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第一章
「修学旅行」
桜も散り、木々を揺らす風に少し夏の匂いを感じるこの5月。 この学校の3年生は、毎年この時期に修学旅行がある。今は午前の授業中。丁度修学旅行の班決めをしているところだ。
「それでは女子3人、男子3人の六人班をつくってください」
学級委員の声が教室に響く。その瞬間、しん、と静まり返っていた教室は、一気に騒がしくなる。
「お前俺と班になろうぜ。」
「今女子何人?」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。この会話に自分も参加できたら楽だろうとなんど思ったことか。
実は僕は、高校生活を2年間と1ヶ月過ごしておきながら、仲の良い友達と言うものが数人しかいないのである。いや、もしかしたら数人もいないかもしれない …。
一応小学校からの幼馴染みは居るのだが、生憎別のクラスのため、僕は完全に孤立してしまっている。 先生に”どうにかしろ”の意味を込めて視線を送るが先生は修学旅行の班決めを学級委員に押し付け、教室の隅の壁にもたりかかり、目をつぶっている。寝てはいないと思うが、孤立してしまっている生徒が居るのだから、少しぐらい目を配ってもいいだろう、と思う。 あぁこれはまた人数の足りない班にいやいや入れられるなと思いながら、この騒がしい話し声が一段落つき、落ち着くまで待っていた。 「あの、INTJくん。」 ボーっと、(いや、一応考え事をしていたのだが)窓のそとを眺めていると、後ろから(とても可愛い声で)声をかけられた。無視するわけにはいかないので、後ろを振り向くと、そこには天使が立っていた。 あ、違った、INFPさんだ。 いや、天使みたいに可愛いのだから間違ってはないのだが。 実は俺はこのINFPさんのことが恋愛的に好きなのである。理由としては、シンプルに可愛いことだ。もちろん外見の可愛さもあるのだが、内気で、少し人見知りの部分がまた可愛いのだ。
「もしよかったら、私たちの班に入らない?」
「え?」 思っていたより内容が衝撃だったため、つい、間抜けな声がでてしまった。 いや、班を決めているのだから、当たり前なのだが、好きな人に一緒の班になろうと言われたのは初めてだったため、少し動揺してしまった。
「ダメ、かな?」
INFPさんは僕の様子を伺うように聞いてくる。 いやいや、駄目なわけがない。INFPさんと一緒の班になれるのならそんな嬉しいことはない。
「いや、別に大丈夫。俺も班の人困ってたから。」
そういうとINFPさんは先程の少し不安げな顔から安堵したような柔らかい笑顔で微笑んだ。
「じゃあ、修学旅行のときはよろしくね」
「うん」
そういってINFPさんは行ってしまった。 INFPさんの背中を見送ったあと、再び窓にふりかえり、外の景色に目を向ける。 午前の授業が終わるまであと数分。この騒がしい話し声が落ち着くまで、少し嬉しさの余韻にひたっているとしよう。
キーンコーンカーンコーン
「それじゃあ当日は基本この班で動いてください。」
チャイムと共に学級委員が喋りだす。どうやらいつの間にか班が決まっていたようだ。これまでの班決めと違うのはこのときに学級委員や先生から哀れみの視線をむけられなくなったことだ。本当にINFPさんには感謝している。 そしてまもなく学級委員が授業後の号令をかけた。
学校が終わり、荷物の整理をし、教室をでると、後ろからいきなり背中を叩かれるようにして肩を組まれる。
「よ、INTJ。」
声だけでもにやけていることが分かるようなこの声色に、僕は普段動かさない表情筋を最大限に動かし、怪訝な顔をし、そいつを睨み付けた。
「そう嫌そうな顔すんなよ。表情筋の無駄遣いだぞー」
このどうにもむかつくような言い回しをするこいつは、さっき言った小学校からの幼馴染みのENTPだ。可哀想なことに、僕には性格と口の悪い、こいつしか、仲のいいと呼べる友達がいないのである。本当に可哀想だ。僕が。
「後ろから急に肩を組んでくるのはやめろ、普通に驚くし、お前みたいな巨体に肩を組まれる俺の身にもなれ。」
「あ、そうか、INTJチビだもんな」
その言葉をきいたとたん、俺は反射的にENTPにけりを入れる。本当はケツに入れたつもりだったか、ENTPがデカイせいか、蹴りは足に入っていた。 どっちにしろ、ENTPの背がデカイことを肯定しているようで余計に腹が立つ。
「いってぇなぁ、暴力的すぎるとモテねぇーぞー。」
「安心しろ、こんなことをするのはお前くらいだ。」
「なにそれ、新手の告白?」
「ちがう。」
こんな馬鹿みたいな会話を交わしながら、昇降口のところまでやってくる。下駄箱で靴を履き変え、外にでる。正門を抜けたところでENTPがこれが本題だったかのように話を切り出してきた。
「そういえばさ、INTJのクラスはもう班決めた?」
「あぁ、一応。」
「へぇ、INTJくんは俺がいなくて苦労しちゃったかな??」
俺が班決めでハブられてることを前提に話してくることに少し腹ただしさを感じながらも、こいつの予想とは違うことに多分 の優越感を感じながら、こう言ってやった。
「いや、今回はハブられてない。誘ってくれた。INFPさんが。」
「え”ぇ!まじで!?俺が話しかけなきゃ誰もしゃべる人がいない空気みたいな存在のお前が!?」
こいつは人を煽らないと気が済まないのか。このむかつくほど整っている顔を殴ろうと拳に力をいれるが、またからかわれそうだったのでやめた。
「そういうお前は班組めたのかよ」
「そりゃ当然だろ。俺が組めねぇわけがない。」
「チッ,まぁそうだろうな。」
さも自身ありげにENTPはそういう。男女共に人気のあるこいつが班に誘われないことは基本ないだろう。実際、班を決めるときは引っ張りだこだったにちがいない。
「ちなみにESTPと一緒の班になったんだよな。」
「ESTP…」
「あれ?知らない?」
「いや、知ってる…」
ESTPのことは知っている。高校2年生で同じクラスになり、その騒がしさによく眉間に皺を寄せた。それに、ESTPのヤンチャぶりは他クラスでも話題になるほどだ。 それに…
「小学校一緒だし。」
「え?まじ?ていうかお前と小学校一緒ってことは俺とも一緒じゃん。」
まぁ、ENTPと俺は小学校が一緒だったから、そういうことになるな。
「お前知らなかったんだな。意外だ。」
「俺もビックリしてる。てかINTJが人のこと覚えてるなんて珍し、なんかESTPとあった?」
「…いや、まぁ、ちょっと…向こうは忘れてると思うけど、
小学生のときESTPが走ってぶつかってきて、田んぼに俺が大切にしてた本落としたんだよ。」
「ブフッw、…フフえ、それマジ?お前は落ちなかったの?」
「落ちたよ。一応謝ってもらったけど、本は泥だらけになった。結構ショックだった。」
今になってはいい思い出に過ぎないが、そのときは本当にショックだったと思う。なんせそれは、小学生の少ないおこづかいを貯めて買った本だったのだから。本を歩きながら読んでた僕も悪いが、急に後ろ向きで走ってきたESTPの方が非は大きいと思う。泥だらけの本を見たときはESTPのことを本気で恨んでやるって思ってたけど次の日には僕もESTPもあんまり気にしてなかった気がする。一応僕は根にはもってるのだか…。
「自分より本を気にするってどんだけ本好きなんだよ。」
「いいだろ、別に。」
「いやぁまさかESTPとINTJにそんな昔話があったとは。」
「てか、問題児2人いるって…そっちの班大変そうだな。」
「そんなことねぇだろ楽しいぞ?」
ENTPはからかうように言う。僕だったらこんな騒がしい奴らが2人もいる班なんて耐えられない。
「まぁ、この班もあんまり意味ないみたいだけどな。」
「え?」
「知らない?現地では基本自由行動で班行動じゃなくてもいいらしいぞ?」
お疲れさまでした。
最後の設定は、まぁご都合設定ですね。無理矢理でしたかね。
次も楽しみにしててください。