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敦side
爽やかな春が嘘だったように今は蒸し暑い空気が探偵社を支配する。
今日は何となく早く起きてしまった僕はすることも無く、早く探偵社に来てしまった。
敦「お、おはよう、ございます」
谷崎くんや賢治くんの元気な挨拶が聞こえなくて、なんだか新鮮な気分でいると、机と服の色が同化して気づかなかったが、そこには乱歩さんがいた。
乱「え、敦?早いなぁ、おはよう」
敦「今日はなんだか早く目が覚めちゃって」
乱「そうか」
敦「乱歩さんはいつもこんなに早く探偵社に?」
乱「まぁねー」
敦「そうだったんですね!意外です」
自分のデスクの前に立つと、左にある太宰さんのデスクが目に入った。
なんだろう。手紙?
敦「乱歩さん、この手紙、太宰さん宛ですかね」
乱「なにそれ、手紙?」
敦「太宰さんの机の上にあったんですけど」
乱「封筒にはなんて?」
敦「えっと、探偵社の皆へ、です」
乱歩さんがこちらにきてその手紙を僕からひょいと取り上げた。
乱「これ、依頼者とかではないよ。敦、開けてみて」
再び僕の手元に戻ってきた手紙に少々オドオドしたが、開けてみた。
そこには、薄い紙がたった1枚。
『グッド・バイ』
と、そう書かれていた。
敦「これ、太宰さんが書いたんですよね」
乱「あぁ、間違いない」
敦「なんでこんなことを…?」
乱「わから、ないのか」
敦「え?」
乱歩さんが躊躇う
乱「太宰は死んだ」
…は、
太宰さんが?ありえない。
今もきっとどこかで生きてる。川に流されて、僕が助けたらまた、つまらなそうに
太「なんで助けたの」
なんて口にするはずなんだ。
乱歩さんの言葉は強い言葉を持っている。なぜならいつも、真実を述べるから。
でも今は違う。きっと。違う
敦「うそですよ、そんな…」
頭に乱歩さんの手の温もりが伝わる。
それは今まで優しく頭に触れた太宰さんの手と少し違っていて、それが妙に、太宰さんが死んだという現実を知らせた。
いつか、こうなることは分かっていたような気がした。、
太宰さんが本当に消えてしまう時、それはなんの音も立てず静かで、いなくなった、と聞いて、ふと、気づく。
それは、落ちた桜花がいつしか地面に溶け込むようにささやかで悲しい。
暖かい手にくしゃりと頭を撫でられて僕は涙を流していた。
受け入れた。受け入れてしまった。