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20
#sxxn
3e1
1,093
#いるなつ
3e1
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ある日の放課後の図書室。
中間テストを目前に控えた室内は、暖房の低く唸る音と、時折聞こえるページをめくる音だけが支配していた。
「……なぁ、すち。これ解けねーんだけど。」
なつはペンを投げ出し、隣で静かに参考書を読んでいたすちに泣きついた。
「あはは、ひまちゃんはすぐ諦めるんだから。ほら、貸して?」
すちが椅子をごとごとと鳴らして、なつの方へ距離を詰める。
二人の肩が、制服のブザー越しに触れ合う。
いつも通りの距離。いつも通りの体温。
……のはずだった。
「ここはね、こうして、こう解くんだよ」
すちがなつの手元を覗き込み、なつの指の間からペンを奪ってノートにさらさらと解答を書き込んでいく。
その横顔が、驚くほど近かった。
集中しているせいか真剣な表情、揺れる長い睫毛、高くて綺麗な鼻筋。
そして、すぐそばをかすめるすちの穏やかな呼吸。
(……え)
ドクン、と。
心臓が、耳元で鳴っているのかと思うほど大きく跳ねた。
なつは咄嗟に息を止める。
今まで、肩を組んで笑いあったり、日が暮れるまで話したり、そういう仲だった。
それなのに、なぜか今この瞬間、隣にいるのがただの友達でも親友でもない一人として、強烈に意識されてしまった。
「……できた。ね、これなら分かりやすいでしょ?」
すちが満足げに顔を上げ、なつを覗き込む。
至近距離でぶつかる視線。なつは、自分の顔が林檎のように赤くなっていくのが分かった。
「……ひまちゃん? 顔赤いよ。……もしかして、熱?」
すちが心配そうに、なつの額にそっと手を伸ばす。
その白くて綺麗な指先が触れそうになった瞬間、なつは弾かれたように立ち上がった。
「……っ、わりぃ! 俺、ちょっとトイレ行ってくる!」
「え!? ちょっと、ひまちゃん!?」
困惑するすちの声を背中に、なつは逃げるように図書室を飛び出した。
暑さが残る廊下を走りながら、なつは胸を強く押さえる。
いくら落ち着こうとしても、心臓の音はちっとも静まってくれない。
(……嘘だろ。俺、あいつのこと……)
ただの友達。
一番居心地のいい親友。
そんな自分への言い訳が、もう通用しないことを悟ってしまった。
生温い風に吹かれながら、なつは初めて、9月の暑さが心細いと感じた。
それは、隣にすちがいないことが、こんなにも落ち着かないという「恋」の始まりだった。
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放課後、駅前のコンビニ。
なつは、すちが「これ、一口あげる」と差し出してきたメロンパンを前に固まっていた。
「……いいよ、お前が食えよ」
「いいから。これ、カリカリしてるし、ひまちゃん絶対好きなやつだよ。」
すちは当然のように、自分の食べかけのパンをなつの口元まで運んでくる。
なつの視界いっぱいに、すちの細い指先と、甘いパンの香りが広がる。
(……待て、これ、間接……いや、深く考えるな……)
自覚する前なら「サンキュ」と食らいついていたはずなのに、今はすちの指が自分の唇に触れそうな距離にあるだけで、なつの心臓は爆発しそうだった。
「……ほら、あーん」
「っ、自分で食えるわ!」
なつはひったくるようにパンを奪い取り、乱暴に口に放り込んだ。
すちの体温が残っているような気がして、味が全くわからない。
「あはは、ひまちゃん、 そんな急いだら喉詰まらせるよ?」
すちは笑いながら、今度はなつの頬についたパン屑を、親指でそっと拭った。
「……っ!!」
不意打ちの接触に、なつはビクッと肩を震わせる。
指先が触れた場所が、熱を帯びたようにジリジリと焼ける。
「……あ。ごめん、びっくりした?」
「……別に。……お前、距離感バグりすぎなんだよ」
なつは顔を背け、手元の冷たい飲み物を一気に流し込んだ。
すちは普通じゃない?と、相変わらず無自覚な笑顔で笑っている。
(……普通なわけねーだろ、バカ……)
なつは、自分の鼓動がすちに聞こえてしまわないか、必死に拳を握りしめていた。
(まじで……どうすりゃいいんだよ。)
自分一人がこんなに余裕をなくしていることが、情けなくて、恥ずかしくてどうしようもなかった。
コメント
1件
**第5話、めっちゃ良かった…!!** 😭💕 図書室の「距離が近いだけなのに心臓バクバク」っていうなつの気付き、まさに恋の始まりの瞬間って感じでエモすぎた…! すちの無自覚な優しさが逆にズルいよね、あーんとか頬のパン屑拭うとか、反則級の破壊力だったよ…🥺💥 なつの「まじでどうすりゃいいんだよ」にも共感しかない…!続きが気になりすぎる〜!!