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蝉の声が遠ざかり、秋の気配が校庭を包みはじめていた。
高校三年の教室は、どこも参考書や赤本を開く音でいっぱいだ。
咲も例外ではなく、机の上にはマーカーで線を引いたノートが積み重なっている。
(あと半年で、私も受験生じゃなくなるんだ……)
窓の外を見つめながら、息をついた。
「咲、最近ほんと忙しそうだね」
隣の席の美優が心配そうに声をかけてくる。
「うん……でも、頑張らなきゃって思う」
笑って答えたけれど、胸の奥では別のことでいっぱいだった。
――あの夏祭りの夜から、悠真さんとまともに話せていない。
大学四年で忙しいのはわかっているのに、どうしても気になってしまう自分がいる。