テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
長編になりそうな予感😭😭😭😭😭
:太中
:書生太宰
:中也が亡くなります。
:設定を少し改変してます。
:後の方ちょこっとモブが出る。
横浜は過去最大の争いの真っ最中だった。
外つ国の異能組織が横浜に攻めて来たのだ。
横浜の各異能組織や軍警が協力し、敵組織を追い出そうとしていた。
これだけの組織が結束すれば勝てる、そう誰もが思っていた。
だが、駄目だった。
味方の組織はほぼ全滅。
立てるものも極わずか
そんな時、ある人物が前に立っていた。
中原だ。
「ちゅうや⋯?」
太宰が中原の名前を呼ぶ。
中原は振り返り、太宰に微笑む。
「後は頼んだぞ、太宰。」
太宰は察した。中原が何をしようとしているのか。
「駄目だ、止まれ!中也!!
その状態で使えば君が持たない!」
「この状況で最後の戦力となるのは俺ぐらいだろ。
んな心配してねぇよ、手前が止めてくれんだろ?」
その時、漸く他の者たちも中原の意図が分かったのだ。
汚濁を使用する気だ。
「中也さん!貴方だけでは無理です!僕も⋯」
「黙ってろ。これは俺にしか出来ねぇ⋯」
「中也!!」
皆が静止するが、中也は聞く耳を持たない。
「中也君!」
「首領、悪ぃが今は貴方の命令は聞けない。」
森も止めるが、駄目だったようだ。
中原は完全に覚悟を決めている。
「汝、陰鬱なる汚濁の許容よ
更めて我を目覚ますことなかれ」
「ちゅうや!!」
中原が汚濁を発動させてから数十分して敵組織は全滅した。
太宰は必死に中也を呼ぶ。
だが、中也は一向に降りてこない。
「このままじゃ君が⋯」
その時だった。
中原の動きが、ほんの僅かに止まる。
暴走する重力の中心で、ゆっくりと中原が振り返り、下を見る。
蒼い目が太宰を映しす。
「中也、降りてこい!」
そこで初めて、中原は太宰の声を認識したようだった。
中原がゆっくりと降下してくる。
中原は手を伸ばし、太宰も反射的に手を伸ばす。
届く
あと少し
本当にあと少しだった。
なのに、中原の指先から赤い光が消える。
そのまま中也は地面に落とされてしまう。
太宰は駆け出す。
崩れた瓦礫を踏み越え、中原の元へ辿り着くと、その身体を抱き起こした。
「ちゅうや⋯?」
「中也!!」
呼吸が乱れる。
異能は消えているのに、中原は目を開かなかった。
太宰は必死に名前を呼び続ける。
太宰が何度呼んでも、中原が目を開ける事はなかった。
数日後、中原の葬儀が行われた。
参列者の中には、ポートマフィアの芥川や樋口、黒蜥蜴、幹部達の姿があった。
武装探偵社。
かつて羊に所属していた者達も来ている。
葬儀は静かに行われた。
俯いたまま動かない者。
顔を覆い、肩を震わせる者。
棺を見られず、目を逸らす者。
葬儀が終わると皆、顔を隠しながら退出していった。
「太宰さん⋯?」
中島が声を掛ける。
「あぁ⋯敦くん、済まないね、先に行っておいてくれ給え。」
太宰は笑おうとしていた。
だが、上手く口元が動いていなかった。
「はい⋯」
それ以上は何も言えない。
誰もいなくなった会場に、小さな啜り声が響いていた。
「ごめん⋯」
ぽつりと落ちた声は、直ぐに消えていった。
「護ってあげられなくて、ごめん」
「助けてあげられなくて、ごめん」
「ごめん⋯本当にごめん⋯中也⋯」
「君との約束が護れなかった⋯」
ごめん、と響いた声は直ぐに消える。
当然のように、返事は無かった。
太宰は俯いたまま、顔を上げなかった。
もう、棺の中の相棒に何を言えば良いのか分からなかった。
───数年後
武装探偵社
国木田はいつも通り仕事をし、江戸川は菓子を食い、中島はもう立派な大人になっていた。
横浜は以前と比べればもの凄く平和で、過ごしやすくなっていた。
当然だが、平和だったら仕事が無い。
ならば書類を整理しろ太宰!と何時ものように怒鳴る国木田。
太宰は最近始めたことがあった。
嘗ての友人の夢
──小説を書くことだ。
「じゃあ国木田君、私ちょっと行かなきゃ行けない所があるから、またね」
「太宰ィィィィィィィィィ!!!」
机の上には、書きかけの原稿が積まれている。
そのどの頁にも、“中原中也”の名があった。
太宰は、中原がどんな人物であったか忘れるのが怖い。
その為太宰は、この本に中也の生き様を記す事にした。
太宰は時折、筆を止めることがある。
まるで、思い出を失わないように確かめるかのように。
太宰は書きかけの原稿用紙へ視線を落とす。
そこには、私には相棒がいましたと書かれていた。
I
────私には相棒がいました。
いつも喧嘩をし、いがみ合い、怒られる。
時には怒り狂った相棒が家具を壊して私まで怒られる羽目になったり、
そんな日々を過ごしていました。
ただ、そんな日々も終わりが来るもの。
私の相棒は、とある抗争で力を使い果たし亡くなってしまいました。
私に命を預けて。
彼の異能には、“汚濁”という切り札がありました。
代償に、自身では制御出来なくなる異能です。
汚濁を使うには、私の異能力無効化を使わないと解除が出来ないようになっているのです。
それを分かっているのに、彼は言いました。
「後は頼んだぞ」と
私に命を預けたのです。
私にしか解除が出来ないから。
私が解除をしてくれると信じて
なのに私は、彼を殺してしまいました。
力が尽きる前に解除ができた筈なのに⋯
なのに私は、彼を殺してしまった。
助けられなかったことを謝りたい。
彼は何時も私を助けてくれた。
彼はいつも、私を死なせまいとしていました。
彼はいつも前へ出て私を庇ってくれました。
私が落ち込んでいる時は、直ぐに気付いてくれました。
その時は、私の好きな料理を作ってくれたり
彼の異能で空を飛ばしてくれる事もありました。
なのに私は、何も出来なかった。
彼を、相棒を、中原中也を助けられなかった。
私は、なんという人間失格なのでしょう。
───────
II
時折、中也は自分が人間か悩むことがありました。
彼の中には荒覇吐という神様が住んでおり、自身は其れを収めるための器に過ぎないのではないか、と悩んでいたのです。
そして、私は彼に一度言ったことがありました。
「中也は人間だ。」と
そしたら彼は、僅かに目を見開き、目を逸らして「そうか⋯」と呟いていました。
その時、私は気付いたのです。
彼の耳が少々赤くなっていることに。
気付いた頃には私の顔は微笑んでしまっていました。
私は中也以上に人間らしい人間は存在しないと思っています。
彼は部下には優しく、上司には敬意を払う、不器用でとても人間臭い人でした。
そんな彼と相棒になれたこと、
私は凄く誇りに思います。
当時、全てが灰色に見えていた世界に、彼だけは煩かったように感じます。
私は、中也の相棒になれて良かったと思います。
──────
「改めて、新人賞受賞おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
太宰は微笑む。
「このお話は太宰さんと相棒、中原中也さんとのお話の様ですが、実話なのでしょうか?」
男性が太宰に問う
「はい。」
太宰は短く答えた。
「そうなんですね、では、太宰にとって中原中也とはどの様な人物でしたか?」
「⋯」
太宰は答えられなかった。
「太宰さん⋯?」
「いえ⋯そうですね⋯彼、中也はチビで、帽子選びのセンスがとても悪い人でした。
それと、とても人間らしくいい人だったと思います。
そして、私の大切な相棒ですよ。」
2026/05/29 14:03
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コメント
7件
うわあ……読了しました。最初から最後まで、胸がぎゅっとなるお話でした。 中也が「後は頼んだぞ」って微笑んで、そのまま力尽きていく場面、本当に切なくて。太宰がずっと「ごめん」を繰り返すところ、声を♡♡♡て泣いているのが伝わってきました。そして数年後、太宰が中也のことを小説に書き留めている――あの「私には相棒がいました」の一行が、すべてを物語っているようで涙が出そうです。 「灰色の世界に、彼だけが煩かった」という表現、すごく好きです。タイトルにもちゃんと意味があって、素敵でした。