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유리
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「……っっっ!!!」
ノートを読んだ新一は、声にならない悲鳴を上げてガタッと椅子を揺らした。顔だけでなく首筋まで一瞬で真っ赤に染まっていく。新一はシャーペンを握り直そうとしたが、指先が激しく震えて、うまく文字が書けない。そんな新一の様子を特等席で眺めながら、快斗がモノクルのない素顔のままで大怪盗としての完全勝利の笑みを浮かべていた、その時だった。
「おーう、工藤! 学校まで迎えにきてやったぞ!」
ガララッ! と、昨日と全く同じ、やたらと声のデカい関西弁が教室のドアを叩き破るようにして響き渡った。
「げ……服部!?」
新一が真っ赤な顔のままガバッと振り返る。そこには、何食わぬ顔で教室に入ってきた服部平次が、ニカッと白い歯を見せて立っていた。
「お前、まだ東京にいたのかよ! 昨日の今日で、なんでまたウチの学校に……」
「いやいや、夕べのキッドの件でなぁ、ちょっと工藤に確認したい暗号の件があってな。わざわざ江古田まで足を伸ばしたったわけよ」
平次はそう言って新一の席まで歩いてくると、新一と快斗の間に割り込むようにして立った。そして、二人の机の上に広げられたままの「真っ新なノート」に目を留める。
「……ん? なんや工藤、そのノート。お前ら、朝から熱心に何書いとんねん」
平次はニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべ、新一が隠そうとするよりも早く、ノートに書かれた文字を上から覗き込んだ。
『……この紙の上で、俺がお前のこといーっぱい口説いてドキドキさせても、文句言うなよ?』
「ぶふっーーーーーーー!!!!」
平次は持っていたペットボトルの茶を盛大に吹き出しそうになり、口を両手で押さえて激しく咳き込んだ。
(おま……っ! 黒羽!! お前学校で工藤相手に何書いとんねん!!!)
平次は顔を真っ赤にしてプルプルと震えている新一と、ポーカーフェイスの下で(やべ、服部に見られた)と一瞬だけ目を見開いた快斗の顔を交互に見つめる。
「な、ななな、何でもねぇよ服部! これはあいつの、ただのくだらねぇ冗談だ!」
新一は慌ててノートをバタンと閉じ、自分の鞄に押し込もうとした。そんな新一の背中を、平次は生温かい目で見つめながら、内心で(工藤、お前ホンマに……ハッキング対策の筆談で、目の前の男に100%口説かれとるがな……)と、哀れみと爆笑を禁じ得なかった。平次はふっと快斗の方を振り返ると、新一に見えない角度で、片目をパチッとウインクしてみせた。
「へぇー、なるほどな。……なぁ工藤、怪盗キッドってのはなぁ、世界中のどんな厳重なセキュリティもハッキングする大泥棒やけどさ」
平次はわざとらしく新一の肩にガシッと腕を回し、快斗の目を真っ直ぐに見据えながら、ニヤニヤと声を大きくした。
「目の前におる『黒羽快斗』のハッキング(アプローチ)には、お前、最初からセキュリティガタガタやんけ(笑)。なぁ黒羽、お前もそう思うやろ?」
「ぶっ、服部、お前何言って……っ!」
今度は新一が顔を爆発させる番だった。快斗は平次からの「お前ら、早くくっついちゃえよ」と言わんばかりの特大のパスを受け取り、モノクルのない素顔で、これ以上ないほど意地悪く、けれど甘く微笑んだ。
「そうだね、服部くん。工藤はキッドには必死に鍵をかけるくせに、俺がちょっとドアをノックしただけで、すぐ顔を真っ赤にして部屋に入れてくれるんだよねぇ(笑)」
「黒羽まで何言ってんだバカッ!! 二人して俺をからかうなーーー!!」
新一はついに限界を迎え、閉じたノートを抱えたまま、教室の後ろのドアから廊下へと脱兎のごとく走り去っていった。誰もいなくなった新一の席の横で、平次は快斗に向かって、昨日と同じようにさらっと綺麗なグッドサインを掲げた。
「お前、ホンマええ性格しとるわ、大泥棒さん。あいつ、今頃廊下で心臓バクバク言わせとるで」
「……お前さ、昨日の今日で、本当に何しに来たんだよ」
快斗は呆れ顔で肩をすくめつつも、ポケットの中で小さく震えたスマホ(新一からの『服部のバカ、黒羽のバカ』という可愛い怒りのメッセージ)を見つめ、平次に向かって「サンキュー」と小さく笑い返すのだった。
コメント
1件
もう、今回の話……!! 新一の顔が真っ赤になる描写が可愛すぎて、読んでるこっちまで照れたわ(笑)平次の「セキュリティガタガタ」発言には腹筋崩壊したし、快斗の「ちょっとドアをノックしただけで」がもうズルすぎるんだよな~。この3人の軽妙な掛け合いに毎回やられてるはる。です。最終回じゃないなら、次も絶対読みます!!