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そうして私は、情報収集を行っていた。
しかし義元や太原雪斎様にバレぬよう動くという制約で、苦戦を強いられていた。
「くっ……さりげなく兵の近くを通ったり、城下に時々お茶を飲みに行ったりした時に盗み聞きしてたけど、なかなか情報は集まらないわ……。」
私は、ため息をついた。
「……」
兄は忍び「三ツ者」を使っている。
この有様じゃ……勝てないわね……。
……私も……いたらいいのに……。
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しばらくして、父上が戻ってきた私に声をかけた。
「戻ったか、方円……」
「はい……ただ……情報はあまり……」
私がそう答えると、父上は心配するなと言うように口を開いた。
「心配するなお主だけでなく、女中も協力してくれるそうだぞ。ほれ、そこにおるじゃろ??」
父上に促され、私は女中へと目を向けた。
女中はすぐにこちらに向き、決意を話してくれた。
「姫様……わたくしめにも、どうかお力にならせてくださいませ」
「でも私……。出来れば巻き込みたくはないわ……、これは父上と私のわがままだもの……。」
私がそう言うと、女中は静かに首を振った。
「姫様……。そのような事は、どうか言わないでください。わたくしめは教育係なのです。それに………いえ、すいません。何もありませぬ。」
「……???」
私は、思わず女中の顔を見つめた。
父上は、何も言わずにその様子を見ていた。
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そうして、その女中の手によって数日後、私たちの元へとある知らせが届くこととなった……。
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その知らせとは、方円の少し上の姉である、禰々が亡くなったという訃報 であった。
「……禰々……なんということだ……。」
父上は、届いた報せを手にしたまま、声を震わせていた。
「禰々……すまぬ…すまぬ…泣 」
私は、ただ姉上の死を呟いた。
「……泣」
「………姉上……」
父上は、悔しそうに拳を握りしめた。
「くっ、婿である諏訪頼重殿を騙し討ちにしただけに飽き足らず、わしの……娘まで死に追いやるとは……」
「すまぬ……禰々……!わしが諏訪に嫁がせたばっかりに……。」
私は、父上の言葉を聞きながら、静かに口を開いた。
「……ですが、これで諏訪勢から大きな恨みを買ったことになります……。」
そして、少し考えてから続ける。
「しかし、諏訪頼重の娘を側室として迎えようとしておられるとは……。不用心ですね、あの男は……」
父上は、ふっと鼻で笑った。
「うむ……親の仇として、いつ刺し殺されてもおかしくないと言うに……。やはり、当主の器ではないわ。ガハハ」
「その側室候補に、何とか接触することはできませんかね……。おそらく監視がついているゆえ、簡単には行かないでしょうが……。」
すると、父上は昔を思い出したように私を見た。
「お主なら……大丈夫ではないか。小さいとき、少し目を離した一瞬で消えたからのお……。」
「……そんな小さいこと……覚えてませんよ……。」
父はその声にハッとしたように返す。
「ああ…すまぬ…方円はあの日以来記憶がおぼろげであったな…。」
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そうして……方円は、接触するための方法を考えていた。
「ふむ……これは……」
私は、庭の同じ場所をくるくる回り歩きながら、考えを巡らせていた。
そこへ、望んでいない人物が現れる。
そう。太原雪斎であるーーー。
「ふむ……姫君、何やらお困りですかな?」
太原雪斎は、穏やかな笑みを浮かべながら続けた。
「奥方様の妹であられるのです。良ければ、この雪斎が力になりますよ」
そこで方円は、咄嗟に理由を答えた。
「いえ……ここのところ……記憶が曖昧でして……。父が、歩きながら考えていれば多分思い出すだろうと……」
「ははは、それは大変ですな。ですが、それはわたくしには力になれそうも無さそうです申し訳ない。」
「いえ……、お世話になっている身です。
それだけでもかなり感謝しておりますので。」
「では、失礼いたす……。」
太原雪斎は、そう言ってその場を去っていった。
(ふむ……追い出された悲しみで……忘れてしまったのですな。お労しや……笑)
(……だが、死なせはせぬ。今川が損をし儲からぬからな。ははははは!!)
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太原雪斎が去った後、父上が私に尋ねた。
「で……方法は思いついたか??」
「はい。まずは今川のこの屋敷から出る方法ですが……。女中に身代わりとなってもらいます。」
私は、女中へと目を向けながら続けた。
「……私の体調が悪いことにして、父以外は通さぬよう、徹底をお願いしますわ……。」
女中はすぐにこちらを向き、頭を下げた。
「はっ……かしこまりました」
「そして、もうひとつ。側室候補がいる場所を、何とか特定することができました。」
父上が、驚いたように聞き返す。
「なに……???」
「調べた方法は、ちょっと言えませんが……。ですが、やはり監視が着いているようです。……ですが……!」
「ですが……!!」
父上が身を乗り出す。
「幸いにも……隠し通路の近くの部屋のようです…。」
「隠し通路??? そんなものがあるのか?!」
「ええ……昔……小さい頃、見つけたような………」
その瞬間、頭に痛みが走った。
「……うっ……頭が……!」
「!! 方円、大丈夫か?!」
父上が、慌てて私の肩へ手を伸ばす。
「……ええ、すいません……。昔のことを思い出そうとすると、時々頭が痛くなるのです……」
「……」
「……しばらくすれば収まりますから……大丈夫ですわ……」
父上は、心配そうに私を見つめた。
「追放されてから、特に小さい頃の記憶が曖昧だと言っておったからの……。余程悲しかったのだな……。追放された時の記憶だけは、はっきり残っておると言うに……」
女中も、心配そうに私を見つめる。
「姫様……お労しや………。」
(……申し訳ございません……太郎様の企を知っていて……私は……。)
私は、痛む頭を押さえながら、父上へ告げた。
「頭が痛いと言って、しばらく寝るということにすれば良いでしょう……。実際……今も……ぐっ……!」
「方円……!!!」
父上が、声を荒らげた。
「おのれ晴信!!!」
「わしの娘達を、ここまで苦しめて……!!」
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そうして……私は計画通り、今川の屋敷を飛び出すことに成功した。
あとは側室候補に接触するだけであるーーー
琴寧
38
#織田信長
常陸之介寛浩
173
コメント
1件
読ませていただきました。第二話、一気に緊張感が増しましたね……。姉上・禰々の訃報には本当に衝撃を受けました。父上の「すまぬ」という言葉に、親としての無念がにじんでいて胸が締め付けられました。 太原雪斎とのやり取りも不気味で。「死なせはせぬ。今川が損をし儲からぬから」という心の声、ぞっとしました……。そんな中で女中が「太郎様の企を知っていて」と心の中で詫びる場面も、何か秘密がありそうで気になります。 隠し通路や記憶の断片など、伏線がじわじわと効いてきて、次が気になる終わり方でした。方円の行動、応援したくなります。続きを楽しみにしていますね🌷