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コメント
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あ〜第21話、めっちゃ面白かった!ユーリの食レポがまず最高すぎるw「味のないゴム」とか「ロウソクの獣臭い脂」とか、表現力エグくて笑った。ティララとナナが引いてるのも分かるわ〜 でもその後、諦めずにファルトと一緒にスパイス探しに行くのがいいよね。異世界の風習とかタブーもちゃんと調べてるし、ユーリの雑学スキルが地味に活きてる感じ好き。ラストの「カレーよ!」でテンションぶち上がった!次回どうなるんだろ、楽しみすぎる🔥
羽海汐遠
11,195
ぬくみおんせん
21
#センチネルバース
かんな
976
#魔道具職人
こはる
208
「こ、これは衝撃的な味だわ……。あつあつの焼き肉だけどジューシーさが全くなくて、まるで味のないゴムを噛んでいるみたい。淡白なのに妙なエグみと血生臭さがあって、わずかな塩味だけが唯一の心のオアシス。スジ張っていて固くて、歯ごたえどころの騒ぎじゃない。噛み切れなくて、飲み込めない。すごい。つらい」
「ユ、ユーリさん?」
マイナス方向への食レポをつらつらと言い続けるユーリの背を、ナナが撫でた。
少年でさえきまりの悪い顔をしている。
「姐さん、レッドボアはやめとくか?」
「いいえ。食べるわ。せっかく解体して焼いてくれたんだもの」
ユーリは焼き肉の皿を持って、決意をみなぎらせた。
みんなが見守る中、ひとくち。
「脂がすごい。大トロかベーコンみたい。そして、ロウソクを燃やしたときのあの獣臭い臭いが、口の中でする。お肉の味がとても濃いわ。ああ、このイノシシの魔物が北の森を走り回って、土を掘っている様子がよく想像できる。土臭くて泥臭くて、砂を噛むみたいにじゃりじゃりする。これぞ風味豊かな大自然の味……ッ!」
「ねえ、つまりマズイって言ってるのよね、あれ?」
「たぶん……」
ユーリの豊かすぎる表現力に、ティララとナナがちょっと引いている。
「ね、姐さん……。無理しなくていいから!」
少年はもう泣きそうだ。
「ほら、小僧、分かっただろう。食べ慣れた奴ならまだしも、初めて魔物肉を食ったらあんなもんだ。売るなんて絶対ムリだよ」
コッタが呆れ半分、気の毒半分という顔で言った。
「ううぅ、そんなあ……」
少年はうなだれた。その目には諦めの色が浮かんでいる。
やがて少年がのろのろと七輪を片付け始めたとき。
二種類の魔物肉を食べ切ったユーリが言った。
「待って。諦めるのはまだ早いわ。魔物肉を売る方法、一緒に考えましょう」
「魔物肉を売るなんて、本当にできるのか?」
少年は複雑な表情をしている。ユーリがあれだけマズそうな様子をしていた以上、下手に希望を持てなくなっているのだろう。
「工夫次第ね。それより、あなたの名前を教えてくれる?」
「ファルト」
「そう、ファルト。私はユーリよ。よろしくね」
握手をする。少年の手はガサガサで、炭に汚れて真っ黒だった。
ユーリは次にコッタの方を向いた。
「コッタ、元冒険者として教えてほしいの。食用に向いている魔物肉は、どの種類かしら?」
「ユーリが今食った、ホーンラビットとレッドボアはマシな方だな。あとは鳥の魔物のアウィスバード。山鳥みたいなやつだ」
「なるほど」
ユーリはアウレリウスから借りた魔物図鑑を思い浮かべた。コッタが挙げた魔物は比較的数の多い種類で、冒険者たちがよく狩ってくる。
ホーンラビットは角が、レッドボアは牙と毛皮が、アウィスバードは爪と羽毛が主な素材だ。
「その三種類は、納品数も多いわよね。もしお肉を有効利用できれば、すごくいいと思う」
「まあな。肉は今まで、素材を剥ぎ取った後に捨てていた。町の外で焼くか埋めるかしてる」
「埋めるだけだと、腐って大変じゃない?」
「そうだが、焼くのも大変なんだ。薪だってタダじゃねえし、火力の高い魔法使いを雇うのはもっと高くつく」
「やっぱり有効利用が鍵ね」
ユーリは腕を組む。
「ファルトの村では、魔物肉は塩を振って焼くだけで食べていたの?」
ユーリの質問に、少年は首を振った。
「鍋にして煮るのも多かったよ。麦や野菜と一緒にごった煮にする」
「それなら焼くより食べやすそうね」
「そうでもねえぞ」
コッタが言葉を挟んだ。
「煮汁全体が魔物臭くなるからな。エグさが鍋全部に移って、食うのに苦労した覚えがある」
「ああ、うん……」
みんなが味を想像して、その場がちょっと静かになった。
「ともかく!」
ユーリが空気を切り替えるように声を上げた。
「食べにくいお肉は、調理法を工夫すれば食べやすくなるわ。屋台で売るという制約があるから、まずは焼き肉の方向で試してみましょう」
「おー!」
ファルトが拳を突き上げる。
コッタやティララなどは苦笑い、ナナはちょっと引いた様子だったが、とにもかくにも魔物肉のお料理ミッションがスタートした。
「お肉の臭み取りは、色んなハーブやスパイスを使うのがいいわ。今から市場に行ってみましょう」
ユーリのそんな言葉で、市場行きが決まった。
メンバーはユーリ、ファルト、それにナナである。ティララは午後から用事があるからと、抜けてしまった。
街路を歩いて市場に向かう。
しばらく歩けば、|公共回廊《フォルム》という広場に出た。列柱が周囲を取り巻く広場で、多くの人が行き交っている。
フォルムではしばしば市が立っている。今日も多くの露店や屋台が並んでいて、とてもにぎやかだ。
ユーリはある屋台の前で足を止めた。その店では様々な種類のハーブやスパイスが、カゴに盛られて売られている。
その種類の多さに、ファルトが驚いている。
ユーリには雑学がある。その知識は日本のものがほとんどだが、ぱっと見る限り判別のつくものが多い。
(ユピテル帝国の食べ物は、日本とあまり変わらないのよね。助かるわ)
ユーリは内心でうなずきながら、改めて店頭の品物を見た。
手前にある種のようなハーブは、クミンだ。日本でもよく使われているスパイスで、カレーや肉の腐敗防止が主な用途。
乾燥させた葉の一つは、ヘンルーダだろうか。これは日本ではあまり使われないハーブである。酒の香り付けなどに用いられるが、弱いながらも毒があるとされる。
その横では、ミントの新鮮な葉が山盛りになっている。クミンとヘンルーダは乾燥させたものだったが、ミントは近くで採れるのだろう。
ユーリは店主に挨拶をして、いろいろなハーブとスパイスを手に取っては匂いを嗅いでみる。
その中の一つ、ある種はセロリのような匂いがした。
「店主さん、これはセロリかしら?」
ユーリが聞いてみると、店主は顔をしかめた。
「セロリなんて縁起の悪いものは、うちの店に置いていませんよ。それは味と香りが似ているだけの別物。ラビッジです」
「へぇ~。……セロリって縁起が悪いの?」
こっそりとナナに聞いてみる。
「はい。セロリの葉はお葬式のときに、死者の冠を編むのに使われます。冥界の神プルートーに捧げるハーブですよ」
「そうだったんだ」
ユーリは雑学スキルのおかげで様々なことに詳しいが、ユピテル帝国の風習については門外漢である。
食べ物を扱う以上、こういうタブーに気をつけなければ、とユーリは思った。
ユーリはそのお店で、たくさんのスパイスとハーブを買った。
さらにもう二、三軒を回って、買い物バッグがいっぱいになる。
買い物をしながら情報も仕入れた。今回売られていたハーブは、この国ではごくありふれたものばかり。だいたいが大陸本土からの輸入品か、近隣で栽培されているものである。
胡椒など一部のスパイスは値が張ったが、それ以外はお手頃価格だ。
ユーリは、ユピテル帝国の意外な食文化の豊かさを見る思いだった。
「たくさん買ったな! 俺、ハーブとかスパイスがこんなにあるなんて、知らなかったよ」
バッグを持ちながらファルトが言った。
ユーリはうなずく。
「クミン、コリアンダー、生姜。胡椒があったのはびっくりしたわ。お肉の臭み取りや腐敗防止にいいスパイスを中心に買ったから、試してみましょう」
「うん!」
冒険者ギルドに戻って、倉庫前の一角を借りた。厨房を借りようと思ったが、そろそろ夕食の支度をするそうで、邪魔をしてはいけないと思ったのである。
とりあえず今日は、小さく切った肉に各種のスパイスを合わせて焼くだけだ。ファルトの持ってきた七輪があれば厨房でなくてもいいだろう。
「まずは定番、クミンとコリアンダー」
この組み合わせはユピテル帝国で広く使われている。肉の腐敗防止になると言われていて、ピリリとした辛味のある味になる。
「う、うーん……」
焼き肉をかじってユーリは唸った。塩味のみよりは、ずっと食べやすくなっている。
けれどおいしいかマズイかで言えば、まだまだはっきり『マズイ』だ。
その後もミントやバジルをまぶしたり、胡椒とラビッジを合わせたり、何種類も試した。けれどもやはりマズイの域を出ない。
ファルトはもちろん、ナナも一生懸命に味見を手伝ってくれたが、だんだん顔色が悪くなってきた。
「やっぱり、焼くのは良くないと思うの。焼くだけで美味しいお肉は、もともといいお肉じゃないかな」
ユーリは言った。
日本の焼き肉やステーキは、肉質を競うようにして売られていた。そういうことだろう。
「煮込み料理にしましょう。しっかりアクを取って煮込めば、エグみもなくなるわ」
「前にユーリさんが作ってくれた、ホワイトシチューですか?」
ナナが顔を上げた。ようやく魔物焼き肉から離れられる期待でいっぱいの目をしている。
しかしユーリは首を横に振った。
「ホワイトシチューはソースの味そのものがこってりしているから、味の濃いお肉には向かないの。今回挑戦するのは、個性の強いお肉や食材を全て包みこんで、調和させる万能のソース」
ユーリは胸の前で手を組み合わせ、いっそおごそかな口調で言った。
「私の国のソウルフード。『カレー』よ」