高校2年生の夏。私は幼なじみの玲と海に来ていた。玲の呼ぶ声が聞こえる
「穂乃果ー?アイス買ってきたよー!」
「ありがと!食べよ!」
私たちは涼しいとは言えない潮風を感じながらアイスを頬張った。
「穂乃果は好きな人とかできた?」
「え」
あなたが好きとは絶対に言えない。言ったらあなたに嫌われるかもしれないから。
「いないかな……(笑)玲は?」
「え…私?」
彼女は白い肌を赤らめる。
「いないよ?」
ニコニコしながら彼女は答えた。私は玲の少し赤い顔を見ていた。玲に好きな人がいるのだろうか。だとしたら誰なのか。絶対にあなたを奪われたくない。
「穂乃果?大丈夫?」
「あ、ごめん(笑)ぼーっとしてた」
「沢山遊んだもんね、少し疲れた?」
「うん」
明日から学校が始まる。
「ずっとこうやって過ごせたらいいのに」
思わず口に出てしまった。
「何言ってんの?明日から学校だけど毎日会えるじゃん!」
そう言って歯を見せながら笑ったショートカットの彼女はとても美しかった
「そうだね。そろそろ帰ろっか、」
そう言って私たちは自転車に2人乗りした。8月の後半だが蝉の声は鳴り止まない。玲の家まで送りまたあしたね、と微笑むとまたね、と返してくれた。
朝。青色のセーラー服に袖を通して髪型をセットする。何も変わらないことだが彼女を意識すると少しばかり気が入る。いつもの待ち合わせ場所に5分前に着いた。彼女は時間通りに来た。ニコニコと微笑みながら来る彼女のセーラー服と白い肌がよく合う。
お昼休み。私は玲の席へ向かった。「お昼ご飯たべよ!」と声をかけようと思ったが玲は誰かと話していた。心做しか私といる時よりも楽しそうな気がする。
「玲…?」
私が声をかけるとようやく気がついたみたいで
「あっ…ごめんね!食べよ!」
といつもの笑顔を見せてくれた。私は少し不安に思いながらも玲を秋祭りに誘った。
「あ〜…ごめんね?行けない!」
「そっか。大丈夫だよ」
そう言って微笑んだものの悲しかった。全ての授業が終わり玲を迎えにいくと、優芽と話している玲を見つけた。最近玲と優芽の距離が近い気がする。玲のいちばんは私がいいのに。
「玲〜?帰ろー?」
「はーい!優芽!またね!」
優芽と仲良くしている玲を見ると心が苦しくなる。嫉妬と言うものなのか。そんなことを考えながら駐輪場につき、自転車に乗りショッピングモールへ向かう。 「楽しみだね」と彼女が笑う。もう9月とは言えどとても暑い。逃げるようにショッピングモールの中に入るとひんやりしていて気持ちがいい。少し涼んだあと歩き出すと玲が
「ほのかー!見てー!このキーホールダー可愛くない?!」
「ほんとだ!お揃いにする?」
「いいね!!嬉しいなぁ…」と微笑む少女の横顔を見て私も嬉しくなった。早速お揃いの四葉のクローバーのキーホルダーを学校のカバンにつけた。私は好きな子とのお揃いのキーホルダーをもてたことがとても嬉しくてニコニコしていると
「そんなに嬉しかったの〜?可愛いなぁ」
と頭を撫でられる。私の方が身長が高いのに頑張って背伸びする玲は可愛かった。そんな楽しかった時間はあっという間に過ぎ、玲の家まで送った。その日は嬉しくなかなか寝付けなかった。
秋祭りの日。私は他の友達と秋祭りへ行った。友達と楽しんでいると聞きなれた笑い声が聞こえた。ふと振り返ると優芽と一緒にいる玲。行けないと言っていたのは優芽と行くからだったのか。とても苦しかった。
「ごめん。もう帰るね?」
一緒に来ていた友達に断りまっすぐ家へ向かった。何故か涙が溢れてきて前が見えなくなってくる。私は何も食べないまま眠りについた。
次の日の朝。いつも通り朝ごはんを食べていると玲からLINEがきた。
『ごめん、今日一緒に行けない!』
『大丈夫だよー』
そう返信すると学校へ向かった。学校で待っていたら優芽と一緒に歩いていた。私の胸がズキズキした。私だけ見ててよ。私さえいればいいでしょ?そして彼女に頼ってもらうために私は玲の机の上に花瓶を置いた。彼女は戸惑っていたが何事も無かったかのように一日が終わった。いつも通り玲はニコニコしながら沢山話した。
私に頼ってよ。なんでいじめのことを話さないの?この程度じゃいじめではない?私は狂い始めた。
それからは花瓶だけではなく靴を隠したり机に落書きをしたりした。だけど私には頼ってくれない。頼ってくれたら私は君のヒーローになれるのに。いじめが2週間ほど続いたあと、明らかに玲の元気がなくなった。苦しいでしょ?私に頼ってよ。
授業なんて頭に入らなかった。私が考えるのは玲ことだけ。そして私と帰り玲の家まで送ると
「バイバイ」
と彼女がいった。
「玲。」
「?」
振り向いた瞬間、私は玲の手に口付けをした。
「またね」
そう言って自転車を漕ぎ出した。それからもいじめを続けた。私に頼るまでは続けようと思った。
土曜日の昼。玲から電話が来た。
『今までありがとう。』
玲?!
『待って!どうしたの?』
『ねぇ!返事してよ!』
電話をかけた。
「もしもし?玲?」
「穂乃果。今までありがとね?もう私疲れちゃった」
そう言った彼女の後ろで踏切の警報音が聞こえる「玲!玲!」
謝ろうとした瞬間に電話を切られてしまった。私は全力で走った。
もう遅かった。セーラー服の玲は踏切へ飛び出し無惨な姿になっていた。
「あぁっ……ごめんっ……!私のせいだ…」
私は大きな声を上げながら泣いた。警察に慰められ家へ着いた。どのぐらい泣いていたのだろうか。私はハツカネズミのように目が腫れていた。それから私は無気力になり学校にも行かず、部屋に閉じこもっていた。レイとの記憶がフラッシュバックする。初めてあった時レイから話しかけてくれた。梅雨の季節は2人でびしょ濡れになりながら走って帰ったっけ。もう泣く気力もない。
そんな時お母さんから1冊のノートが渡された。玲の名前だ。ノートを開くと日記なのだろうか。見慣れた字が並んでいる。ゆっくり読んでいるとこんな文章を見つけた。
8月27日(晴)
今日は大好きな穂乃果と海へ遊びに行った。潮風でなびく穂乃果の髪がとても綺麗だった。私がアイスを買っていくと目を輝かせて喜んだ。私が勇気をだして好きな人は出来たかと切り出すと穂乃果はとても驚いて戸惑っている様子だった。私はここで告白しようと思ったが勇気が出ずまた伝えることが出来なかった。やっぱり引かれちゃうかな……。また優芽に相談しよう。
この日記を見た瞬間私は絶望した。両思いだったのだ。涙で字がにじむ。
9月3日(晴)
朝、私の机に花瓶が置かれていた。少し戸惑ったが誰かの悪戯なのかもしれない。穂乃果に相談しようと思ったが言い出せなかった。ごめんね。放課後ショッピングモールに行った時買った四葉のクローバーのキーホルダー。四葉のクローバーの花言葉分かってるのかな……?
私は花言葉をスマホで調べた。
「え……」
私はもう何も考えられなくなった。
私の好きが通る世界で愛し合えたら良かったのに
レイの呼ぶ声が聞こえる。
9月の昼。日差しがジリジリと肌を刺激する。私はレイの呼ぶ方へ向かった。踏切の中にレイがいる。私は踏切の中へ入った。
「レイ。いじめてたのは私なの。ごめん。」
「全然。大丈夫だよ」
「レイ?」
「何?」
「愛してるよ」
「私も。」
「穂乃果。後ろ」
「うん。知ってる」
一緒にいこう。
夏の静寂を切り裂くような悲鳴が聞こえる。
もう私には関係の無いことだ。
愛している貴方と一緒にいられるから。
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