
何度も掠れるような、嬌声を漏らし
俺から快楽を与えられ
絶頂を数回迎えた。
和香那は、満足そうだった。
それで十分だった。
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