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透海 side
「準備、早いね」
「……そう?」
準備が意外と早く終わり、玄関でヒスイと待っている。
「ねぇ、ヒスイ………」
「ん?」
「貴方、覚えてる? 転生する前のこと。」
「転生する…前?」
「えぇ。」
ボーっとしていると、ふと夢の光景が頭に浮かんだので、ヒスイに尋ねてみた。
ヒスイは下を向き、考える。
あんまり覚えていないのかしら………
私もだけど。
「あんまり……覚えてない……」
「そう。 私もよ……」
夢の話をしてみようと思った。
でも…今の彼女には荷が重すぎる。
「お待たせ。準備終わったわよ」
「終わったよ!」
向こうから、カバンを肩にかけた二人が向かって来る。
「それじゃあ、行きましょう。」
全員で、太陽に照らされた街を歩いて行く。
アイラがいる、館を目指して………
救世主は救世主らしく、みんなを救う……
救うだなんて……笑っちゃうわね……
何が、「みんなを救う」よ。
たった1人の友達すら、救えなかったくせに………私の全てを壊したくせに……
本当……馬鹿みたい。
「ねぇ、トウカ。」
「何?」
アルカはカバンをゴソゴソと漁り、綺麗な赤色の何かを取り出した。
「……これね、少し前に作ったんだけど………よかったら……もらってくれない?」
「これ……貴方が作ったの……?」
「うん……」
赤色の髪飾り。 丸い宝石みたいなものが埋め込まれていて、太陽に照らされて綺麗に光る。
「ありがとう……アルカ。」
「……似合ってるよ……凄く綺麗……」
髪飾りをつけて見せると、アルカは頬を染めて微笑む。
嬉しそうに揺れる、彼の瑠璃色の瞳は後ろの夕焼けによく映えた。
「……さ、着いたわよ。 裏口知ってるから、そこから入りましょ。」
裏口の扉を開けて中に入る。
「アイラ、どこにいると思う?」
「んー…多分、最上階の……図書室ね。」
「……じゃあ、向かいましょ。」
図書室に向かおうと、大広間を歩いていた、その時……
「おい、お前ら何しに来た?」
ベルソーは光を失った瞳で、私達を睨みつける。
「私の館を取り返しに来た。」
「貴方達を助けに来たの。」
「……そうか。 でも、お前らをアイラに会わせるわけにはいかない。」
「なら、力ずくで奪い返すまでよ。」
アスカは赤い瞳で、かつての友を睨みつける。
「ねぇ、トウカ……僕達がベルソーを引きつけておくから、先に2階に上がってて。」
ベルソーとアスカが言い争っている間に、アルカがこっそり、私につぶやく。
「でも、貴方たちは……」
「僕なら大丈夫だよ…! だから、行って。」
「トウカ、行こう……!」
ヒスイが階段から私を呼ぶ。
アルカは優しく微笑み、私の頭を撫でる。
もう、貴方とは会えないのかしら……しっかり目に焼き付けておきたかった。
この温度も、この声も…この姿も…
さよなら。私の愛しい人……
「……また、会おうね。トウカ。」
その声に応えず、ヒスイと共に走って行く。