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朝の光が、カーテンのすき間から静かに差しこんでいた。
🌸「……ん……」
🌸はゆっくり目を開け、天井を見つめた。
胸の奥が、ざわざわして落ち着かない。
――今日、お父さんの再婚相手の家に行く日。
ベッドから起き上がり、制服ではなく私服に着替える。
鏡に映る自分の顔は、いつもより少し固かった。
🌸(知らないお母さんの家……)
廊下に出ると、向かいの部屋のドアが開いた。
🎮「……おはよ」
眠そうな声で出てきたのは、次女の🎮だった。
髪には寝ぐせが残っていて、目も半分しか開いていない。
🌸「おはよう」
🌸が言うと、🎮は小さくうなずいた。
🎮「……今日、行くんだよね」
🌸「うん。お父さんの……新しい奥さんの家」
その言葉だけで、二人の間に重たい沈黙が落ちた。
そこへ、元気な足音が廊下に響く。
🍵「おはよー!」
三女の🍵が、にこにこしながら飛び出してきた。
🍵「ねえねえ、今日はどこ行くの?」
🎮「……🍵、覚えてないの?」
🎮が不安そうに言う。
🌸「新しいお母さんの家に行くんだよ」
🍵「うん、知ってるよ!」
🍵は元気よくうなずいた。
🍵「楽しみだなー」
その言葉に、🌸と🎮は顔を見合わせた。
🌸🎮(すちは……全然こわくないんだ)
🌸と🎮は、新しいお母さんよりも、実はお父さんのほうがこわかった。
背が高くて、声が低くて、怒ると怖い。
普段は無口で、表情もあまり変わらない。
🎮「……お父さん、今日は機嫌悪くないかな」
🎮が小さくつぶやく。
🌸「ちゃんとしないと、怒られるよね……」
🌸も同じ気持ちだった。
長女として、失礼なことをしないように。
迷惑をかけないように。
そう思えば思うほど、体が固くなった。
そんな二人とは違い、🍵はスニーカーを履きながら言った。
🍵「大丈夫だよ。お父さん、今日はやさしい日だと思う」
🎮「……どうしてわかるの?」
🍵「だって、新しいお母さんに会いに行くんだもん」
その言葉は、根拠なんてないのに、不思議とまっすぐだった。
リビングに行くと、お父さんはすでに支度を終えて立っていた。
スーツではなく、少しきれいめな服を着ている。
👱🏻「準備はできたか」
低い声に、🌸と🎮の背筋が伸びる。
🎮「……はい」
🌸「……できました」
🍵だけは元気に、
🍵「うん!」
と返事をした。
車に乗ると、窓の外の景色がゆっくり流れていく。
誰もあまり話さなかった。
エンジンの音だけが、やけに大きく聞こえる。
🌸(どんな家なんだろう……)
🌸は膝の上で、ぎゅっと手を握った。
🎮は窓の外を見たまま、何も言わない。
🍵は後部座席で、足をぶらぶらさせていた。
🍵「ねえ、ケーキあるかな」
その一言に、🎮が小さく笑ってしまった。
🎮「……🍵は、ほんと緊張しないね」
🍵「だって、新しいお母さんだよ? きっとやさしいよ」
その言葉に、🌸の胸が少しだけ軽くなった。
しばらくして、車は静かな住宅街で止まった。
👱🏻「着いたぞ」
お父さんの声で、三人は同時に息をのむ。
目の前にあったのは、白い壁の小さな一軒家だった。
庭には花が咲いていて、カーテンはやさしい色をしている。
🌸(ここが……)
🌸の心臓がドクドク鳴る。
玄関の前に立つと、お父さんがインターホンを押した。
ピンポーン。
その音が、胸に響いた。
少しして、ドアの向こうから足音が聞こえる。
ガチャ、とドアが開いた。
そこに立っていたのは、やさしそうな笑顔の女性だった。
👱🏻♀️「……いらっしゃい」
少し緊張した声で、そう言った。
👱🏻♀️「はじめまして。今日から、みんなのお母さんになります」
🌸は言葉が出なかった。
🎮はぎゅっと🌸の袖をつかんだ。
でも、🍵は一歩前に出て、にこっと笑った。
🍵「はじめまして! 🍵です!」
その声に、女性はほっとしたように微笑んだ。
👱🏻♀️「よろしくね、🍵ちゃん」
🌸も、勇気を出して頭を下げる。
「……🌸です」
🎮も小さな声で続いた。
「……🎮です」
玄関に、少しだけあたたかい空気が流れた。
知らない家。
知らないお母さん。
こわくて、不安で、胸がいっぱいになる。
それでも――
三人は一歩、家の中へ足を踏み出した。
新しい家族の物語は、
この玄関から、静かに始まった。