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第四章
託された未来
ー運命の選択ー
「……ここは?」
煉華が目を開くと、辺り一面に静寂が広がっていた。
空も、大地も、果てしなく紅く染まっている。
風は吹かず、鳥のさえずりも聞こえない。
ただ目の前には、一羽の美しい朱雀が静かに佇んでいた。
「朱雀……」
朱雀は優しく頷く。
「よく来た、煉華」
その声には温かさと、長い年月を生きてきた者だけが持つ重みがあった。
「これから、お前に我らの記憶を見せよう」
「……記憶?」
朱雀が大きく翼を広げる。
舞い上がった紅蓮の炎が煉華を包み込んだ。
炎が晴れると、そこは戦場だった。
空は黒く染まり、大地は裂け、炎が世界を飲み込んでいる。
逃げ惑う人々。
崩れ落ちる街。
助けを求める叫び。
そのすべてを見下ろすように、黒い靄が空を覆っていた。
『邪神……。』
その名を誰かに教えられたわけではない。
それでも煉華は、その存在が何者なのか理解していた。
次の瞬間。
四神が邪神へ向かって飛び立つ。
炎が空を裂き。
蒼き龍が雷を呼び。
白き獣が大地を駆け。
玄き神が世界を支える。
しかし、邪神は倒れない。
世界は崩れ続ける。
四神は互いに視線を交わし、静かに頷いた。
『未来へ託そう。』
その言葉と共に、四神は自らの力を封印へと変えた。
光が世界を包み込む。
そして、すべてが白く染まった。
煉華は静かに目を開けた。
頬には涙が伝っている。
「こんな未来……。」
朱雀は穏やかに語る。
「これは遠い昔の出来事。
そして封印は、再び綻び始めている。」
煉華は唇を噛み締めた。
怖い。
逃げたい。
自分は普通の高校生だ。
世界なんて救えるはずがない。
そんな煉華の心を見透かしたように、朱雀は静かに微笑む。
「我は、お前に戦えとは言わぬ。運命を受け入れるか。
それとも日常へ戻るか。
選ぶのは、お前自身だ」
長い沈黙が流れた。
煉華の脳裏に、先程の光景が浮かぶ。
泣き叫ぶ子ども。
家族を失った人々。
命を懸けて戦った四神。
やがて煉華は、ゆっくりと顔を上げた。
「……誰かが泣く世界は嫌」
その瞳から迷いが消える。
「私に出来ることがあるなら
世界を救います」
朱雀は優しく目を細めた。
「ありがとう」
紅い光が煉華を包み込む。
同じ頃――。
青龍は蒼紫へ、白虎は琥珀へ、玄武は詞葉へ。
それぞれ同じ記憶を見せていた。
青龍は問う。
「選ぶのは、そなただ」
蒼紫は静かに答える。
「知ってしまった以上、見過ごせない」
白虎は笑う。
「逃げても誰も責めない」
琥珀は首を横に振った。
「守れなかったなんて、もう嫌。」
玄武は穏やかに問いかける。
「どうする」
詞葉は柔らかく微笑んだ。
「助けられる命があるなら」
三人もまた、それぞれの意思で未来を選んだ。
四神の力が共鳴する。
それぞれ別の場所にいた四人は、同時に光へ包まれた。
眩い光が消える。
煉華はゆっくりと目を開いた。
そこは、巨大な神殿だった。
高くそびえる柱。
壁に刻まれた四神の紋章。
神聖な空気が辺りを包んでいる。
「ここは……?」
その声に反応するように、別の方向からも戸惑いの声が聞こえた。
煉華が振り向く。
そこには、自分と同じように制服姿の見知らぬ三人が立っていた。
互いに視線を交わす。
誰も口を開けない。
誰も、相手を知らない。
その静寂を破るように、神殿の奥が騒がしくなった。
「四神様がお目覚めになられた!」
「巫女様方がお揃いになられたぞ!」
神官たちが慌ただしく駆け回る。
「神器の準備を!」
「急げ!」
その中心にいた神父が静かに告げた。
「羅刹。巫女様方をお迎えしなさい」
「はい。神父さま」
その声とともに、一人の青年が静かに姿を現す。
四人の前まで歩み寄ると、深く一礼した。
「ようこそ、朧月ノ四神殿(おぼろづきのししんでん)へ」
穏やかな笑みを浮かべるその姿に、四人はまだ気付いていなかった。
その優しさの裏に、どんな運命が待ち受けているのかを。
その頃。
光の届かぬ闇の奥底。
黒い靄がゆっくりと蠢く。
「四神が目覚めた……。
巫女も」
低く響く声が闇を震わせる。
「始末しろ」
命令を受け、一人の人影が静かに膝をついた。
「……御意。」
その声だけを残し、人影は闇へと溶けていく。
邪神は静かに笑った。
「ようやく始まる…」
世界の命運を懸けた戦いが――。
コメント
1件
朱雀に見せられた過去の記憶、すごく重かった……。『誰かが泣く世界は嫌』って煉華ちゃんの決意、めちゃくちゃ響いた。他の三人もそれぞれの言葉で未来を選ぶとこが良かったな。神殿でようやく四人が揃う展開はワクワクするけど、羅刹さんの優しさの裏側と邪神の「始末しろ」が不穏すぎる……! 次が気になりすぎる🔥