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勇斗 side
全て俺が悪かったと思う。
仕事終わり仁人の家に行くと言ったのは俺。仕事疲れを癒して欲しかったから。
けれど、思ったより仕事が長引いてしまい、日付越す前に終わる予定だったものが気づけば時刻は深夜1時を回っていた。
最近寝ていないのもあり、俺は自覚できるくらい酷い疲れに襲われていた。
仁人に「今から行く」と連絡をし、仁人の家に向かう。
仁人に会えたのは嬉しかった。けれど、仁人の言葉にまともに返事する元気が俺にはなかった。
仁人が疲れた俺に気を使いながら話しかけているのは分かっていた。けれど思った以上に俺は疲れが溜まっていて、いつもの俺からは想像できないくらいには素っ気ない態度をとっていたと思う。
「勇斗、なんでそんなに素っ気ないの」
仁人にそう言われた時は、自分でも素っ気ない態度をとっていると自覚していたため素直にごめん、と謝った。
けれど、「素っ気なくされるなら会わない方が良かった」と言われ俺は少し苛ついてしまった。
なんで?俺はすごく疲れてるのに仁人に会いに来たんだよ。なんで、会わない方が良かったなんて言うの。
そこから軽く言い合いになってしまった。元々疲れている俺にとってその言い合いは余計に体にダメージを与えるものでだんだんとストレスが溜まっていった。
「………めんどくさいよ」
何も考えず、そう発してしまった。
今考えれば、そんな言葉軽々しく発していいわけがないのに。
「なにそれ、めんどくさい恋人で悪かったな」
仁人も負けじとそう言ってくる。
あぁ、なんで俺たちはこんなに言い合いしているんだろう。
仕事の疲れを癒そうと仁人の家に来たのに、言い合いして、お互い嫌な気持ちになって、疲れは癒えるどころか溜まっていって。
こんなことになるなら……
「こんな言い合いするなら、付き合わなきゃ良かったんか
な」
そう言った瞬間、俺は今までカッと熱を持っていた頭が急激に冷えたのを感じた。つい、怒りに任せて言ってしまった。
付き合わなきゃ良かったなんて、微塵も思っていないのに。仁人と付き合って後悔した日なんて1度もないのに。
俺の先程の言葉で、仁人が硬直し傷付いている顔が目に入る。あぁ、傷付けてしまった。最愛の人なのに、俺が傷つけた。
謝らなければ、そう思っていた時。
「っ……….勇斗なんて、嫌い」
仁人から発せられた言葉。
「嫌い」。それは、もし喧嘩しても嫌なことがあっても嫌いって言わないでと前に約束した言葉だった。
約束したのに。なんで、嫌いなんて言うの。俺のこと本当に嫌いになったの。
さっき冷えたと思った頭はまた熱くなっていく。今日はもうこれ以上一緒にいてはいけない。また言い合いになってお互いが傷つく。
そう思って俺は「帰る」と言って仁人の家を出た。外は少し雨が降っていて、俺の目から零れた涙を流して言った。
***
次の日はメンバー全員での撮影の仕事だった。どうやら仁人は舜太と2人で撮影をするらしい。
今日の舜太はずっと仁人と一緒にいた。仁人は舜太といると表情は明るいし、よく笑っている。
昨日は俺のせいで暗い顔をしていて、今日は舜太のおかげで明るい顔をしている。その事実が、俺を余計苛立たせた。
太智と柔太朗と一緒に仁人と舜太の撮影を見ていたが、やけにカメラマンが2人の距離を近くさせる。少し動けば顔がくっついてしまう、そのくらい近かった。
なんでそんなに近いんだよ。仁人も舜太もなんか照れてるし。
ベキベキっと現場に音が響いた。何の音だ、と思ったけれど、どうやらその音は俺が手に持っているペットボトルを握り潰した音だったみたいだ。
柔太朗に指摘されてやっと自分の顔が怖いことを自覚する。柔太朗は俺たちが何かあったということは気づいているようだが、深くは追求せずにはやく仲直りしてね、言うだけだった。
こちらに優しく微笑む姿にさっきまで怖かった俺の顔は少し柔らかくなったと思う。
「………太智。仁人、何か言ってた?」
俺は太智にそう聞く。さっき楽屋で仁人と太智が話していたから、俺のことで何か言っていないか気になった。
もし、俺の事嫌いになったとか、昨日の件で別れようと思ってるとか言っていたらどうしよう。
そんなことを考えていたが、太智は話していた内容は教えてくれず、本人に聞け、と言ってきた。
まぁ、ごもっともですわ。
やっぱり、仁人と話し合わないとダメだよな。
撮影が終わり、楽屋に戻ってスマホを見ると仁人からメッセージが来ていた。ドキドキする心臓をおさえながらその内容を見ると、そこには『この後、2人で話せませんか?』と表示されていた。
仁人の方から話し合う機会を作ろうとしてくれた。俺は震える手で『この後何も無いから話そう』と返信した。
どうしよう、別れ話とかされたら。怖くなってきた。けれど、俺らは話し合わないといけないから。
もし、別れ話をされたとしても、俺は昨日のことをちゃんと謝って仁人のことがどれだけ好きかを伝えよう。そう心に決めた。
暫くすると楽屋に仁人が入ってきた。
「………勇斗」
「さっき、返信した。この後話せるよ」
昨日ぶりの会話。お互い声は少し震えていたかもしれない。
「俺ん家でもいい?」
「うん」
俺らは楽屋を出て送りの車に乗って仁人の家に向かった。移動中、俺らは一言も話さなかった。いつもならそこまで長く感じない道が今日はやけに長く感じる。
やっと仁人の家に着き、中に入る。昨日ぶりだ。昨日の出来事が鮮明に思い出される。
「適当に座って」
仁人にそう言われたため、俺はソファに座った。すると、仁人もその隣に座ってきた。昨日喧嘩した時と同じ位置だな。
少し沈黙が流れる。今回は俺が悪い。俺から、ちゃんと謝ろう。そう思い、口を開こうとしたけれど、仁人が先に言葉を発した。
「勇斗、ごめんなさい……」
まさか、仁人の方からごめんを言われるとは思わなくて、俺は驚き、少し固まってしまった。
「嫌いなんて、思ってない。本当は大好きなのに、つい、カッとなって言っちゃって」
仁人の目には少し涙が溜まり、大きな目から今にも零れてしまいそうだった。
「仁人……」
「……嫌いって言わないって約束したのに、破ってごめんなさい……」
俺が仁人の名前を呼んでも、仁人は続けて話続ける。
「俺の悪い所全部直すから、付き合わなければよかったなんて言わないで………俺たちの今までを、否定、しないで………ッ」
仁人はそう言うと大粒の涙を大量に流し、時々声を漏らしながら号泣してしまった。仁人は滅多に泣かないから、泣く時は号泣し、顔をぐちゃぐちゃにして、泣き方が分からない赤ちゃんみたいに泣いてしまう。
世界で1番泣かせたくない人なのに、ずっと笑っていて欲しい人なのに、俺の目の前で泣いている。仁人を泣かせた奴を殴りたいのに、泣かせた奴は自分だということ。その事実がどんどん胸を締め付ける。
「仁人……俺は付き合わなければよかったなんて、思ったことない。仁人と付き合って後悔したことなんて、1回も無い。あの時、ついカッとなって思ってもないこと言っちゃった……」
隣で泣いている仁人を抱きしめる。俺の世界で1番愛おしい人。
「謝るなら俺の方。仕事で疲れたからってあんな態度とっていいわけないのに、仁人に甘えてた。辛い思いさせてごめん………ごめんなさい」
俺の目からも、涙がこぼれた。
俺の中で泣き続ける仁人。仁人をこんな状態にした自分に物凄く腹が立つ。
「俺のこと、まだ好き……?」
仁人が呼吸を整えながらそう聞いてきた。俺は仁人を抱きしめる力を更に強くした。
「好きに決まってる。大好き、愛してるよ。嫌いになることなんて無い。世界で1番、ずっと愛してる。俺は、仁人がいないと、しんじゃうから……」
仁人にこれでもかというほどの愛の言葉を伝える。まだまだ足りない。傷つけた分、俺がどれだけ仁人のことを愛しているかを伝えた。仁人がもう一生、俺からの愛を不安に思わないように。
「俺も、勇斗が大好き。世界で1番愛してるよ」
仁人の顔を見ると、涙で濡らした顔で微笑みながらそう言ってきた。
俺は涙で濡れた頬に口付けた後、唇にもキスを落とした。壊れ物を扱うように優しく、けれど自分の感情を込めて力強くキスをした。
「愛してるよ仁人。これからも、ずっと、俺と一緒にいよう」
「俺も、愛してる、勇斗。ずっとずっと一緒にいて」
俺はまた、仁人を抱きしめた。
もう、一生泣かせない、辛い思いはさせない。俺が幸せにする、そう誓った。
コメント
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みかんさん、第4話読み終えたよー! これはもう……胸がギュッてなったわ。勇斗sideだから余計に、自分の言葉で仁人を傷つけちゃった後悔とか、翌日の撮影現場でのやきもちとか、全部リアルに伝わってきてしんどかった。でも最後の仲直りシーン、特に「しんじゃうから」ってセリフにはやられた。重いけど、それだけ本気なんだなって。仁人が泣き崩れるとこも、勇斗が抱きしめ直すとこも、めちゃくちゃ刺さった。お互い謝れてよかった…。続きも気になるけど、ひとまずこの2人が戻れてホッとしたよ。お疲れさま!🔥