おれがキッチンで冷蔵庫からビールの缶を取り出しまさに開けようとしたその時、おれを呼ぶ声が聞こえた。
「涼ちゃーん、ちょっとこっち来てー」
「はーい」
未開封のままの缶を持って恋人の声がしたリビングへ向かう。
「どしたの?」
ビールを開けていい状況か確認したくて聞くと、おいで、と手招きされる。
ソファに深く座った滉斗の足の間の隙間にいつものように腰をおろすと、後ろから抱きしめられる。
「いいにおい」
お風呂から上がったばかりのおれのうなじに顔を寄せてにおいを嗅ぐ滉斗に、くすぐったくて笑ってしまう。
「何、ちゃんと洗えたかの確認?」
ふざけて聞くと、ううん、という声がして、ソファの座面に伏せてあった滉斗のスマホが差し出される。
画面にはSNSのタイムラインが表示されていて、昨日行われた新ビールの発表会の写真なんかが見えた。
「あ、これね!」
先ほど冷蔵庫から持ってきたオレンジ色の缶を顔の横に掲げてみる。
「そう、今日めっちゃこの動画の反応がいっぱいでさー」
おれの背後から伸ばした腕で画面をスクロールする彼がなんだか不機嫌そうで首を傾げる。
「うん。だめなの?」
「駄目じゃないよ、注目されるのは有り難いんだけどさ。…今日俺の誕生日じゃん?」
あ。と思いつく。自分の誕生日なのにこっちの話題が多くて寂しいの?!なにそれ可愛い〜。おれは滉斗のことしか考えてないよって伝えてあげようと少し身を捩って彼の顔を見ようとすると、思いがけない言葉が降ってきた。
「なんでSNS開くたびに可愛い恋人が他の男にアプローチうけてるとこを何回も見せられなきゃなんないの…」
ん?何のこと?滉斗の恋人って言ったらおれ…だよね?こうして誕生日に一緒に過ごしてるもんね、他には居ないよね。じゃあおれのことだとして、他の男とは…?
「なんで分かんない顔してんの、どう考えても鈴木さんでしょ」
「えっ亮平さん?!アプローチなんか受けてないけど」
「それ!なんでこの短期間で下の名前呼びしてんの?涼架くんって呼ばれてるのも、何?」
本気で嫌そうな彼の様子に狼狽える。別に全然深い意味はなくて、「りょう」ってつく名前の人が多いから涼ちゃんって呼ばれにくいだけなんだけどな。
「だいたい涼ちゃんさ…この頃キレイになりすぎ。この写真みて、女優さん霞んじゃってるよ?絶対鈴木さんも涼ちゃんのこと可愛いって気に入ってるって…」
「えぇ…ありがとう」
容姿を褒められるのは慣れてないけど、滉斗がそう言ってくれると嬉しくてつい顔がにやけてしまう。
「俺は怒ってるんですけどー。涼ちゃんもさ、なんかあの人に対応よくない?」
あー。心当たりが無いわけじゃなく、ちょっと気まずくて自分の鼻を触る。
「普通に楽しい方だからっていうのもあるけどー、……ちょっと滉斗っぽいかもと思って」
「え、どういうこと」
「なんかスタイルいいしイケメンなのに面白くって。あとけっこうサラッと恥ずかしいこと言って褒めてくれたりするじゃん。メロい…ってやつ?滉斗も将来こんな感じになるのかな?って思うとなんか親近感わいちゃって」
「………なにそれ、複雑」
「ごめん、そんな気にしてるなんて思ってなかった。 でもヤキモチ妬いてくれたってことだよね?……うれしい」
滉斗の腕の中で体を回転させ、彼の首元にぎゅぅと抱きつく。
「ヤキモチなんかいつも妬いてるけどね。あーもうほんと、涼ちゃんは俺のもんだってみんなに言いたい」
おれを抱きしめ返しながら、滉斗が大きなため息をつく。
「涼ちゃんの実家から送ってもらったお米炊いてるのはほとんど俺だし入浴剤は涼ちゃんと一緒に入ってイチャつく為だし涼ちゃんがお弁当作ってくれるのは俺のための予定だし!!!」
力強い主張にあはは、と笑ってしまう。
「お米炊いてるか聞かれた時、滉斗が炊いてくれてますって言いそうになって危なかった〜」
「もうさ、言っちゃって欲しかったわ俺は」
「だめだよ、元貴にめっちゃ怒られるでしょ〜!」
お米の話の時、隣の元貴から放たれた緊張感のある空気を思い出して身震いする。
「…はぁ。もうほんと、これ以上可愛くなんないでね。外に出したくなくなる」
俺を抱きしめて髪にキスしてくれる恋人の言葉が嬉しくてたまらない。でもせっかくゆっくりできるお誕生日の貴重な時間に、こんな話ばっかりじゃ勿体無いなぁ。
「ねぇ、わかってる?滉斗こそめちゃくちゃカッコよくて、外見だけじゃなくて中身も最高に素敵で。普通だったらおれはきっとすごく不安になってると思うんだよね。でもそうさせないように、いつも言葉で気持ちを伝えてくれる滉斗が本当に好き。おれには滉斗しか見えてないし、滉斗しかいらない」
突然たくさん喋った俺にびっくりしている彼に微笑み、耳元に顔を寄せる。少し声を潜めて、それに…と言葉を続ける。
「みんなが知らない一番可愛くてきれいなおれの姿、滉斗だけがいっぱい見てるんでしょ…?」
いつも滉斗がベッドでおれに伝えてくれる言葉を耳に流し込むと、彼が纏う空気が切り替わったのを感じた。
「…今日も見せてくれるの?」
背中に回されていた滉斗の手がするりと滑り落ち、腰を撫でる。
昨日もあんなにたくさんシたのに、おれの体はすぐに熱をもって小さく震える。
「うん、いっぱい見て…それでおれにも一番かっこいい滉斗を見せて…?」
期待を込めてうっとりと目を細めると、滉斗の喉がゴクリと鳴るのが聞こえた。
若様お誕生日記念作🎊✨
🔞まで書く時間がありませんでした🤣
発表会にて、涼架くんのことめっちゃ好きやん!な亮平氏を多数拝見し、大変に滾った心を供養いたします🙏
亮平氏ネタでりょつぱもいけるんでは、とアドバイスくださった七瀬さんに感謝💙💛
若様、29歳おめでとうございまーす🎊✨
コメント
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だからあの時、炊きますにつまったんですね、うんうん、それは仕方ないですよね🤭💙💛 もうあの記者会見は何回も見れちゃいますよね🫶 そして、💛ちゃんのビジュの良さがもぅ😇✨ いつも素敵なお話、本当にありがとうございます❣️