「よっと…ここが外の世界か。」
外の世界と聞いて少し身構えたがあまり変わらないんだな。強いて言えば空気が不味い。
降り立った場所は森、しかし魔法の森のように瘴気に塗れている訳でもないあたりやはり幻想郷と違うんだな。
しかし目の前に聳え立っているボロい家─魔理沙の家は所々瘴気で汚れている。
多分アイツが幻想郷の家をこっちに持ってきたんだろうな。
「うぇ?!おいおい!わざわざ中までそのまんまにすんなよ!!」
魔理沙は片付けが苦手である。故に家はボロ屋敷状態。霧雨魔法店とは名だけなのだ。
足のふみ場が無い。誰だこんな状態になるまで放置したやつは。
机にはご丁寧に畳まれた服とお金と紙等その他諸々が置いてあった。
「そういえば調査内容を話してなかったわね。
外の世界の寺小屋、通称学校に通ってもらうわ。」
そこからは学校への地図、いつ行くか等の事が書いてあった。
「P.S守矢に気をつけなさい」
……守矢?あいつらも来てるのか?
まあいいや。今日は疲れた。
ベッドに寝転がろうにも物でごちゃごちゃで体のあちこちをぶつけそうだ。
寝るより先に片付けか……
数少ない気力をふるい起こして部屋の片付けに取り掛かろうした。
だがここまで酷いとやる気すらもどこかへ飛んでいってしまう。大体今の今までこの部屋で過ごせている。今はやらなくていいと魔理沙の中の悪魔は囁いた。
……しかし外の世界っていうのは不思議だな。服の隣に置いてあった金属の長四角の物(通称すまほ)やら覚えなきゃいけない事やら……。
今は夏休暇でこの間に勉強を覚えなさいとの事だ。xやらyやら全く意味がわからんぞ。
…少し話して移動しただけなのになんだか凄い疲れたな。
覚える事、やる事は沢山あるのに現実逃避しちまう。う〜ん、でもこれは異変の調査、全力でやらないとな。
…少し布団に転がっていたらいつの間にか夜になっていた。
魔理沙は起き上がり窓の外を眺める。
「…幻想郷だったらここから万億の星が見えるんだけどなぁ…」
外の世界と幻想郷で見える景色が違うのは面白い。どうしてなんだろう、知りたい。ふつふつと探究心、好奇心と呼ぶべきか、そういう物が湧き上がってくる。
やっぱり私は根っからの魔法使いなんだな。
こんな事するなら勉強しろと天の声が囁いた気がした。
全くもってその通りだと私は思う。
仕方ない、数少ないやる気を振り絞りやってみるか。
驚いた。紫が著した参考書なるものがわかりやすい。
やっぱりいつもよくわからん事言ってるだけあるんだなぁと思いつつも本に羽ペンをかりかり滑らせる。
改めて思うが多分私は容量が良い、良くなかったら今頃生きていないだろうし、なんなら家を抜け出せていないと思う。
…今日はもう寝よう。
魔理沙は気づいていない。八雲紫の寄こした参考書はかなり高密度で難解で少なくとも高校生がするもんではないという事、それに加え今日の日付は8月31日。夏休み最終日である。
これらの意味する事は…これからは勉強を当分しなくてよいということだ。
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