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おと
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#Mrs. GREEN APPLE🍏
こんぶ@ミセス推し
689
kurara
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ネイビーブルーの落ち着いたミモレ丈のドレスに、肩から腕にかけて花柄のレースがあしらわれていて、その上には淡いベージュのストール、そして少し巻かれてお団子にゆるくまとめられた髪、目元と口を少し塗っただけのメイクなのにキラキラと輝いて見える。
「…どう?変、じゃない?」
「…、いや、全然変じゃない…。むしろ良すぎる。まじでかわいい。めっちゃいい。」
なんだか焦って、単純な感想しか言えなかったのが口惜しく思えた。
「ほんと?じゃあよかった。このレース、すっごく綺麗。ひろとが用意してくれたの?他にもスーツとか、他のワンピースとか色々あったけど。」
「うん、まあ選んだだけだけど。…めっ、ちゃ可愛い。きれい。 俺のセンス天才かも。」
「あはは、そうかも。だってめっちゃ可愛いし動きやすいし。上着だけちょっと、ピアノの時肩から落ちちゃうかも。」
「ああ~、たしかに。上手いことピンとかでとめてもらおっか。」
「うん。でもじゃあその前に一回通しとこ。俺ピアノ弾くのめっちゃ久しぶりだからさ、手動くかな。」
「大丈夫だよ、一緒に弾くし。楽譜はよめる?」
「うん、大丈夫。…しかしさあ、…よく作れたよね、一晩だけで。 まぁほとんど勢いだけど。」
昔つくったことがあるギターアレンジのメロディを、ピアノとギターの曲にアレンジした。ちょっとの時間しかなかったけど、割といいものができたと思う。まぁ元貴からしたら粗いとは思うけど。
怒られたりしねえかな。でも発表したりするわけじゃないから、ちょっと大目に見てほしい…。やっぱり二人を祝うなら、典型的な有名曲じゃなくて、俺たちの音がいい。
スズがピアノの前に座り、音を出し始める。俺もギターを手に持って、スズの方を見た。スズと目が合う。お互いにとてもあったかい、優しい気持ちが込み上げて、微笑んだ。そして、字の通り、息を合わせて、奏ではじめた。
甘い花の香、荘厳な鐘の音と統一感のある建物。いつも見ている人達も、着飾るだけで、まるで映画のワンシーンのような雰囲気に包まれる。その雰囲気にほだされて、ぴんと背筋をただした。
音楽が少し盛大になっていき、そのとき重厚感のある、いかにも重そうな扉が開かれた。
見慣れない景色の中に、見慣れたというか、もはや一緒にいすぎて、いないとそわそわしてしまうような、二人が並んで歩き出している。それがなにかこそばゆくて、少しだけ怖くなってしまうほどにうれしくてたまらなくなった。
多くの拍手の中を笑顔を浮かべて歩いていく二人を見ると、今までの記憶が、パラパラとよみがえってきて、たまらず目元を抑えた。隣でスズも涙を流している。
やがて音楽は小さくなっていき、二人は止まった。ステンドグラスからの光が、涼ちゃんの際についたレースを照らして輝いている。二人ともおそろいのスーツだけど、涼ちゃんのには、腰からドレスのように長くのびたレースがっいている。
ちなみに俺もおそろいのスーツ。三人ともおそろいで、メンバーカラーのスーツときてると、なんだかテレビの衣装のような感じがするが、でも、
これはもっと意味のあるもの。元貴の、涼ちゃんの、俺の、愛の証。
ふと、その時服をひかれた。隣でスズが、胸のあたりを抑えていた。
でる?、と小声で聞くと、コクリとうなずいた。
予定通り後ろの方に座っていたから、スズをかかえるようにしながら、急いで会場を後にする。
「大丈夫?スズ…痛い?」
「っは、ちょっとだけ…」
「そっか…あと、15分くらいで式終わると思うけど、耐えられそう?」
「ちょ、っと、きついかも、」
「分かった。じゃあここにいよう。」
ふっ、ふっ、と荒い呼吸が聞こえてくる。スズの背中をさすってやるが、胸を抑える顔は苦しそうに歪んでいて、見ているのも辛かった。
ふと、スズが口を聞いた。
「ご、めんね、ひろと。見たかったでしょ?
今からでも、見てきて、せっかくの晴れ舞台、なんだから。」
「ううん、ここにいるよ。スズとだって今しが会えないんだから。涼ちゃんには元貴がいるし元貴には涼ちゃんがいる。俺がいかなくても大丈夫。俺は、スズのそばにいたいの。」
スズはこちらを見て、ほほえんで、涙をにじませた。
「…も、そんなこと言われたら泣いちゃう…。」
「ふふ、泣いたっていいんだよ?」
「まだ早いでしょ。演奏するまでは泣かないって決めてるから。」
「さっき入場でもう泣いてたじゃん。」
「…あれはノーカンで…」
誰もいない廊下。少しだけ聞こえてくる式の音。そんな中で二人くすくすと笑い合う。それがどれだけ幸せか噛みしめれば、スズに言ったところなのに俺も涙が溢れそうになってしまった。
しばらくすると、式が終わったのか式場のほうがざわざわと騒がしくなった。
この後軽い披露宴があるはずだから、みんな移動してるんだろう。多分だけどここの通路は誰も通らないはず。だから、もう少し休ませてあげよう。
しっかし、…涼ちゃんと出会った頃は絶対こんなの想像もできなかった。元貴が涼ちゃんに向ける好意はなんとなく気づいていたけど、涼ちゃんは最初、ほんとに、得体が知れないというか、よく分からなすぎて苦手だった。
元貴のちょっと強引な同居作戦で、やっとどんな人なのかが見えてきて、やっと涼ちゃんの温かさが感じられた。
毎日毎日、こんな顔をするんだ、とか、こんな抜けてるとこがあるんだ、とか、気づいていく度に、俺の中に涼ちゃんっていう一人の人間が形成されていって、いつの間にかその笑顔が眩しくなっていっていた。
勿論、元貴と涼ちゃんの幸せを心から願っているのも事実。でも、俺も涼ちゃんとそういう関係になりたい気持ちはあって、スズに涼ちゃんを重ねてしまったことがあるのも事実。全部ひっくるめても、今日この日は限りなく愛おしい。これ以上の幸福はない。
ああ、スズと会えた時、二人はどんな顔をするだろう。涼ちゃんは言うまでもなく喜ぶだろうし、元貴も、アオキに操られていて記憶は薄いとはいえ、ずっと小さな後悔や申し訳なさを背負ってしまっている感じがするから。会って話せれば、吹っ切れるまではいかなくても、少しは元貴も救われるかもしれない。
ふと、腕の中でスズが少し身をよじり、体を起こした。その瞬間に痛みが走ったようで、頭をおさえている。
「…もうすぐ、行くかな?」
「そうだね、もうすぐ出番かもしんないけど…、まじで無理しないで。いなくなっちゃいそうで…すごく怖い。」
「大丈夫だよ、多分今日一日はいるから。むしろ今日しかないんだから、無理しなくてどうすんだってね。」
ぐっと力を入れて立ち上がろうとする体を咄嗟に支えた。
明日になれば、スズはもういない。分かっていたはずなのに、どうにもできずにやってくるだろうその別れが、ひどく恐ろしく思えた。でも同時に、目の前にいる奇跡のような人が好きで、大切で、堪らなかった。
「よし、行こう。」
「うん!…ついに本番だね。すごい、手震えてきちゃった。」
「俺も震えてきてる、一緒だね。」
「はは、一緒なら怖くないや。」
スズの身体を支えるように、二人で披露宴の会場へと足を進めていく。その間ずっと感じている体温が切なかった。
会場の重厚な扉の向こうから、司会者の朗らかな声がかすかに聞こえてくる。俺たちは、というか元貴たちとの打ち合わせでは俺は、披露宴の大トリで友人スピーチをする予定だった。
だから、もうすぐ披露宴を終えようとしているのに一向に現れない俺を、二人はきっと心配してるだろう。まさかスズが一緒にいるなんて知らずに。
ちょっと待ってて、と小さな声でスズに伝え、腰を低くしてこっそりと会場に入っていく。手ごろな会場スタッフさんを見つけて、二人にばれてしまわないように話しかけた。
「あの、…、この後予定では俺がそのままスピーチする感じだったんすけど、急遽ゲストが来たので、その人と一緒に入場して演奏する方に変更で、って司会の方にお願いできますか…?」
そのスタッフさんが頼もしく頷いてくれたのを確認して、またこそこそとスズのもとへ戻った。
「なんか合図があるはずだから、それ聞いて入場しよう。」
「おっけ。…ちょっとさ、ハグしていい?」
「もちろん。」
随分小さくなってしまったようなその体をぎゅっと包み込んで、ライブの直前のようにバシバシと背中を叩いた。いたいいたい、と笑っているその顔を見れなかった。ぎゅっと唇をかみしめて、潤む瞳をそっとぬぐう。
「ぜ、…ったい成功させよ。」
「うん。…頼んだぞ、ひろと。」
「スズもね。」
そっと名残惜しくも離れると、いいタイミングで先ほどのスタッフさんが現れた。
「扉空けるんで、そこから入っていってもらっていいですか?楽器はもう準備してあるので。」
息を吐き、ぐっと前を見据えた。扉一枚先で、何も知らない二人が待っている。ついに、お披露目だ。
今までにないほどに緊張で心臓がどくどくと動いていると同時に、この奇跡のような幸せに叫び出したいほど感謝していた。
コメント
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うわぁ……この回、涙が止まらなかったよ🥀 ドレスの描写からもう綺麗で、ひろとがスズに「めっちゃ可愛い」って連呼するの、まじで愛おしい。スズの体調が悪くなって、それでもそばにいるって選ぶひろとの優しさに胸がぎゅっとなった。「明日にはもういない」って分かってるのに、一緒に演奏しようとする強さが切なくて尊い。最後のハグ、泣いた。かめちょんさん、この温度感、天才です。