ふと落ちつかなくなったのか、 辺りを歩いた。一階は児童書、二階はなにやら、難しい本だ。
静かな図書館なのに奥の方から小さい笑い声が聞こえる。ふと先まで、進むと、、
「桃を着ると桃太郎がピッカーンとでてきました。そして、」
身振り手振り激しい動作を交えながら明華莉が小さい子相手5、6人に読み聞かせをしていた。
すると、
「桃太郎はどうして、桃からでてきたのー?」
明華莉は急に大人しくなり、
「えっと、どうして?桃が好きだからかなぁ?いや、好きな物の中に入らないか?桃太郎だからかなぁ」
子供達も首を傾げていた。意味深な回答をしていた。すると、俺と目が合い、
「蓮ーー、助けてどうしてだと思う?」
「桃の精霊だからとか?」
子供は精霊さんかぁ、、深く頷いていた。
明華莉が小さい声で、
「精霊さんね、ロマンチックだね。」
イタズラな笑みを浮かべているように見えた。
「うるさい、適当にいえばいいんだよ」
それから明華莉は読み聞かせを続けた。騒がしい動作はあるが、声は落ち着いていて、喜怒哀楽を表現がわかりやすくみんな聞き入っていた。
読み聞かせが終わるとみんなが拍手をしていた。
「ありがとう。お姉ちゃん 」
などと言うとまばらに子供達は去っていった。
「ごめんね、蓮待たせちゃって」
「いや、平気。」
「蓮はどのお話しが好き?」
絵本のコーナーを歩きながら聞く。
「絵本なんて読まないからな、、」
小説なら冒険とミステリー一択だ。
明華莉がふととまる。
「これは?」
蜘蛛の糸と書かれた本だ。真っ赤な地獄みたいな表紙だった。
「芥川龍之介の本か、確か前世で悪い事をしていた地獄に堕ちて、生きていた時に蜘蛛を一度助けた事があるからって、神様が天から、蜘蛛の糸をたらしてくれるみたいな話だっけ?」
あまりにも子供向けではない。
「そう、その糸を登って天下に上がろうとするんだけど、下から地獄に落ちた人も登ってきて、その人達を蹴落としたら神様が糸をきっちゃうの。」
地獄に後戻りってか、、
「糸が切れそうになったから、蹴落としたんだろ、うーん、誰でもそうするような気もする。」
「そうだよね、地獄に戻すなら最初から糸なんて、たらさなきゃいいのに、神様って性格悪いね。」
そう言う明華莉にはほんの一瞬笑顔がなかった。
どうして、学校に行ってないのか?たった一言それだけが言えなかった。また笑顔を消して去ってしまう気がして。
__それからまた少し宿題をやり、気づけば17時過ぎで辺りは真っ暗だった
「帰るか、、、」
「そうだね。。」
明華莉は少し寂しそうだった。俺と離れるのが、、寂しい?被害妄想激しすぎだろ俺、、
LINEを開くと母から
『今日かえり遅くなるから、ご飯チンしてたべてね。おかずも中にあるから!』
「蓮のお母さん、帰り遅いの?」
「仕事忙しいみたい。ご飯はあるから平気」
「そっかなら良かった。うちもお母さんとお父さん仕事でいないんだ。ご飯はあるよ。一緒だね。」
俺の場合父は離婚していないが、大好きな母がいるので、幸せだ。
「早く帰るか、、」
同じマンションに帰る、、なんか、カップルみたいな、、くだらない事を考えながら帰宅した。
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