テラーノベル
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山に囲まれた田舎町。
三日月の夜、俺は自分の部屋の窓を開け、外を眺めていた。
といっても、周りは山と野原で囲まれていて街灯も無く何も見えない。
時々雲から顔を出す月と虫の音が聞こえるだけだ。
薄明るい夜空をぼんやりと眺める。
その時、
ピカッッ…!!!
空が一瞬だけ真昼のように眩しく光った。
ズドォォン!!!
そしてすぐに、轟音を立てて裏山に何かが落ちた。
TAIKI「うわぁ!!!」
驚いた俺は、咄嗟に身を屈めた。
慌てて机の下に隠れる。
T「な……なに……???」
今の何?!…隕石?!
それとも、これから何か起こるのだろうか。
腰が抜けてその場から動けない。
1階にいる家族は大丈夫だろうか。
耳を澄ませるけど、下で誰かが騒いでいる様子は感じられなかった。
暫く身構える。でも、 開けっ放しの窓からは虫の音が変わらず響くだけだ。
身を低くしたまま、そーっと机の下から出てくる。
ちらりと窓の外を見る。
何も、変わらない。
みんな、大丈夫だったかな…。
震える足で階段を降りていく。
T「お母さん?!大丈夫だった?!」
勢いよくドアを開け、リビングへ入った。
でも、母親は撮りためていたドラマを見ながら悠長にお菓子を食べている。
母「何?血相変えて…」
俺の様子に、母親が何とも言えない視線を向けてくる。
T「いや、だって今すごい音したよね?」
母「え…何も聞こえなかったけど…」
T「うそ…」
そんな筈ない。
とんでもない音だった。
母「疲れてんじゃない?早く寝なさい」
母親は目を丸くしていたが、テレビの方に向き直った。
じゃあ、俺の見た、目の奥まで焼き付くような光と轟音は何だったのだろう。
階段を駆け上がる。
身体を投げ出す勢いで窓の外を見渡した。
T「………」
相変わらずの、夜の静けさだ。
…俺の頭がおかしくなってしまったのだろうか。
ん?
裏山の中腹がわずかに光っているのが見えた。
チカチカと点滅している。
T「あ、あれだ…!」
スマホを持って、そっと家から飛び出す。
じいちゃんとよく登っている山だ。
光る場所まではスマホのライトだけで行けるだろう。
真っ暗な中を、 ライトの青白い明かりだけを頼りに進んでいく。
夜になっても空気が冷え切らず、ジメジメしていた。
T「はぁ…はぁ…っ…」
流れる汗を手の甲で拭う。
そうしていると、小さな光を捉えた。
あそこだ。
導かれるように、足を前へ前へと進める。
光が段々と明るく強くなってきた。
本当は怖いはずなのに、夢中でそこに近付いていた。
T「な…な、に………これ…」
80
山に落ちたそれを目の前にして、その場に立ち尽くす。
そこにあるのは、奇妙な縦長の銀のカプセルだった。
半分が土に突き刺さっている。
それには窓があり、そこから強い光が漏れていた。
そっと近づき、恐る恐る覗き込む。
T「…ひっ…!」
中に人が見えた。
でも、窓がひび割れていて、よく見えない。
し、死んでないよな…?
コン…コンッ
カプセルを叩く。
すると、中の人間がゆっくりと目を開いた。
辺りをぼーっと見回したあと、窓に近付いて来る。
ガラスの亀裂の間から目が見え、キョロキョロと外を確認するように動く。
T「…っ!」
そして、目が合った。
その瞳は、嬉しそうに見開かれている。
今度は指が見え、人さし指が下を指す。
T「…し…下?」
カプセルの下部分を見ると、ボタンのようなものが赤く光っていた。
俺はそのボタンを指差して、中の人と目を合わせる。
これを、押せってこと?
ジェスチャーをすると、中の人はそうそう!と激しく頷いた。
ボタンを押そうとして、指が止まる。
もし、こいつがヤバイ奴で、地球に悪さしに来ていたとしたら…。
そんなの、壮大過ぎる。 馬鹿馬鹿しい。
でも、目の前で起こっているあり得ない光景がそんな事を考えさせてくる。
コンコンコン!!!
すると、中から急かすようにノックされた。
T「わ、わかった…っ」
ここで何もせず見殺しにするわけにはいかない。
えいっ…!!
グーッとボタンを強く押し込み、俺は後退りをした。
ギギ…ッ…
カプセルの上部が変な音を立てる。
ヤバイ奴じゃありませんように……。
俺は祈るようにその光景を見つめた。
ウィーン……
そして、先端部がパカっと開いた。
中の人がのそのそと登ってくる。
「ん…っ…あぁぁーっ!!!」
そいつは、カプセルから顔を出したと思うと山に響き渡るくらいの大声を出した。
俺の肩が一瞬跳ねる。
「え?着いた?!?!」
そいつは顔をぱっと明るくさせ、辺りを見回す。
見た目は普通の、人間だ。
中性的な顔立ち。
俺とあまり変わらない年齢に感じた。
そして、目が合う。
「ここ地球?!」
当たり前だけど、そんなこと聞かれたの初めてだ。
T「う…うん…」
「やったぁーーー!」
そいつは長い腕を伸ばし、嬉しそうに天を仰いだ。
「よっ…と…」
カプセルからジャンプして地面に下りてくる。
そして、目を瞑り、鼻から思い切り空気を吸い込んだ。
「あぁ……空気、綺麗だな…」
うっとりと微笑む。
その姿に、悪い奴では無いかもと思えてきた。
「身体いてぇー…」
着地の衝撃か、カプセルの中が狭かったのか、そいつはストレッチを始めた。
俺は、つい足の先から頭の先までジロジロと見てしまう。
髪の毛は黒く、タイトな銀色のビジネススーツのようなものを着ている。
小さい顔と長い手足が目を引く。
こんなスタイルのいい奴初めて見た。
やっぱ、宇宙から来たから?
そいつは、何かを確かめるように、足踏みをした。
そして、うんうんと頷く。
俺が 目が離せないでいると、にこりと笑いかけてきた。
ぎくりとする。
普段は誰にでも気さくに話しかける俺だが、さすがに無理だった。
顔がひきつる。
「で、君はたいきくんだよね?」
T「な!…なん…で、知ってるの…?」
「え?だって、俺の幼なじみだったから」
そいつは、目をキラキラと輝かせて俺を見ている。
は?
俺はこいつのこと全く知らない。
なのに、顔を見れば見るほど懐かしい感じがしてしまう。
「思い出した?」
T「…いや、知らん」
「あ〰️、分かっていたとはいえ、寂しい…」
そいつは分かりやすく肩を落とした。
T「…お前は、誰なの?」
そう聞くと、不敵な笑みを浮かべ、
「俺?RUI」
そう、答えた。
るい……。
念のため記憶を辿る。
でも、そんな知り合いはいなかった。
T「…るい…やっぱり知らねえな」
R「無理ないよ、前世の話だから」
T「はぁ?」
るい、という奴が人差し指で頭をトントンと叩いて言う。
R「俺の脳、地球人よりもすこーし発達してるから、覚えてんの」
T「は、はぁ…」
訳がわからない。
いや、理解の範疇を超えていた。
R「立ち話も難だし、お前の部屋行こ」
T「は?!」
突然の提案に拍子抜けしてしまった。
こんなおかしな奴、絶対家に入れたくない。
そう思ったのに、いつの間にか山を下り、自分の部屋に案内していた。
何で、俺…。
自分の行動に呆然としてしまう。
一方でるいは、俺の部屋をにこにこと見渡していた。
T「と、とりあえず、その汚れた目立つ服を脱げ」
R「えー…俺の一張羅…」
T「いいから!」
できるだけ大きなサイズの服を手渡す。
それを受け取ったるいは渋々と着替えた。
R「なんか……足首出てる…」
T「しょうがねぇだろ!お前がデカすぎんだよ」
るいは口を尖らせてはーい、と小さく返事するとベッドの真ん中に座り込んだ。
こいつ、どこまで失礼な奴なんだ…。
T「…で?何でお前は地球に来たの?」
変な質問だと分かってる。
でも、不可思議なことが続いて、俺の頭の中もおかしくなってたんだと思う。
るいが目を細める。
R「地球人に、愛と音楽を伝えに来た」
愛?音楽?
なんて臭いことを言うんだと思ったが、るいの顔は真剣だった。
茶化す隙が一ミリも無い。
T「ど、どこから来たの…?」
R「リラ星」
初めて聞く星だった。
その星はどんな星なのだろうか。
地球からどれくらい離れてる?
帰れんの?
家族は?
これからどうする?
聞きたいことは山ほどある。
R「聞きたいことは沢山あるって顔してるな。…ふぁーあ…」
るいが大きな口を開けて、あくびをする。
そして、そのままベットに倒れ込んだ。
R「でも、もう…寝る……長旅で疲れた………」
そう言って、即行寝息が聞こえてきた。
初めての星と初めての場所でよく寝れんな…。
開いた口がふさがらない。
ほんと、何なんだこいつ…。
しかも、俺のベッド…。
つーか、明日からどうすんの?
俺の家に居座る気じゃないよな?
頭の中は漠然とした不安と、?マークで埋め尽くされた。
T「…もう無理だ、もう何も考えられない…」
自問自答し尽くした俺は仕方なくベッドの下に布団を敷き、横になった。
もしかしたら、幻覚かもしれないと思ってベッドの上をちらりと見る。
るいは、居る。
溜め息をついて、背を向ける。
そんな事を何回か繰り返している内に眠っていた。
ーー朝。
R「たいき、おはよう!」
T「わっ!」
ようやく眠れたと思ったら、でかい声で起こされた。
目の前には、るい。
T「嘘…」
昨日の夢じゃない。
空に閃光が走ったこと、轟音、謎のカプセル。
そして、目の前に確かに居る、るいという失礼な奴。
R「現実現実!」
るいは面白そうに笑う。
T「最…悪だ…」
俺は目を閉じて、深く溜め息をついた。
R「ねぇーたいき、お腹空いた…」
そんな俺を他所に、るいは項垂れながらお腹をくるくると押さえる。
T「もぉー…しょうがねぇな…」
リビングにそっと入る。
まだ朝が早くて誰も起きていない。
俺はキッチンからこっそり食べ物を持ち出すと、るいの前に広げた。
地球の食べ物は 、口に合うのだろうか?
T「はい、食べられるものあるといいけど…」
R「たいき、ありがとう」
そんな心配を他所に、るいは手当たり次第食べ始めた。
R「美味い…ん、そうだ…このあと…人探しに行く…一緒に来て」
口の中をモゴモゴさせながらるいが喋る。
T「は?!どこに?!」
R「いや、分からないけど、俺の感覚があるから大丈夫」
感覚…。
そんなの信用ならない…。
R「そんな顔しないでよ。そいつらは俺の仲間でもあり、たいきの仲間でもあるんだから」
肩をポンポンと叩かれる。
T「いや、しらんし…」
るいの考えている事が全く分からない。
というか、分かりたくない。
T「もう、一人で探してよ」
俺を巻き込まないでほしい。
R「え?だって夏休み、暇でしょ?」
T「暇じゃねえ!宿題とかあんだから」
R「でも、たいきって追い込むタイプじゃん?まだやらないでしょ」
ぎくっとした。
いつも直前で焦って、まとめてやるタイプなのだ。
T「そ、そうだけど……」
何も言えない俺を見て、るいはにっこり笑う。
R「あ〜、早くみんなに会いたいなぁ」
るいの横顔はとても幸せそうだ。
そんな顔をさせる仲間って…。
T「そいつら、どんな奴なんだよ…」
R「んー?前世で、俺の母親と親友と旦那だった人たち…」
T「は、はぁ…」
るいが答えることすべてに理解が及ばない。
あと、母親と親友まで分かったとしても、旦那…?嫁じゃないんだ。
心の中で余計なツッコミを入れてしまう。
R「んっ…じゃ…いこ…っ」
るいは口の中に食べ物を詰め込んだまま立ち上がった。
T「え?もう?!」
R「だって、待ちきれない!」
るいがその場で駆け足をする素振り見せ、早く早くとねだる。
T「ちょっと待て、まずは準備しないとっ」
クローゼットから、大きめのリュックを引っ張り出してくる。
何が必要?
T「えーっと、財布とハンカチティッシュ……、あれ…?」
嘘…、俺行く気になってんじゃん…。
その瞬間、顔が熱くなる。
慌ててるいを見ると、分かってましたというような笑みを浮かべていた。
R「で???あと何持ってくの?」
T「…っ、うるせえな…っ 」
あと、充電器…。
それから、小腹を満たせるような物も詰め込む。
R「準備できた?」
T「あぁ」
るいが何処へ行こうとしていて、この先何をしようとしてるか分からないけど、ほんのちょっとだけ信じてみても良い気がした。
R「たいき、ありがとな」
T「う…うん…」
俺達は静かに家を出る。
空はまだ星の見える藍色だったけど、山の隙間から朱色の光が眩しく差し込んできていた。
なんか、わくわくする。
行き先が分からないのに、迷わず突き進んでいくるいの背中を追う。
ーー愛と音楽。
心の中で言ってみると、すげぇくすぐったい気持ちになった。
いや、でも、面白そうだ。
いつの間にか、るいの言うそれがどんなものか見たくなっていた。
(おわり)
コメント
1件
読み終わりました!冒頭の「ピカッ」と「ズドォォン」の衝撃が一気に引き込まれました。たいきくんがこっそり家を飛び出して山道を進む息遣いとか、夜のジメジメした空気感が伝わってきてハラハラしました。カプセルの中から出てきたRUIの「ここ地球?!」がほんと高校生っぽくてかわいいですよね。愛と音楽を伝えに来たっていうその真っすぐな言葉に、なんだか胸が熱くなりました。ふたりの距離感がこれからどう変わっていくのか、すごく気になります!続きが楽しみです🌷