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うめぼっち

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臣桜
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鷹槻れん/鷹槻うなの

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#恋愛
水無月 京
1,300
その週の金曜日。
夕方、ようやく私の臨時コンサルタスクは終了した。
夕方なので、個室の外のフロアにはまだたくさんの社員が行き交っているのだが、ガラス越しに見られることも厭わず、私は思わず豆さんの机に突っ伏してしまった。
短い労りの言葉がずいぶんゆっくりと自分の中に沁みてゆく。
豆さんの香水か柔軟剤か、わずかなウッド調の香りが嫌味なく漂う個室の香りにだいぶ慣れて、この香りがむしろ安心感を与えてくれるという錯覚まで覚え始めている近頃だ。
これは間違いなく、数日の頻繁な出入りが原因だと断言できる。
「ごめんね、ほんと働かせすぎちゃった」
いつもより優しい声音に顔を上げれば、声に違わぬ表情を浮かべた彼がいてドキッとする。
元々バックオフィスに厳しい顔を見せることはない豆さんだけど、こんなに優しい表情もあまりみたことがなくて。
「いえ、全然そんなことは…」
といいつつ、昨日は実は家で徹夜していたし、一昨日だって…。
これぐらいで、と思われたくなかったから彼には決して言わなかったけど、実はそこそこ時間を投下してようやく作成した成果物だ。久々の作業はやっぱり勘を取り戻すには時間が足りなくて、時間という物量を注ぎ込んで完成させた面が否めない。
「弓家さん、徹夜したでしょ」
豆さんは椅子の背もたれをギシリと言わせつつ、相変わらず微笑んでいる。予期せぬ発言に、取り繕うこともできずにあっけに取られてしまう。
「は…?」
そんな話は一言も…
「資料の成果と通常業務の量見てたら昼間だけじゃ終わらないのは明らかよ」
「…よく見てますね」
それがわからないほど俺バカじゃないのよ。
ニカっと綺麗な歯を見せながら笑うこの人は。今回もしっかりと部下を見ていたらしい。
やだなあ。心臓が変に拍動を刻み始める。
「あ、久々の作業だったのでちょっと効率悪くって…」
すみません、とつい謝罪が口をついて出る。
「なんで謝んの」
一転して眉根を寄せる姿を見て、怒らせてしまったかと心配すれば。
「自分の成果だ。誇れよ」
卑下すんな、と小さく呟く。そして机の端に置いてあるタバコの箱を掴み。
「もう今日は帰りな。週末はよく休んでね」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げる私にふっと笑いながら、彼は個室の外に出ていく。
きっと喫煙所に行くのだろう。
怒涛の1週間は、魔法のような労いのお陰で、一瞬にして清涼感溢れる思い出になってしまった。
***
「お疲れー」
「お疲れ」
「やほー」
オフィスビルの地下にあるイタリアン居酒屋。
都心の地上に構えるハイソなレストランは、仕事の鬱憤を晴らすにはちょっとおしゃれすぎるので、同期と飲むなら断然地下系に限る。
お財布にも若干優しいしね。
「まどかすごい疲れてない?」
店前で落ち合い案内された席に座る。
いつも通り私の隣を陣取った同期の榎本 梓(えのもと あずさ)は私の顔を覗き込む。
「弓家が疲れてんのはいつもじゃね」
向かいの席にどっさりと座るのはこちらも同期の紫水 貴史(しすい たかし)。相変わらずデリカシーのない発言しかしない。
「あの大豆生田パートナーの秘書だから仕方ないんじゃない?」
「それかシンプルに年齢かもな」
「この場にいる全員27歳ですけど」
「あ、俺誕生日まだだから26な」
要らぬ注釈に梓がコイツはマジで…とおしぼりを投げつけようと構える。
「ちょっと2人ともやめてよ」
いいから飲もう、と続けた言葉は思いの外疲労の色が滲み出ていて、案外誰が見ても私は疲れ果てているのかもしれない。
「え、まどか?」
梓がギョッとしたようにこちらを見る。
「そんな酒キャラだったっけ?」
「え…」
「5年目で遂に本性出したか」
紫水はタブレットをサラッと操作して全員ビールなーと言いながら注文をしていく。デリカシーはないけど、小回りのきく便利な同期でもある。
「たまにはさ、酒で全部洗い流したい夜もあるわけですよ」
冷たいおしぼりで手を拭き、ソファ席に背を預けるとドッと疲れが出てくる。
「えーまって大豆生田さんやっぱり鬼なの?」
ちょっとこれは色々聞き出さないと。
梓が鼻息荒く、酒はまだか!と言い始める。
「おい榎本お前すでに酔ってんじゃね」
面倒臭ぇ客だなおい、とタブレットを戻してジャケットを脱ぐ紫水。
ダウナーで口は悪いくせに所作はやけに丁寧で、そういうところのギャップは面白い男ではある。
コメント
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みぅ🤍🥀です お疲れ様…じゃなくて、読み終わった感想を書かせてください。 豆さんの「自分の成果だ。誇れよ」って言葉が、すごくグッときました。ちゃんと徹夜まで見抜いてて、でも甘やかすだけじゃなくて、努力そのものを認めてくれる感じが。ああいう上司、憧れます。 それと同期との飲み会の空気感も好きです。疲れてるからこそ酒に逃げたくなる気持ち、すごくわかる。紫水のデリカシーのなさも含めてリアルで。 続きも読みたいです…!