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『君は〝ハズレ〟なんかじゃない。自分の事をそう言ったら駄目だ。君は美人だし、篠宮ホールディングスに入社する頭脳がある。自慢するようだけど、うちの会社はブランド企業だ。そこで副社長秘書に抜擢された自分をもっと誇ってほしい』
エミリは呆気にとられた表情をしていたが、まだ何か言いそうな気配があったので、先手を打っておく。
「容姿や頭脳、いい会社に入っているだけが君の魅力じゃない。また自慢みたいな話だが、俺は今まで篠宮家の御曹司だからと、そこそこチヤホヤされた人生を送ってきた。その中で『篠宮家の御曹司と繋がっていれば、甘い汁を吸える』という人は大勢見てきた。……でも丸木さんは、そんなものどうでもいいという態度をとって、俺が人に合わせて演技し続けてきた事を一目で見破り、業務に差し支えが出るから自分の前では素でいてほしいと言ってくれた。……あっ、決して『この俺に認められたから凄いと思え』とか、そういうのじゃなくて……」
勘違いされそうな事を口走ったと自覚した俺は、慌ててフォローする。
「……何が言いたいかと言うと、そうやって相手の社会的地位などに惑わされず、根の部分を見破るのは、誰にでもできる事じゃない。男の見た目や社会的地位に左右されない、しっかりとした〝軸〟を持っているところも魅力的だ」
彼女はしばらく複雑そうな顔をして黙っていたが、「はぁ……」と溜め息をつく。
「別に私は副社長が思っているような〝珍しくて素晴らしい女性〟ではありませんよ? 先ほども言いましたが、私は毒親育ちで、常に親の顔色を窺って生きてきました。だからある意味副社長と同じで、相手が求めているものが雰囲気で分かってしまうんです。副社長の事を見抜いたのも、自分と同族だと感じたからで、あなたを特別扱いしている訳ではありません」
やはりエミリの言う言葉は遠慮がなく、いちいちグサッとくる。
けれど同時に、俺に対してこれだけ素で接してくれる女性とは、なかなか出会えないと感じていた。
エミリの言う『もっと素敵な女性』は、俺の事を『すごーい』と褒めて、全肯定する女性ではないだろうか。
その言葉の裏に『自分は必要以上に相手をおだてる事はできないから、そういう役割を求めるなら他を当たってほしい』という意味が含まれていそうだが、俺はそんな女性を求めていない。
もしも俺がただチヤホヤする女性を求めていたなら、とっくに結婚していただろう。
そしてそういう女性なら、あの強烈な母の事も全肯定して受け入れたと思う。
でも、俺が求めているのは、母の言いなりになる女性ではない。
きちんと自分の意志を持ち、一人の人間としての個を持つ存在だ。
今まで何人かの女性と付き合ったが母の本性を知っているだけに、女性の欲を言葉の端々、態度などから鋭敏に感じ取ってしまい、長続きしなかった。
どれだけ鉄壁の鎧で〝いい女〟を装っていても、欲を持たないなんてあり得ない。
ネットで目にした【デートでファミレスに連れて行ったらどういう態度をとるか】論争の試し行動ではないが、『もしも俺が篠宮家の御曹司でなくなったら、彼女たちは俺のもとに残っていてくれるだろうか?』と頻繁に考えた。
元カノとのデートコースは高級レストランや映画館、美術館に博物館、温泉旅行や海外旅行もしたし、判を押したようなハイスペックデートだ。
それなりに思い出は作れたが、楽しそうにはしゃいでプレゼントを受け取っては『ありがとう』と満面の笑みを浮かべる元カノを見て、『俺に金がなかったら、この娘はどんな反応をするんだろう』と想像した。
元カノは常に俺に対して〝いい女〟であろうとしてくれたから、決して嫌な面を見せなかった。
恋人なのに俺の前で愚痴一つ言わず、常にニコニコしている元カノを思い出すと、まるで人形のように思えた。
相手だっていい結婚相手を必死に捕まえようとしているのに、そんな言い方をするのは失礼だと分かっている。
でも俺は、俺に対してきちんと喜怒哀楽を示してくれる人が良かった。
そのほうが、『ちゃんと人間として接してくれている』と思えるからだ。
『機嫌を損ねたらハイスペック男性を失ってしまう』という思いありきで俺に意見を言えないなら、対等な関係とは言えない。
すぐ側に母という〝外面はいいが敵認定した者には鬼のような振る舞いをする〟女性がいるため、本心を隠していそうな女性を前にすると、心が安らぐどころではなかった。
かといって、本当に信じられる人を見分ける方法なんてない。
けれど少なくとも、自分のいい面しか見せない相手は嫌だと思っていた。
だからエミリに遠慮なくズバッと言われて、強く惹かれたのだ。
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『丸木さんにどう言われても、俺は君が好きだよ。もう決めたから』
微笑むと、彼女は『っっはぁー……』と溜め息をついて前髪を掻き上げた。
『他人の想い決める権利はないので、副社長がどう思おうが自由です。でも業務中はそういうの、やめてくださいね。私は会社に働きに行ってるのであって、彼氏を見つけに入社した訳じゃありません。ただでさえ副社長秘書に抜擢されて秘書課での風当たりが強いのに、変な噂が経って迷惑を被るのは避けたいです』
『公私はきちんと区別をつけるよ。……でも、今後もプライベートでならデートに誘ってもいい?』
諦めずにニコッと笑いかけると、エミリは心底嫌そうな顔をした。
コメント
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お疲れさまです、第921話読みました〜!😊💕 副社長がエミリさんに「君が好きだよ」って直接伝えたシーン、めっちゃ胸熱でした…!🔥✨ でもエミリさんの「業務中はやめてください」って冷めた返しがめちゃくちゃ彼女らしくて笑った😂 でもその距離感が逆に二人の関係を本物にしてる感じがする…!お互いの傷や本音を隠さずぶつけ合うところが尊すぎる😭💖 続きが気になりすぎます…!