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次の朝。佐野くんのマンションのベッドで目を覚ました時、体はまだ昨夜の余韻を引きずっていた。
首筋や肩に残るキスマークを隠すために、ハイネックのトップスを選ぶ。
佐野くんはキッチンでコーヒーを淹れながら、いつものワンコみたいな笑顔で送り出してくれた。
『先輩、今日も一緒に帰ろうや、待ってるで!』
「……遅刻しないようにね」
私は平静を装って家を出たけど、心の中はざわついていた。
会社に着くと、いつも通りデスクに座り、仕事を始める。
午前の休憩時間。
女子トイレでメイクを直していると、後ろから声がかけられた。
〚桃井先輩、最近佐野くんとよく一緒にいますよね?〛
振り返ると、同じ部署の後輩・高橋さんだった。
入社3年目の、明るくて可愛い子。
少し緊張したような笑顔で、私の隣に立つ。
「え……まあ、指導係だからね」
私は曖昧に笑ってごまかした。
でも高橋さんは、鏡越しに私をじっと見て
〚付き合ってるんですか?〛
ストレートすぎる質問に、一瞬言葉に詰まる。
「い、いや……付き合ってないよ」
〚そうなんですね〛
〚なら……佐野くんに近づかないでもらっていいですか?〛
「……え?」
〚私の佐野くんなんで〛
その言葉に、私は思わず鏡の中の高橋さんを見た。
〚だって、先輩と佐野くん……同じ香りする時あるんですよ〛
心臓がどきりと鳴った。
シャンプー? ボディソープ?
それとも……
昨夜、晶哉の家で何度も抱かれた後の、残った匂い?
〚私、佐野くんが好きで……だから譲れません〛
私は何も言えなかった。
トイレを出てデスクに戻る途中、廊下で佐野くんとすれ違った。
『おはよう、先輩』
いつもの明るい笑顔。
関西弁が柔らかく響く。
でも、私の表情を見て、彼は少し眉を寄せた。
『どうしたん?』
「……なんでもない」
私はそう答えて、席に着いた。
でも、胸の奥がざわついて仕方ない。
高橋さんの言葉。
佐野くんと先輩同じ香り。
私の佐野くんなんで。
佐野くんは誰のものなんだろう。
私はもう、彼から離れられないのに。
この秘密が、いつか暴かれる日が来るのかもしれない。
そんな予感が、静かに胸に広がっていった。