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それから少し経って……。
「あっ、そうだ。なあ、ミサキ。今、俺たちってどの辺《あた》りにいるんだ?」
ナオトは黒髪ショートボブと水色の瞳が特徴的な美少女……いや、美幼女『ミサキ』にそう訊《たず》ねた。
「ん? あー、そうだねー。えーっと、だいたい『ハイノウ国』付近にいるけど、どうかしたの?」
「あー、いや、俺のいた世界でいうところの『愛媛県』が俺の生まれ故郷だから、その……」
「久しぶりに里帰りしたいってこと?」
「あー、まあ、ここは日本と酷似《こくじ》してるから里帰りじゃないんだけど、その……なんて言ったらいいかな」
「うーん、つまりご主人が言いたいのは、こういうことかな? この世界での故郷《ふるさと》がどうなっているのか見ておきたい……」
「うん、まあ、そういうことだ。ところで、この世界では『愛媛県』ってどんな風に呼ばれてるんだ?」
「ん? あー、えーっと、たしか『ラブプリンセス国』だったと思うよ」
「あー、そうきたか……。なるほど、なるほど。そうか、そうか。つまり、そのまんまだな」
「うん、そのまんまだね」
「……さてと、それじゃあ、そういうわけだから、少しの間、待っててくれないか? すぐに戻るから」
「うん、分かった。僕の外装をしばらく停止させればいいんだね?」
ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)がそう言うと、彼はコクリと頷《うなず》いた。
「ああ、そうしてもらえると助かる。それじゃあ、行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
彼が玄関から外に出ると、そこにはマナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)とシオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)が立っていた。
彼はすぐに扉を閉めると、ミサキの方を向いた。
「なあ、ミサキ。今、扉の向こうにマナミとシオリが待ち構えてたんだけど、いったいどういうことだ?」
ミサキはニコニコしながら、こう言った。
「いやあ、ごめんね、ご主人。ご主人がどこか行きそうになったら、全力で止めるようにコユリちゃんから言われてるんだよ」
「何? 本当にコユリがそう言ったのか?」
「はい、ミサキさんの言う通りです。私がみなさんにそう言いました」
ミノリ(吸血鬼)が寝ている部屋から出てきたのは銀髪ロングと金色の瞳と背中から生えている二枚の天使の翼が特徴的な美少女……いや、美幼女『コユリ』だった。
「おいおい、それはいったいどういうことだ? 俺が何かに巻き込まれるとでも思っているのか?」
「はい、その通りです。マスターがミサキさんの不可視の結界から出て、何かに巻き込まれなかった時の方が少ないのは、マスター自身がよく知っているはずです」
「いや、それは……まあ、そうだけどさ」
「言っておきますが、これは私の指示ではありません。私は彼女から言われた通りのことをやっているだけです」
「おい、それってまさか……ミノリのことか?」
「はい、そうです。さすがは私の……いいえ、私たちのマスターですね」
「いや、今のは話の流れ的に分かるだろ……」
「そうでしょうか? 彼女のことをよく知っているからこそ、すぐに答えを出せたのではないのですか?」
「それは……よく分からないが、とにかく俺はすーっと行って、ばーっと帰ってくるから、行かせてくれよ。な? 頼むよ、コユリ」
「……私はどうしても彼女のことを好きにはなれませんが、マスターが外に出た結果、何かに巻き込まれるぐらいなら、そうなる前にここから一歩も出さなければいいという考えには賛成です」
「そうか……。なら、仕方ないな……。みんなには悪いが、強行突破させてもらうぞ!!」
ナオトはそう言うと、玄関から外に出た。
彼は外で待ち構えていたマナミとシオリの頭をポンポンと撫でると、こう叫んだ。
「出てこい! チエミー!」
「はい! はーい!」
『……!?』
二人はナオトの髪から飛び出したチエミ(体長十五センチほどの妖精)に驚いた。
彼はその隙《すき》に大空へと飛び立った。
「あっ! ナオトさん! 私を置いていくなんて許しませんよー!」
チエミはそう言うと、彼の後を追い始めた。
「あ、あはははは、やっぱりナオトさんには敵《かな》わないですー」
「まあ、ナオ兄は私たちより、ずっと強いから当然だねー」
マナミとシオリがニコニコしていると、コユリが二人の頭をチョップした。
「あいたっ!」
「ふにゃ……」
「あなたたちなら、もう少しできると思いましたが、やはりマスターを止めることはできませんでしたか」
「ご、ごめんね、コユリちゃん。その……いきなりチエミちゃんが出てきて、それで……」
「マナミさん、言い訳は結構です。とにかく今は一刻も早くマスターを捕《つか》まえなければなりません」
「でも、ナオ兄は私たちより強いんだよ? いったいどうやって捕まえるの?」
「いい質問ですね、シオリさん。まあ、見ていてください。これから面白いことが始まりますから」
「ふーん、そうなんだー。じゃあ、ここに居《い》てもいい?」
「はい、それは別に構いませんよ。ただし、マナミさんはこれから反省会です」
「え? どうして私だけ……」
「今、何か言いましたか?」
コユリのにらみつける。
マナミの防御力が下がった。
「ひっ! わ、分かったから、そんな目で私を見ないでよー」
この後、マナミはコユリに膝枕という名の罰《ばつ》を与えられたそうだ……。
つまり、コユリはマナミを本物の猫《ねこ》のように扱ったのである。