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単独任務2日目(夜)
レイナは布団に潜り込むと、ライネが眠るのを待った。しかし、いつまでたっても寝息が聞こえない。そのまま恐く30分は待っただろう。ライネがベットから起き上がり、音もなく部屋から出ていった。
恐くこちらが寝ていると思っているから静かに出ていったのだろうが、レイナはそれに違和感を覚えた。普通忍び足だったとしても、床が軋む音や、扉が閉まる音が少しは聞こえるはずだ。それなのに全くそのような音はえず、気配でしかその行動が分からないほどだ。
私も出てみるか…?
今はちょうどライネが居ない。もし出くわしてしまってもトイレに行こうとしてたとかいくらでもいい訳ばできるだろう。
レイナはベットから起き上がると、部屋の外へと出た。
足音が余りしないように、靴を脱いで魔法で作り出した異空間にしまう。多分来ないだろうが、いざと言う時のためにパジャマの中にも小さい武器を隠しておく。
レイナはその状態で、静かに素早く屋敷内を探索した。
屋敷の中は昼間とはガラリと雰囲気が変わり、かなり不気味な雰囲気になっていた。たまに聞こえる外の風の音と、フクロウの鳴き声がさらに雰囲気を怖くしている。
ハスネには屋敷に来た時から内密にマスターキーのスペアキーを貰っていたので、鍵のない部屋にも入れる。その為、昼間には入れない部屋にも遠慮なく入れるようになっていた。
探索を始めてから3個目の部屋から出たところで、近くでヒトの気配がする。
「ーーー、だーーー」
「ーー?ーーー」
小声で話しているのか、声がよく聞こえないが、2人いるのがわかった。
「!ーーぞ!」
あちらもこちらの気配に気づいたのだろう、慌てて逃げ出すシルエットが見える。
このまま逃げられても困るので、レイナは闇魔法の『威圧』を使い、逃げ出す2つの影に言う。
「止まれ」
余り大声は出していない。だが、レイナの口から出てきた言葉には、謎の圧が含まれていた。
「!!」
2人はビクリと動きを止めると、こちらに顔を向けた。
「…ライネ達、何やってるの?」
それは、ライネとカイクだった。まさか知っているヒトだとは思わなかった為、レイナは少し驚きながら言う。
「えっと…俺達は…」
「ウィンも、こんな時間に何してるの?」
カイクはしどろもどろとしているが、ライネはまるで自分達は何もおかしなことはしていないとばかりに、堂々としている。
「私は…」
レイナも答えに迷いながらも何かないかと2人を観察すると、あることに気がついた。
さっきから堂々とした態度をとっているライネの額には汗が滲んでいて、その目にも不安が宿っている。逆にしどろもどろになっているカイクは全くそんな事はなくて、なんならライネよりも冷静にこちらを伺い、足は後ろに下げていつでも逃げられるように準備しているように見えた。
何かあるな?
少し考えると、1つの結論に至った。レイナはライネの質問には答えず、その結論を言う。
「もしかして、2人は私と同じ感じ?」
「お、同じって?」
「誰かに依頼されるかなんかされて、この屋敷について調べてる?」
「!!」
「…」
レイナが出した結論とは、この2人も自分と同じようにこの屋敷に潜入しながら、市長について調べているのではないかということだった。
正直訊いた時はかなりの賭けに出たつもりだが、2人の反応を見るに予想は的中していたらしい。
「誰に依頼されたの?私はハスネさんだけど…それとも、個人的に?」
「俺達は、キヨさんに依頼された」
カイクがしどろもどろしているフリをやめて、ゆっくりと言う。
「なんて依頼された?私は主人の様子がおかしいから調べて欲しいだけど」
「私達も同じ。旦那様が変わった理由を調べて欲しいって」
同じことをしていたと知って安心したのだろう。ライネは少し落ち着いたように言った。
「目的は同じか。ねぇ、協力しない?」
レイナは2人に協力を持ちかける。同じ目的なら、一緒に動いた方が効率がいいと思ったのだ。
「いいよ」
「ちょっ、もうちょっと考えない?」
即答のカイクに、ライネが不安そうに言う。
「この依頼が終わっても、そっちの報酬とかには関わらないし、得た情報は全部そっちに明かす。その変わり、そっちも私に知っている情報を教えて欲しい」
「本当に知った情報は全部教えてくれる?」
ライネの質問に、レイナはしっかりと頷く。
「…それなら、いいよ」
「じゃあ、交渉成立だね」
レイナがそう言うと、カイクはしっかりと、ライネはまだ不安が残りつつも頷いた。
「それじゃ、ずっと同じ場所も危ないし、ちょっと別のとこ行こっか」
カイクはそう言うと、スタスタと歩き出す。
「どこ行くの?」
「絶対にバレない安全な場所」
どこへ行くのかを問うレイナに、ライネはそう答えると、カイクの後をついて行った。
そのまま廊下を歩いていると、2回へと登る階段のところに着く。階段の下は小さな物置となっており、低身長のレイナが背伸びせずにギリギリ通れるくらいの小さな扉があって、その隣にはどこかの風景を描いた絵画がある。
カイクはその絵画を取り外した。
「…これは?」
絵画の下には、謎のダイアルがあった。それをカイクが回すと、どこかでカタリと音が聞こえる。静かな夜でも意識して聞かないと聞こえないほどの音だったので、もし誰かがこのダイアルに気づいて回しても、何が起きたかは分からないだろう。
カイクは絵画を戻すと、廊下に敷いてある赤色のカーペットをめくった。
「!」
カーペットの下には、収納のような扉があった。先程の小さな音は、この扉の鍵が開いた音なのだろう。
カイクがその扉を開けると、中には梯子があった。
「隠し部屋…?」
「うん。降りるよ」
そう言うとライネがその梯子をスルスルと降りていく。
「俺が閉めるから、レイナ先行ってて」
「分かった」
ライネに続いてレイナも梯子を降りると、そこには小さい空間が広がっていた。
天井はカイクがギリギリ立てるくらいの高さで、奥行はあまり無い。部屋の隅には学習机のような机と椅子が置いてあり、その横に置いてある本棚には何冊か本が置いてあった。 床には薄くてボロボロのカーペットが敷いてあり、そこにライネが座っている。
「こんな場所があったんだ」
「うん。外に声は聞こえないし、パスワード知らなきゃ開かないから作戦会議とかにはぴったりなの」
「それじゃ、お互いの情報を交換しよっか」
扉を閉めたカイクが梯子を降りて、カーペットの上に座る。レイナもカイクが座ってから自分のカーペットの上に座った。
「じゃあ、まずは多分知っている情報も少ないであろう私からね」
そう言ってレイナは、自分の知っていることを話し始める。
「ここに来る前にこの屋敷のことについては調べてきたんだけど、ライネに教えて貰ったように誰かに意図的に消されたのか、あまり有益な情報は手に入んなかった。分かったのは、数年前に使用人行方不明事件があって、それ以来市長の様子がおかしいこと」
これは普通に知っているのか、2人は目配せも表情を帰ることもせずに聞く。
「あと、あの庭の掃除用具とかが入っている小屋の薪をどかすと、隠し扉みたいなのがある」
2人が目配せをした。恐く知らない情報なのだろう。それでも表情は変わらないが、レイナの次の一言に、ライネは知っていたのか冷戦だが、カイクは知らなかったのか目を見開いた。
「あと、昔に亡くなったって言ってる奥方は、多分死んでいない」
「えっ?」
「これは今日キヨさんと花を買いに行った時に思ったんだけど、昔死んだ息子以外にまだ公表していない娘がいて、多分奥方はその娘と一緒に失踪とかしたのかな…?」
「なんでそう思ったんだ?」
「まず、キヨさんが奥方の事を、亡くなったじゃなくて居なくなったって言っていたのと、奥方が最後にルガーラに渡した花の花言葉が、『恋の思い出』と『恋の終わり』だったから」
「奥さんが死んでない可能性がある事は知ってたけど、娘さんがいたっていうのは知らなかったな。それに、花言葉系は私達全く知らないから、ウィンがいないと分からなかった」
「他にはある?」
「うん。もう一つあって、今のルガーラは偽物で、本物を殺したんだと思う。多分、本物の周りにいた側近も多分殺られている」
「え?」
「は?」
「今日掃除中盗み聞きしたら、ルガーラの一人称がわしから俺になっていたし、それ以外は全部本人が独り言してた」
「そんな事独り言で言うって、馬鹿じゃん」
カイクが呆れたようにしている。
「私が分かっているのはこれで全部。2人は?」
レイナが知っている情報を全ていい終わって言うと、ライネがライネ達が知っている事を話し始めた。
「私らもウィンの少し前に来たくらいだけど、この屋敷にはこんな感じの隠し部屋が沢山あって、大体絵画の裏にある。因みにここのパスワードは0523。あと、何個か空き部屋があるんだけど、大体は物置になっている。物置とかに置いてある鍵のかかった箱とかの鍵は全部ルガーラが管理している事くらいかな?」
「えっ、まだあるよ」
ライネが話終えると、カイクが続けた。
「今の屋敷の使用人って極端に少ないじゃん、これは今の偽物になってから大勢解雇されて、結局昔からずっといる使用人はシュサだけな事と、あと、さっきのウィンのルガーラ偽物説の証拠の1つになると思うんだけど、実はルガーラの属性ってモンスターで、種族は吸血鬼だから以前は必ず外とかに行く時は日傘を持っていて絶対に忘れなかったのに、最近はたまに日傘を忘れそうになったりするらしい」
「そういえばそうだったね」
「…」
カイクがあまりに一気に喋るので、レイナは話を全て理解するのに少し時間をかけることになる。
その後もそれぞれの情報を合わせて考えたりなどしていると、いつの間にかかなりの時間が経っていた。
これ以上は次の日の仕事に支障が出ると、3人は解散してそれぞれの部屋に戻る。
レイナは寝る前に、今日の情報をメモにまとめた。
「よし、寝るか」
メモが書き終わり次第、レイナはスマホを置いて目をつぶる。
今日は魔法を使ったせいか、昨日より疲れていたため、すぐに眠りは訪れた。
はい。前回に続き文字数がバグっていますね。
それでは、特に話すこともないので、
さよなら〜(ᐙ)/