テラーノベル
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A side
「アダム、はい」
ルイが目の前に、半分に割ったシュークリームを差し出した。
A「ありがと」
最近、俺達は揃ってダイエット中だ。
だから、差し入れのスイーツは半分こすることにしている。
半分じゃ男の口には物足りない。でも、ルイも一緒に頑張っていると思うと、この半分こもそんなに辛く感じなかった。
A「ルイ、美味い?」
R「うん…っ、おいひぃー」
シュークリームを口に含んだまま、ルイが幸せそうに微笑む。
その表情に、胸が温かくなった。
A「そっか、良かった」
ルイのこの顔を見ていると、我慢も悪くない気がする。
ー翌日。
俺とルイは差し入れのスイーツの前で立ち尽くしていた。
廊下に置かれたテーブルにずらりと並んでいる。
R「どうする?」
A「んね、全部美味しそう」
この中から一つだけ選ばなければいけない。
さっきから随分と悩んでいる。
T「おっ先〜っ」
そんな俺達を他所に、タイキが好きな物を勢いよく取ってさっさと立ち去って行った。
R「あー、決められない!昨日は俺が選んだから、アダムが決めて」
思いを託すように肩をポンと叩かれる。
A「えー…」
少し考えて2択になった。
プリンかバウムクーヘン。
A「いや、でも……、やっぱりプリンにする」
迷ったらいつものやつにするのが無難だ。
R「うん、アダム好きだもんね。食べよ」
たった一つのプリンを持って控室に戻る。
そうすると、どっちが先に食べるかという問題に直面した。
R「俺先にメイクしてもらうから、アダム先に食べていいよ」
そう言って、ルイがメイクさんの所へ向う。
A「うん、ありがと」
ソファに腰を下ろす。
いつもと変わらない少し賑やかな控室。
プリンを口に入れる。
美味しい。
でも、何か違う気がする。
ルイと食べたかった。
ルイの美味しい顔を隣で見ながら。
そう思った。
今度からは2人並んで食べられる物を選ぼう…。
そうすると、大好きなプリンが選べなくなってしまうんだけど…。
でも、それよりも、ルイと食べる事の方が大事な気がした。
しばらくして、またルイと半分こするタイミングがやって来た。
A「ルイー、甘いの何食べる?」
ソファに座るルイの姿を覗き込む。
すると、目の前のテーブルにスイーツの空袋が置かれていた。
一瞬だけ、自分の表情が固まる。
R「あ、アダムごめん。ゴイチが物欲しそうに見るから半分あげちゃった」
A「そっか…」
R「ごめん、もし食べるならタイキかカノンにあげて」
A「うん、わかった」
俺の半分を誰かにあげても、何か違う。
そんな事が、頭をよぎった。
ルイと半分こにする事に意味があって、その時間を楽しみにしていたのに。
そう思うと、心の奥がぎゅっと締め付けられた。
今日はしょうがない。いくらでも機会はある。
そう、思ってたのに。
翌日も、ルイがメンバーの誰かにあげちゃっていた。
R「…アダム?ごめん」
俺が一瞬だけ黙ったからか、ルイが申し訳なさそうに謝ってくる。
A「全然大丈夫、今日は食べる気分じゃなかったし」
R「…そっか、じゃあ次の時に…」
ルイがそう言って笑ったけど、目元はどこか寂しそうだった。
「お疲れさまー!すごく良かった」
A「ありがとうございまーす」
ライブが終わる。
いつものように、おやつの差し入れがずらっとテーブルに並んだ。しょっぱい系から甘い系まで何でも揃っている。
R「アダムーっ、何食べる?」
ルイが瞳をキラキラさせて、走るように近付いて来た。
ルイも、楽しみにしてくれていたのだろうか。
A「ルイ、選んでいいよ」
R「えー、俺に頼むと時間かかるのに…」
ルイが頬を膨らましながら、腕を組む。
R「うーん…あ!これ」
大きめのパウンドケーキを手に取った。チョコチップが中にぎっしりと入っている。
A「うん、美味そう」
やっと、ルイとこの時間を作ることができた。
嬉しい。
口の端が上がりそうになるのを必死で堪える。
「アダムさん、少しだけお願いします」
2人でソファに座ったところで、スタッフに呼び出されてしまった。
A「あ…」
先に食べてて、と言いたい。
なのに、その言葉が喉の奥に引っ掛かって、なかなか出てこない。
R「アダム、食べないで待ってる」
それを察したのか、ルイがそう声をかけてくれた。
R「今度は取られないようにしとくから」
にやりと笑うと、それを上着のポケットにしまう。
A「うん、ありがと」
呼ばれたのは軽い打ち合わせだった。
早く終わらせたくて、頭はフル回転だ。
「アダムくん、いいアイデア沢山出てくるね」
A「ありがとうございます」
にこやかに応える。
すべてはこの後のためだから。
早く、ルイの隣に座りたい。
R side
長い一日が終わる。
みんなが帰って行く。
G「ルイ、まだ帰んないの?」
R「うん、アダムと約束あって」
そう言って、膨らんだ上着のポケットに軽く触る。
にやけそうになって慌てて口元を押さえた。
G「ふーん、じゃまた明日」
R「うん、お疲れ」
ゴイチの背中を見送る。
やっとだ。
アダムとの、半分こ。
俺が上手く立ち回れなかったせいで、2回も逃してしまった。
それが心の中でつっかえていた。
でも、良かった。
今日は無事に2人で食べられそう。
ふと、時計に目をやる。
さっき見た時から、5分しか経ってない。
どんだけ楽しみにしてんだ、俺。
笑いが少し込み上げた。
最初は…、ダイエットという名目だった。
でも、アダムが俺の美味しいを優しく見守ってくれるのが嬉しくて、そこから色んな話をするのも楽しくて。
いつの間にか、この時間が大事になってた。
そわそわとスマホをいじっている内にアダムが戻って来る。
A「ルイ、お待たせ」
R「早っ!」
A「だって、早く終わらせたもん」
アダムが意味深にふっと笑う。
「じゃあ、先帰ります…」
最後にスタッフさんが出ていく。
俺たちが残っているのを見て、不思議そうな顔をしている。
A「俺達もすぐ帰るんで、お疲れさまでした」
アダムがすかさず声をかける。
「わかりました、お疲れさまでした」
R「お疲れさまでしたー」
ドアが閉まる。
少し間が空く。
R「…食べる…?」
アダムをちらりと見る。
A「うん」
その瞬間、柔らかい笑顔が視界に飛び込んで来た。
胸がぎゅっと熱くなる。
ポケットからパウンドケーキを出す。
そして、文字通りフリーズした。
R「ぁ…」
A「どうした?」
R「……」
俺の体温でチョコチップがすっかり溶けて、袋の中でベタベタになっていた。
R「…ごめん…」
前回といい、何故か上手くいかない。
下唇をギュッと噛む。
A「いいよ、気にしないから食べよ」
R「他のにする…!」
A「でも、もう差し入れ下げられちゃってた」
アダムが俺の頭をポンポンと優しく撫でる。
そして、ソファに座るように促した。
A「貸して」
アダムが俺の手からパウンドケーキを取り上げ、袋をさっさと開けて中身を半分に割った。
A「はい」
R「ありがと…」
半分を渡される。
アダムの指先にチョコレートが付いているのが見えて、申し訳ない気持ちになった。
A「いただきます」
一口、口に入れる。
何回か噛んで、うんうんと頷く。
A「ん…、チョコが柔らかくなってて逆に美味いかも」
こうゆう言い方、優しいなと思う。
A「それに、ルイのぬくもりで温かくなってるし…」
R「なにそれ…っ…」
ぷっと吹き出してアダムの顔を見ると、唇にチョコレートが付いていた。
R「しかも、付いてるし…っ」
A「いや、付くでしょっ、ルイも食べて」
R「えー、俺は大丈夫」
俺が一口食べる様子をアダムがじっと見つめる。
A「あ!ほら、ルイも付いた」
汚れてる所を隙かさず見つけると、アダムが膝を叩いて笑う。
俺もつられて笑った。
R「どこ?取って」
そう言って、アダムに顔を寄せる。
R「…っ」
…間違えた。
近づき過ぎてしまった。
アダムの顔が斜め前、すぐそこにある。
変な風に思われたくなくて、引くに引けない。
そのまま視線だけ下に落とした。
空調の音だけが部屋に響いている。
アダムは何も言わないし、何もして来ない。
ただ、自分の心臓の音だけが煩い。
一秒一秒が、すごく長く感じる。
そして、アダムがこちらに身体を寄せて来た。
やっと視線を元に戻すと、 透き通った茶色の瞳と目が合う。
綺麗で、吸い込まれそうになる。
吐息がかかるくらい近いのに、思わず見惚れてしまった。
そして、アダムの顔が少しだけ傾く。
優しく、唇が重なった。
R「…っ…」
唇が、ぴったりとくっついている。
胸がどくんと鳴って、息を止めた。
そっと唇が離れる。
そして、アダムの溜め息が漏れた。
A「…ルイ、好き…」
驚いて、アダムの目を見つめ返す事しかできない。
すると、急にアダムが手で口を押さえた。
顔が真っ赤だった。
A「…っごめん…順番間違えた…」
R「え?」
A「いや、違う…間違えたどころか勝手にキスした…」
え、嘘…。
今の、何も考えてなかったの?
アダムの思いがけない反応に、甘い雰囲気が一気に解ける。
R「…っ…ははっ…」
俺は笑い出してしまった。
A「ルイごめん…」
隣で謝るアダムを他所に面白いのが落ち着かない。
なんとか呼吸を整える。
R「っ…間違えてないよ、順番」
A「…え?」
R「だって、アダムが俺のこと好きなの知ってた」
A「…なんで」
R「アダム分かりやすいんだもん」
俺を見る目がハートになっていく事、少しずつ感じていた。
もう、「好き」と言っているような目だったもん…。
それを嬉しいと思って受け取っている自分がいて。
だから、両想いなのは、何となく分かっていた。
うわぁ…と声を漏らしてアダムが両手で顔を覆い隠す。
R「アダム?」
A「………なに…?」
R「俺も好き」
アダムの動きがピタリと止まり、手のひらの隙間からこちらを見る。
A「…よかった…」
そう言って、泣きつくように抱きしめられる。
歳上とはいえ、可愛いと思ってしまった。
タイキ、カノン、ゴイチの撮影中。
控室にいる俺たちの目の前には、箱に入ったロールケーキがあった。
R「早く食べよっ」
そわそわしていると、アダムが箱から2つ取り出してきた。
R「え、半分じゃないの?」
A「たまにはチートデイを設けてもいいかと思って」
R「ふーん、まぁ、たまにはいっか」
食べ始める。
美味しい。
でも、いつもの半分こじゃないのが何故か寂しかった。
A「美味しい?」
R「ん?…美味しい!」
A「……、寂しいって顔してる」
R「う……」
アダムには何でも見抜かれてしまう。
R「こっち…見ないで」
表情を読み取られたくなくて、俯く。
ちゃんと一緒に食べているのに、寂しいだなんて意味分かんないよね…。
A「ルイ」
R「ん?」
肩を軽く叩かれ、顔を上げる。
アダムがケーキのクリームを指先で掬い取る。
そして、それを俺の唇の先にちょんと付けた。
なに…?
目を丸くしていると、アダムの唇がそこに触れた。
R「…っ…!!!」
クリームの付いた所を優しく吸われる。
…チュッ…チュ…ッ…
R「…ッ…ッ…」
味わうように啄まれて、 そっと唇が離れた。
A「……これで寂しくない?」
アダムが目を細める。
意地悪されたみたいな気持ちになって、悔しくなった。
アダムの腕をそっと掴んで、引き寄せる。
R「……まだ…寂しい…、…もっと…」
その瞬間、アダムの目が見開かれた。
その瞳が揺れる。
動揺させられた、と思って喜んだのも束の間、すぐに涼し気な目元に戻ってしまう。
A「…いいよ、もっとしてあげる」
アダムが自分の長い髪を、そっと耳に掛ける。
それがキスをする前の準備みたいで、心臓のドキドキが止まらない。
そして、俺の片頬を包んだ。
アダムの赤い唇が、距離を詰めてくる。
そしてまた、重なった。
唇の先が触れ合うくらいの優しいキス。
物足りないと思っていると、アダムの唇が少し開いた。
俺の唇を閉じた所を、つー…と舌先でなぞってくる。
R「…ッ…」
くすぐったい…。
俺も少しだけ舌を伸ばしてみる。
アダムがすぐにそれを捉えて、優しく絡ませてきた。
R「…ッ…んッ…」
…ピチャ…チュ……ッ…
甘い。
クリームの甘さがほのかに口の中に広がった。
アダムのキスに押されて、ソファの背もたれに体重を預ける。
…気持ち良い…。
身体の奥がどくんと脈を打つ。
R「…ん……ハァ…ッ」
いつ皆が帰ってくるか分からない。
でも、やめたくなくてアダムの腕をぎゅっと掴んだ。
啄むスピードが緩やかになって、止まる。
A「…ハァ……みんな帰ってくる……」
ほとんど息みたいな声。
伏せられた瞳。
その余裕の無い感じが、やけに色っぽい。
R「…あと少しだけ…」
熱を帯びた目で、ねだるように見つめる。
チュッ
でも、次にキスをされた所は頬だった。
A「…もうおしまい」
アダムが優しく微笑んで、頭を撫でてくる。
R「…ん…」
何で、すぐに切り替えられるのだろう。
俺だけが子どもっぽく感じる。
A「ルイ」
R「?」
A「続きは、俺の家で…する?」
R「…っ」
アダムはそんな恥ずかしい事を 飄々と言う。
俺は、言葉を返すことも、頷くことも出来ず顔を背けた。
A「ルイの方からねだって来たのに…」
アダムがそう言って、ふっと笑う。
A「俺たちも呼ばれちゃうから、食べよ」
R「うん…」
そう言われて、クリームをちょっとだけ掬って口に運んだ。
胸がきゅっとなる。
さっきのキスと、同じ味がした。
(おわり)
コメント
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うわああああ読んだ読んだ!!😭💕✨ 「半分こ」に込めたふたりの想いが尊すぎて胸がぎゅううってなったよ…! アダムがルイの美味しい顔を見たくてプリン諦めるところとか、溶けたチョコを「ぬくもりで温かい」って言い換える優しさにもう完全ノックアウトされた…💘 しかもクリームキスからの「続きは俺の家で」って、さちこさんマジで反則級の破壊力っすよ!?!?!? ルイがねだった後のアダムの飄々とした感じとのギャップもたまらんかった…次の話も絶対読みます!!📖🔥
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