テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
omr side
「え…?着いてないの?」
「うん…、どうしたの?」
「玄関、どんどんって…叩かれてる……」
頭の中が真っ白になる。
「は…?……うわ…ッ、?!」
若井が驚いた声を出す。でも、少し声を抑えた様に聞こえた。
その間もずっと玄関の扉をドンドンと叩かれている。
それも、徐々に叩く音が強くなっていってる気がする_。
「わかい…、?!なに、どうしたの…!!」
「……驚いちゃ駄目だよ。元貴の玄関の前にゾンビ…いる」
更に頭が真っ白になってゆく。
建物の中に侵入してくるなんて。
「ぇ…あ、え…、と…ぇ、?」
「…なんか倒せるものねーかな…」
「……包丁」
僕は咄嗟に思いついた。包丁。
それだと若井が自分の部屋に戻り、取りに行くとしても……
…危険だ。若井の部屋の近くにもゾンビが集まっているかもしれない。
「…部屋戻って取ってくる…っ、」
「駄目…っ、!!……僕が、する…」
こうするしかなかった。
ゾンビを包丁で刺すなんて、いや、人の生命を奪ったことすらないのに。
正直、僕に出来るか不安だった。
「…危ない、駄目、俺がする」
「……でも…ッ…!」
「ウギャ゛アッ゛…カァァ゛ッ!! ガア゛ァッ…」
―また奇声。
より近くで聞く奇声は、鼓膜が破れそうなほど大きい。
…この奇声に気付いて、他のゾンビも来るかもしれない。
「……ぁ゛っ……、わかぃ…へや、もどって……」
「…分かった」
走る音が電話越しからよく聞こえる。
奇声を発しても扉を叩くのはやめない。
…どうして僕の部屋だけ……
数分後、ちゃんと部屋に戻れたか若井に伺う。
「…わかい、ちゃんと部屋、もどれた…?」
「あぁ、なんとか…」
「…今もどんどんってたたかれてる…ぼく、どうしたらいぃの…」
拳を握り締める。
いつか壊れてしまう恐怖_他のゾンビが来てしまう恐怖__
恐怖が重なって、何をすればいいのか分からない。
「…元貴、泣いてるの? 」
はっと気付いた。
涙が頬を伝って流れていることに僕は今気付く。
僕は随分前からこの状態だったんだろう。
「ん…ぇっ、ぅ…ひ、ぅ…なんで…ぼくたちがぁっ……」
「……やっぱり俺、元貴の部屋行きたい」
「きちゃだめだょ…っ、ぞんび…ぃるから…ッ、」
「……そうだよね、行けないか…」
若井は諦めた。と僕はてっきり思い込んでいた。
数分後、電話は繋いだまま、僕は布団に潜り込む。
さっきの奇声のせいだからか、扉の叩く音が更に大きくなる。
…人数が増えたのだろう。
「……っしょ…!」
「……わかい、?なにしてるの…」
「部屋の前いる。開けて」
ピンポーン、とインターホンが部屋に鳴り響く。
不穏さがなくなった。扉を叩く音もなくなった。
僕は震えた足でなんとか玄関へ向かい、鍵を開ける。
扉を開けると、ゾンビの × 体。
――そして、若井。
「…ぁ、わか、わかぃ…」
「大丈夫?」
若井は、僕の部屋に入り、靴を脱ぐ。
手には、包丁を持っている。
包丁をキッチンに置いて、手を洗う若井。
抱き締められたくて堪らない。
「わかい…ぎゅ……〜…、!」
「…元貴…っ、」
今までにないぐらい抱き締められた。
苦しいけど、なんだか幸せなハグ。
「んぃ、ぅ…っ、こぁかった、よぉ…」
「怖かったね、もう大丈夫。俺がいるから」
「…ゾンビって、朝になったらいなくなるから、それまで気長に待とっか」
「…ぅん…っ、」
僕たちは、玄関前に、椅子等を置いて、強化した。
これで今夜は大丈夫だろう…
「……ひろと…」
「……ぇ?」
普段は苗字呼び。
だけど、今夜だけ、今夜だけ下の名前で呼んでみる。
「ひろ…と……」
若井の袖を掴み、上目遣いをしてみる。
「……うぐっ…」
若井は心臓が撃ち抜かれたように胸元ら辺を押さえる。
その姿にふふっと微笑ましくなる。
「…ずっと、一緒にいてくれるよね…?」
「…勿論、約束したじゃん」
若井は微笑んで僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。
実は僕たちは――友達同士なんだ。
こんなに密着したら__
「カ゛アッ…ガオォ゛ッ…カ゛ァァ゛ッ!!」
「……っひ…、」
奇声が多すぎる。
――外からだろう。街はまだゾンビで溢れている。
「…大丈夫」
若井は僕を抱き締めてくれた。
このあったかみが、僕の不安を掻き消してくれる。
「……明日の朝から…どうするの、」
「…逃げよう。Carnevoreusが流行ってるのは、東京だけらしい」
「え、でも…夜までにいけるの…?」
「……車で行こう。車ならすぐ行けるはず」
僕たちは明日、東京から脱出することを試みる。
がちめに書くの楽しすぎる
800〜1000いいねで更新
コメント
2件
やばぃ、 好きすぎる~、!!
うわーー、!!めちゃ好きです、! 不穏な空気しかしないけど、楽しみ!