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淡希蘭央⛄💎 現在低浮上
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「勝利様、本日の予定です」
朝。
まだ眠気の残る空気の中、静かな声が部屋に響いた。
勝利はソファに寝転がったまま、露骨に顔をしかめる。
「朝から真面目……」
スーツ姿の男――聡は、変わらず無表情だった。
昨日と同じ。
いや、昨日以上に落ち着いてる。
なんなら、朝から隙がない。
「十時に会議。その後――」
「はい却下」
「まだ言い終わっていません」
「聞く気ない」
即答。
聡は小さく息を吐いた。
怒ってるのかすら分からない。
でも、少しだけ。
ほんの少しだけ空気が冷えた気がした。
「また抜け出そうと考えていますか」
勝利の肩がぴくっと跳ねる。
「……別に?」
「考えていますね」
「なんで分かるんだよ」
「顔に出ています」
「嘘だろ!?」
勝利は反射的に頬を触った。
その瞬間。
――ふっ。
ほんの少しだけ。
聡の口元が上がった。
「……今笑った!?」
「気のせいです」
「絶対笑った!!」
でも、すぐにいつもの無表情。
ほんとに気のせいだったんじゃないかって思うくらい自然に消える。
ずるい。
なんか悔しい。
勝利はむすっとしながら顔を逸らした。
「……とにかく、今日は出かけるから」
「却下です」
「なんで!」
「東地区が不穏です」
「毎日不穏じゃん!」
「今日は特にです」
静かな声。
なのに、妙に説得力がある。
でも。
だからこそ腹が立った。
ずっと管理されるみたいで。
ずっと守られる側みたいで。
勝利は立ち上がる。
「別に、一人でも平気だし」
「平気ではありません」
「決めつけんな」
「事実です」
「……っ」
むかつく。
ほんとに。
全部見透かしてるみたいで。
勝利はそのまま部屋を出た。
後ろから、落ち着いた声が聞こえる。
「勝利様」
振り向かない。
「南側には行かないでください」
「聞いてない」
少し沈黙。
そして。
「……無茶はしないでください」
いつもより少しだけ。
ほんの少しだけ声が柔らかかった気がした。
でも勝利は気づかないふりをした。
数時間後。
勝利は一人、裏路地を歩いていた。
(別に平気だし)
たまには一人になりたかった。
四六時中見張られるなんて息が詰まる。
なのに――
「いたぞ」
低い声。
足が止まる。
振り返ると、男が三人。
見覚えはない。
でも。
空気で分かった。
――敵。
「へぇ。後継者が一人?」
「随分不用心だな」
嫌な汗が落ちる。
逃げようと足を引いた瞬間。
後ろにも人影。
囲まれてる。
心臓が嫌な音を立てた。
(やば……)
聡の言葉が頭をよぎる。
“南側には行かないでください”
……最悪。
男の一人が近づく。
「大人しく――」
その時。
低く、静かな声が響いた。
「だから言ったでしょう」
空気が変わった。
勝利が顔を上げる。
黒いスーツ。
乱れない姿勢。
静かな目。
そこに立っていたのは――
聡だった。
「……聡」
息が詰まる。
なんで。
どうして。
ここに。
男たちが舌打ちする。
「護衛か」
聡は一歩前に出た。
勝利を背に隠すように。
そして静かに言う。
「その人から離れてください」
声は穏やか。
なのに。
妙に怖かった。
男が笑う。
「一人で何が――」
次の瞬間。
勝利は目を見開いた。
早い。
見えなかった。
気づいた時には、男が地面に倒れていた。
「なっ――!?」
残り二人が慌てて動く。
でも。
聡は焦らない。
一歩。
また一歩。
静かに避けて。
無駄なく動いて。
気づけば全員倒れていた。
数分もかからない。
息すら乱れていない。
聡はネクタイを軽く直して、勝利を見た。
「怪我は?」
その一言に、勝利は固まる。
怒られると思った。
呆れられると思った。
なのに。
最初に出た言葉は、それだった。
「……ない」
「そうですか」
ほんの少し。
肩の力が抜けた気がした。
そして聡は静かに言う。
「無事でよかった」
その声だけ。
少しだけ優しかった。
勝利の胸が、変な音を立てる。
「……ごめん」
小さな声。
聡は少し目を細めた。
そして。
ほんの少しだけ。
口元が笑った。
「次からは、きちんと隣にいてください」
勝利は、少しだけ顔が熱くなった。
なんか。
なんか悔しい。
……でも。
少しだけ。
この人が隣なら、悪くないかもしれない。
コメント
1件
ああ、もう、最高でした……! 第2話で聡が「無茶はしないでください」って言ったのが、まさかこんな形で回収されるとは。勝利が「一人で平気」って強がって出て行ったのに、結局ピンチになって、そこに現れる聡。しかもあの戦闘シーン、全然乱れない感じが逆に怖くてかっこよかったです。「怪我は?」って最初に聞くところ、もう完全にプロの護衛というか、それ以上に勝利のこと大事に思ってるのが伝わってきて胸がぎゅっとなりました。最後の「隣にいてください」も、命令形じゃなくてお願いみたいな言い方なのがまたずるい……! 次が気になりすぎます。