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人間は、魔物とは違う。でも実際に魔物となった人間が存在している。
ってことはーーー。
「銀歯から、その人物を特定出来た。名前は、東出 竜也(ひがしで りゅうや)。彼は、六十年前に実際に存在していた。さらに興味深かったのは、彼は僕達と同じ闇人だったよ」
「うぇっ? 闇人??」
「うん。闇人。彼は、当時の討伐者ランキングの六十三位。まぁ中の下ってレベルかなぁ」
六条院の話を聞き、みんな緊張しているのが分かった。一人を除いて。
「……………あっ! ヤベッ」
兄ちゃんだけは、まだスマホをいじってギャンブルをしていた。さっきから舌打ちとニヤニヤ笑いを繰り返している。
「彼の妹から捜索願が出されていたよ。結局見つからなくて、死亡者扱いされていたけどね。ハハ、兄が魔物になってたって知ったらショック死するかも。………まぁ闇人は、魔物に喰われて跡形も無く消えることも珍しくないから、捜査も途中で打ち切りになったんだろうけど」
「………人間がどうして魔物になるんだ?」
「きっと彼は奴らに『魔物化』されたのよ。魔界に連れ去られて、改造?されたとかで」
「はい。僕もそう結論付けました。夕月さんが仰る通り、彼は魔物に変えられた。それを裏付けたのが、僕達の前に現れたあの関西弁を話す魔物です。彼の姿が監視カメラに残っていました。部下に調べさせたら、彼もまた闇人でしたよ。三年前から行方不明になっていました」
魔物が、闇人を誘拐して魔界に連れ去り魔物化させている。そして魔物となった闇人が、仲間であるはずの僕達を襲う。
それは、まさに地獄のような話……。あの魔物は、自分が人間だったことすら覚えていないようだった。魔界には、想像を絶する悪魔か、人間をいじくるサイコパスが存在しているのだろう。
「ここからが、今日の本題です」
「本題? いやっ、もうこっちはお腹いっぱいだよ!」
僕の言葉を無視した六条院が話を続けた。
「今回のゲート解放により、すでにいなくなった闇人が四人います。カメラ映像からも連れ去られた場面を確認出来ました」
背伸びをした姉ちゃんが、可愛い準備運動を始めた。
「おいっちに! おいっちに! うう~ん………。六条院君が、わざわざ私達をこんな場所に集めたのは、今夜この場所にゲートを開く為よね?」
姉の鋭い視線にも全く動じない六条院。
「はい。ご存知の通り半年に一度開かれるゲートは二週間の間、世界中のあらゆる場所で閉じたり開いたりを繰り返します。今日がその最終日なんです。今日を逃したら、また半年後。魔物達も何とかして今日中に強い闇人を拉致したいはず。だから、この場所にランキング上位者のお二人をお呼びしました。悪いけど天馬君達は、そのオマケ」
何を興奮しているのか。六条院は、スキップしそうな勢いで踊っていた。
「う~~……楽しみだなぁ」
やっぱり、コイツは相当ヤベェ奴だと思った。
「て、てめぇっ! 六条院!! 夕月さんを魔物に売ったのか!!!!」
六条院の能力、真っ黒な両手から凄まじい速度で逃れた一二三が、六条院の胸ぐらを掴んでキレている。
「そんなに心配なら、一二三君が守ってあげればいいでしょ? まぁランキング圏外のキミごとき弱者が、夕月さんを守るなんて無理な話だろうけど」
パンっ!!
「いい加減にして。私達は、あんたの駒じゃないんだよ。これ以上、調子に乗るなら魔物より先にあんたを殺す」
キレた望が、六条院を思い切りビンタしていた。主に駆け寄る黒服を制する六条院。
「ふ~ん……。でも栗谷さん。キミに僕は殺せない。絶対にね」
六条院の影から無数の黒手が伸び、望を襲う。望は、重い鉄製のテーブルを片手で持ち上げ六条院にぶん投げるが、すべて黒手に防がれた。
望自身の影からも腕が伸びて、望の顔をデカイ手の中におさめた。
スチャッ。
「六条院。やめろ」
ドサッドサッ。
サングラスをかけた僕は、六条院の手下三人を地面に沈め、望と同じように六条院の小さな顔を左手で握った。
「…………………………分かった」
六条院がパチンッと指を鳴らすと望の黒手は煙のように消えた。
その時、レストランの店内にサイレンが鳴り響いた。
「いよいよだよ。一応、外には金で雇った傭兵とAクラスの闇人を何人か配置した。まぁ……時間稼ぎ」
大きな窓を開け放つと、すでに魔物達が地上に降り立っていた。
六条院の雇った闇人達が応戦している。
『これ、食べないのぉ?』
先ほどまで誰もいなかったテーブルに黒髪のゴスロリ女が座っていた。余った料理を手づかみで食べている。
頭にはしっかりと角が生えていた。
ってか、どうやって店内に侵入した?
突然、窓ガラスを割って入ってきた闇人が女に銃を向け、撃つ。
「邪魔しないでよ」
魔物女は、側にあったナイフを闇人に投げた。そのナイフを辛うじて避けた闇人だったが、突然ナイフは意思を持ったように軌道を変え、避けた闇人の喉を突き刺した。
その光景を嬉しそうに見ている六条院。
コイツこそ、悪魔では?
望は僕の側に来て、少し震えていた。
「大丈夫だから」
「うん」
胸の膨らみを押し当てられ、意識が持っていかれそう。いろいろとヤバかった。