テラーノベル
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海の音が耳の奥に聞こえる。
ふ、と目が覚めると潮の香りが漂っていて
あぁそういえば、いつもの部屋とは違うのだと思い出す。隣には赤髪の後輩と、白髪の妹。静かな朝だった。それはそれは平和で美しい、始まりの朝。
あんたなんていなければ。
失敗作
それが母の口癖。
それが、覚えている限り一番最初に言われた言葉。
「師匠〜?」
後輩に呼ばれ、意識がはっきりする。
ーここは西丘高校の生徒会室。どうやら僕はしばらく意識がどこかにあったらしい。
「大丈夫ですか?」
赤髪の後輩…神代希咲羅が僕の瞳をのぞく。彼は生徒会の風紀委員で、僕、雨宮月彩は生徒会長。希咲羅に師匠と呼ばれている理由は、入学初日に道に迷っていた彼を助けたことから。師匠なんて大袈裟だよ、と言っているものの、彼も
「いえ、師匠は師匠なので」
と譲らない。師匠と呼ばれるのはくすぐったかったけれど、結局は僕が折れた。
「うん、大丈夫だよ。」
にこ、と得意の笑顔を作り、話を本題に移そうとする。
が
「なんか隠してますよね?
大丈夫って顔してませんよ」
彼には全てお見通しのようだ。彼はまだ、僕の親のことを知らない。明かすつもりもないし、知る必要もないのだけれど。
コメント
1件
…神ありがとうございます。まじでほんとに天才すぎる。冒頭からめっちゃいい。(語彙力消滅)