コメント
14件
もう最高です👍
この話めっちゃ好き!
ほんとに好き
だから—————。
「おにーさんにここに連れてこられた時、てっきりそーゆう目的なのかと思ったよ。」
「でもなんもされないから、拍子抜けしちゃった。」
「……なんで………、」
「…なんで笑ってられるの……。」
いつのまにか、体が動いていた。
俺は力一杯、彼を抱きしめる。
こちらを振り向いた湊くんは、きっと驚いた顔をしていたんだろうな。
昨日の、少し怯えた表情も。
傷も、痩せた身体も。
全てが鮮明に思い出される。
あれは、この子が背負うべき豪じゃない。
自分の頰を、ポロポロと涙が伝うのがわかった。
「ちょ、なんでおにーさんが泣いてるの。」
少し戸惑いながら、笑いながら。そう言った。
「ごめん、ごめんね……、こんなこと話させて……。」
「……んは、おにーさんのせいじゃないでしょ?」
それでも、ただ抱きしめることしかできない、自分の不甲斐なさを感じずにはいられなかった。
湊くんはしばらくなにも話さなかった。抱き返しもしてこなかった。
突然、ふと
「……それに、」
「同情欲しさで話したわけじゃないから。」
「おにーさんだって結局俺のこと捨てちゃうなら、軽々しくこんなことしないで。」
冷たい言葉だった。
何もかも、全部諦めてしまったかのような。
ぐ、と力なく手で押し返される。
その手は、少し震えていた。
それがどうしようもなく、寂しく思えて。
「捨てない。」
「俺は捨てないよ。」
「君の17年間分、全部愛すから。」
「いっしょにいよう。」
嘘偽りのない、本心。
哀れだとか、可哀想だとかいう感情ではなく、ただ、俺の中の、まっすぐな言葉だった。
「……っ、下手なプロポーズだね…。」
「い、いや、そんなつもりじゃないんだけどっ……!!!」
言われた途端に、少し恥ずかしくなってきた。
たしかにちょっと臭かったかな……。
「……ほんとに、」
「こんな俺でも、ほんとに愛してくれるの……?」
不安そうに震えた声で、恐る恐る聞かれる。
軽々しく言えた言葉ではないと思うが……、
「俺で良ければ、いくらでも。」
その瞬間、俺の肩に、湊くんの涙がはたはたと落ちたのがわかった。
声も出さずに、ただ静かに。
3月の始め、うっすらと春の匂いを感じる、朝のことだった。
to be continue…