テラーノベル
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9月も終盤に差し掛かり、ぼんやりと過ごすうちに、カレンダーはもう体育祭の日を指していた。
秋晴れの空の下、グラウンドは熱気に包まれていた。
なつとすちは、同じの色のハチマキを巻いている。
「ひまちゃん!次、リレーでしょ? 応援してるからね。」
出番を待つなつのもとへ、すちが応援の合間を縫ってやってきた。
白いハチマキを少し斜めに巻いたすちは、いつも以上にキラキラして見えて、なつは眩しさに目を細める。
「……お前、今走ってるやつ奴応援しなくていいの。」
「してるよ。でも、ひまちゃんが走るのが一番大事だもん。」
すちはそう言って、ひょいとなつの頭を撫でた。
「頑張れ、いっちばん応援してるから!」
その光景を見ていた周りのクラスメイトたちが、「またやってるよ」「本当にお前ら仲良いな」と茶化して笑う。
なつは「うっせー、あっち行け」とすちを追い払ったが、耳の端が少し熱いのは、きっと日差しのせいだけではなかった。
リレーが始まり、なつがバトンを受け取る。
全力で風を切って走るなつの耳に、大歓声の中でもはっきりと届いたのは、すちの「ひまちゃん、行けーーー!!」という叫び声だった。
無事走り終えた後、なつが肩で息をしていると、すちが真っ先に駆け寄ってきて、自分のスポーツタオルをなつの首にかけた。
「かっこよかった!ほんとに最高だったよ、ひまちゃん!」
興奮気味に笑うすちの顔が近すぎて、なつは反射的にタオルを顔まで引き上げる。
「……騒ぎすぎだわ、バカ。」
ふと見ると、他クラスの女子たちが「碧海くん、今の応援すごかったね!」とすちに駆け寄ろうとしているのが見えた。
それを見た瞬間、なつはタオルの端をぎゅっと握りしめ、自分でも驚くほど自然に、すちの腕を掴んだ。
「おい、すち。喉乾いた。……飲み物、奢れ。」
「えっ、あ、うん! 喜んで!」
すちは目を輝かせて、女子たちの呼びかけに軽く手を振ると、すぐになつの隣に並んだ。
自分のクラスのテントへ戻る道すがら、なつは握ったままだったすちの腕を放し、少しだけ誇らしげな、しかし苦い気持ちを噛み締めていた。
(……俺だけの応援でいいのに)
砂埃と汗の匂い、そして隣から香るいつもの柔軟剤。
体育祭の喧騒の中で、なつの独占欲は、また静かに熱を帯びていった。
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クラスごとの打ち上げは駅前の焼肉屋で行われていたが、騒がしいのが苦手ななつは、適当な理由をつけて早々に店を出た。
夜風にあたりながら駅のホームへ向かおうとすると、背後から「ひまちゃーん!」と呼ぶ声が響く。
「……やっぱり。お前も抜けてきたのかよ」
「あはは、バレた? ああいうのあんま得意じゃないからさ。」
すちは少し息を切らしながら、なつの隣にぴたりと並んだ。
街灯の下、いつもより少し乱れた髪と、首から下げたままのクラスカラーのタオルが、体育祭の余韻を感じさせる。
「ねぇ、お腹空いてない? さっき、あんまり食べてなかったでしょ。」
「……まぁな。お前もだろ。」
「じゃあ、コンビニでなんか買って、公園で二次会しよ」
二人は駅前のコンビニで、温かい食べ物とジュースを買い込み、学校近くの静かな公園へ向かった。
静まり返った遊具に腰を下ろし、少し冷えた指先を温める。
「……今日、お疲れ。」
「うん、お疲れ様。ひまちゃん、リレー本当によかったよ。俺、動画撮りたかった。」
「……やめろ、恥ずかしいわ。」
なつは照れ隠しに食べ物を口に放り込んだ。
横を見ると、すちは夜空を見上げながら、ポツリと呟いた。
「……なんか、終わっちゃったね。行事が一つずつ終わるの、寂しいな。」
「……そうか?」
「だって、こうやってひまちゃんと制服でいられる時間、2年もないでしょ。」
すちの声が、いつもより少しだけ低く、真剣な響きを帯びる。
なつは、ジュースのペットボトルを握りしめた。
自分の気持ちを伝えたら、この行事の終わりの寂しささえ、二度と共有できなくなるのかもしれない。
「……卒業しても、別に変わらねーだろ。」
なつが振り絞るように言うと、すちは一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
「……そっか。そうだよね。ひまちゃんがそう言ってくれるなら、俺、安心だ。」
すちはそう言って、あの雨の日に見せた柔らかい笑顔でなつの手に触れた。
昼間の日焼けの熱のせいなのか、それとも自分の体温のせいなのか。
重なり合う境界線が曖昧になる。
(……変わらないわけねーだろ。俺は、こんなに苦しいのに。)
なつは、すちの手を振り払うこともできず、ただ夜の闇の中に、ため息を吐き出した。
#シクフォニ
ぽこPoko
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#異世界
コメント
2件

おお、第6話読み終えたわ!体育祭、めっちゃ青春してるな〜。リレー後のなつの独占欲、「俺だけの応援でいいのに」って内心で思うとことか、胸キュン案件すぎる。すちは無邪気にキラキラしてるから、そのギャップがたまらん。夜の公園のシーンで「変わらねーだろ」って言いながら、心の中で「変わらないわけねーだろ」って苦しむなつ、最高に切ない。このじわじわ来る距離感、また更新楽しみにしてるわ🔥